ダンジョンの魔王の種族はエルフー配下と共にまったりのんびり過ごしますー

柚ノ木 碧/柚木 彗

文字の大きさ
46 / 52
魔王が何故か、主神?の乗り物を召喚した件

女運にゃいんにゃね

しおりを挟む
 
「お金が無いならにゃー達のお店の店番を数日して貰おうと思っていたにゃ~」

 と明るく言うアガーテに、ウンウンと頷くダンテ。
 頷かないで一言発して欲しいなぁと思うのはもう、何処か思考の隅に行ってしまったようで、極々普通に受け入れてしまっている自分に驚く。

 でもね、ルクレツィアよ真似しないで欲しいんだけど。
 何時の間にかダンテの隣に並んで、うんうんと頷きながら手は口に持っていって両手でバッテンの文字を作っている。って、それよく見ると喋らないのが駄目って言ってるゼスチャーな様な気がする。そして思いっきり居心地が悪そうなダンテ。

 そんなダンテの黒豹の尻尾を頭を動かしてまで追い掛けて見詰めているアルフォンソ。
 そのアルフォンソの頭の動きが気になるのか、何故かアデルの配下達まで頭を動かして見詰める。見詰める先はアルフォンソの頭の動きだけども。あれかな?狩猟本能?
 頼むからアルフォンソを狩ろうとしないでね?お願いだから。

 そこ、そこのアデルの配下の蜘蛛君。本能に付き従って触手を伸ばそうとしないでね?え、ゴミが気になったって、それ本当なんだろうね?
 そして慌てて他の蜘蛛達が触手を伸ばそうとした蜘蛛を引き摺って何処かえと引き摺って行った。

 書いている文字が怖いんだけど。『説教部屋に!』って布掲げるのヤメて欲しい。
 そして引き摺られていく蜘蛛が『本能には逆らえません~ナデナデしたいんですー!反省しますから撫でさせてー!』って。足元には『あいつシュタだからなぁ』って。
 え、なにそれ微妙に怖い。
 蜘蛛ってショタコンが居るの!?
 もしかしてロリコンも!?

 …なんだろう、其処だけすっかりカオスだ。

『僕はレーベル様のがいいです』
『僕はミン様が割と』
『僕は両方共』

 ピラピラと炭で書いた文字を掲げている蜘蛛達が、此方をみてーって感じで掲げて来る。
 どうやら私の足元もカオスのようだ。
 混沌空間と化している。



「何せダンテは店番しててもこの調子で、殆ど会話が無いから他の人だと困ってしまうのにゃ。でもレーベルちゃんなら…あ、本名なんて言うにゃ?そう言えば聞いてなかったにゃ」

 そう言えば名乗ってなかったなと、あえて名乗ることにした。
 と言うか私も出会った当初にうっかりアデルが「レーベルだ」なんて短く言うからそのままで通してしまったんだよね。

「名乗るの遅れてごめんね、ええと、レーベルブリュームヒェンって言うの」

 とは言えアデルが勝手に名付けたのだけど。

「ほうほうにゃ~って、ああ、アーデルベルトの旦那が名付け親かにゃ?」

「分かるの?」

「大体にゃ。そもそも自分でつけるとしたら長い名前はつけにゃいと思うにゃーし、何よりレーベルちゃんにとっても似合ってる名前にゃ。雰囲気ばっちりにゃ。ならアーデルベルトの旦那が名付けたって考えたほうが早いにゃ」

 早いのか。
 そして納得しちゃうのか。
 アデルもうんうんって頷いてるし。「似合う名前だろ」と。其処で頷いたのか。

「魔王って名無しで産まれるって説があるし、アーデルベルトの旦那も確かそうだって言ってたにゃ~」

 うん?という事は…

「アデルの名前は誰かが付けたのか、もしくは自分で?」

「そう言えば聞いたこと無かったにゃ。アーデルベルトの旦那、どうにゃの?」

 ん?とアデルは小首を傾げ…

「あーえーと、何せ産まれたのは3001年前だから、ええーとうーん…」



 ・
 ・
 ・



 あ、お茶有難うね蜘蛛さん達。
 結構美味しいです。温度も丁度良くて適温。至れり尽くせりな気がする。
 ミンがお茶の淹れ方を聞いている辺り、習得してまた彼方此方で世話を焼く気だろうなぁ。ウチの幼少組であるルクレツィアとアルフォンソが気に入ったみたいで、二人仲良くおかわりを頼んでいたし。

 そしてアデル。
 すっかり「あーでもない」「こーでもない」とアデルが記憶を思い出そうとし、それから三十分後。ようやく思い出したのか、両手をポン!と叩き、

「おおそうだった!何か知らんが天空から変な奴が降りて来て、俺を見て「お前は他の魔王とは違うな、ならアーデルベルトと名乗るが良い」って勝手に名付けられたんだった」

 よし、思い出したぞ!と頷くアデル。
 それは良いのだけど、天空って…

 召喚出来る一覧に乗っていた「エルフ」。
 そのエルフの説明に乗っていた文の中で、「天空から抜け出た一族に滅ぼされる」って…

 フラグ立ってないよね?これ、大丈夫なんだろうか。

「アデル、その変な奴って今も交流があるの?」

「いや、無い。と言うかあれから会ってないと思う。何せ記憶がかなり朧気だから自信が無いが、少なくともココ数十年、いや数百年は無いな」

 な?と配下の蜘蛛達に問うてるアデルだけど、配下の蜘蛛達は誰も知らないらしく返答が…ああ、

『知らないです』
『マスター初耳』
『どんな方ですか?』
『空飛んでるんですか?蜥蜴じゃなくて?』

 流石異世界、空を飛ぶ蜥蜴っているんだって思ったら、そう言えばドラゴンの事を大蜥蜴って言って居たっけと思い出す。もしかして只の蜥蜴って言ってるのはワイバーンとかの事だったりして…

「ねぇ、もしかしてアデルってワイバーンとかにも狙われて無い?」

『あれ?よくご存知で』
『マスターから聞きました?』
『マスターはどういうワケか、長物に好かれてしまうんですよね』

 と、アデルの配下の蜘蛛達がワラワラと足元に集まって布を掲げて居る。

「あれにゃ~もしかしてアーデルベルトの旦那に名前付けたのってもしかして長物にゃ?」

 それには全力で頭をブンブンと本気で嫌がって横に振って答えるアデルが…

『あれはワイバーンの事を思い出してますね』
『マスター女運っていうか、長物運がないから』
『ねっちっこい女だったからね』
『マスター本当に不運。寝込み襲われそうに為ったし』

 ちなみにそのワイバーンは、アデルの配下達が美味しく頂いたそうだ。って、それはそれで弱肉強食の世界…。そして寝込みを襲われそうにって、どれだけ長物の女性を射止めやすいのかアデルよ。種族の壁超え過ぎ。

 なんだろうか。黒豹のダンテが配下に次々に書かれて行く布地の文字に凹んでしまっているアデルの肩をポンポンと叩き、元気出せと言わんばかりに慰めている。

「本当に女運にゃいんにゃね、アーデルベルトの旦那…」

 アガーテがぽつんと呟くと、

『ヤメてあげてー』
『マスターのライフは0よー』

 何時ぞやで聞いた台詞を再度布地に書き出していく配下の蜘蛛達。
 コレはコレでアデル更に凹むんじゃないだろうか…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

処理中です...