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魔王が何故か、主神?の乗り物を召喚した件
女運にゃいんにゃね
しおりを挟む「お金が無いならにゃー達のお店の店番を数日して貰おうと思っていたにゃ~」
と明るく言うアガーテに、ウンウンと頷くダンテ。
頷かないで一言発して欲しいなぁと思うのはもう、何処か思考の隅に行ってしまったようで、極々普通に受け入れてしまっている自分に驚く。
でもね、ルクレツィアよ真似しないで欲しいんだけど。
何時の間にかダンテの隣に並んで、うんうんと頷きながら手は口に持っていって両手でバッテンの文字を作っている。って、それよく見ると喋らないのが駄目って言ってるゼスチャーな様な気がする。そして思いっきり居心地が悪そうなダンテ。
そんなダンテの黒豹の尻尾を頭を動かしてまで追い掛けて見詰めているアルフォンソ。
そのアルフォンソの頭の動きが気になるのか、何故かアデルの配下達まで頭を動かして見詰める。見詰める先はアルフォンソの頭の動きだけども。あれかな?狩猟本能?
頼むからアルフォンソを狩ろうとしないでね?お願いだから。
そこ、そこのアデルの配下の蜘蛛君。本能に付き従って触手を伸ばそうとしないでね?え、ゴミが気になったって、それ本当なんだろうね?
そして慌てて他の蜘蛛達が触手を伸ばそうとした蜘蛛を引き摺って何処かえと引き摺って行った。
書いている文字が怖いんだけど。『説教部屋に!』って布掲げるのヤメて欲しい。
そして引き摺られていく蜘蛛が『本能には逆らえません~ナデナデしたいんですー!反省しますから撫でさせてー!』って。足元には『あいつシュタだからなぁ』って。
え、なにそれ微妙に怖い。
蜘蛛ってショタコンが居るの!?
もしかしてロリコンも!?
…なんだろう、其処だけすっかりカオスだ。
『僕はレーベル様のがいいです』
『僕はミン様が割と』
『僕は両方共』
ピラピラと炭で書いた文字を掲げている蜘蛛達が、此方をみてーって感じで掲げて来る。
どうやら私の足元もカオスのようだ。
混沌空間と化している。
「何せダンテは店番しててもこの調子で、殆ど会話が無いから他の人だと困ってしまうのにゃ。でもレーベルちゃんなら…あ、本名なんて言うにゃ?そう言えば聞いてなかったにゃ」
そう言えば名乗ってなかったなと、あえて名乗ることにした。
と言うか私も出会った当初にうっかりアデルが「レーベルだ」なんて短く言うからそのままで通してしまったんだよね。
「名乗るの遅れてごめんね、ええと、レーベルブリュームヒェンって言うの」
とは言えアデルが勝手に名付けたのだけど。
「ほうほうにゃ~って、ああ、アーデルベルトの旦那が名付け親かにゃ?」
「分かるの?」
「大体にゃ。そもそも自分でつけるとしたら長い名前はつけにゃいと思うにゃーし、何よりレーベルちゃんにとっても似合ってる名前にゃ。雰囲気ばっちりにゃ。ならアーデルベルトの旦那が名付けたって考えたほうが早いにゃ」
早いのか。
そして納得しちゃうのか。
アデルもうんうんって頷いてるし。「似合う名前だろ」と。其処で頷いたのか。
「魔王って名無しで産まれるって説があるし、アーデルベルトの旦那も確かそうだって言ってたにゃ~」
うん?という事は…
「アデルの名前は誰かが付けたのか、もしくは自分で?」
「そう言えば聞いたこと無かったにゃ。アーデルベルトの旦那、どうにゃの?」
ん?とアデルは小首を傾げ…
「あーえーと、何せ産まれたのは3001年前だから、ええーとうーん…」
・
・
・
あ、お茶有難うね蜘蛛さん達。
結構美味しいです。温度も丁度良くて適温。至れり尽くせりな気がする。
ミンがお茶の淹れ方を聞いている辺り、習得してまた彼方此方で世話を焼く気だろうなぁ。ウチの幼少組であるルクレツィアとアルフォンソが気に入ったみたいで、二人仲良くおかわりを頼んでいたし。
そしてアデル。
すっかり「あーでもない」「こーでもない」とアデルが記憶を思い出そうとし、それから三十分後。ようやく思い出したのか、両手をポン!と叩き、
「おおそうだった!何か知らんが天空から変な奴が降りて来て、俺を見て「お前は他の魔王とは違うな、ならアーデルベルトと名乗るが良い」って勝手に名付けられたんだった」
よし、思い出したぞ!と頷くアデル。
それは良いのだけど、天空って…
召喚出来る一覧に乗っていた「エルフ」。
そのエルフの説明に乗っていた文の中で、「天空から抜け出た一族に滅ぼされる」って…
フラグ立ってないよね?これ、大丈夫なんだろうか。
「アデル、その変な奴って今も交流があるの?」
「いや、無い。と言うかあれから会ってないと思う。何せ記憶がかなり朧気だから自信が無いが、少なくともココ数十年、いや数百年は無いな」
な?と配下の蜘蛛達に問うてるアデルだけど、配下の蜘蛛達は誰も知らないらしく返答が…ああ、
『知らないです』
『マスター初耳』
『どんな方ですか?』
『空飛んでるんですか?蜥蜴じゃなくて?』
流石異世界、空を飛ぶ蜥蜴っているんだって思ったら、そう言えばドラゴンの事を大蜥蜴って言って居たっけと思い出す。もしかして只の蜥蜴って言ってるのはワイバーンとかの事だったりして…
「ねぇ、もしかしてアデルってワイバーンとかにも狙われて無い?」
『あれ?よくご存知で』
『マスターから聞きました?』
『マスターはどういうワケか、長物に好かれてしまうんですよね』
と、アデルの配下の蜘蛛達がワラワラと足元に集まって布を掲げて居る。
「あれにゃ~もしかしてアーデルベルトの旦那に名前付けたのってもしかして長物にゃ?」
それには全力で頭をブンブンと本気で嫌がって横に振って答えるアデルが…
『あれはワイバーンの事を思い出してますね』
『マスター女運っていうか、長物運がないから』
『ねっちっこい女だったからね』
『マスター本当に不運。寝込み襲われそうに為ったし』
ちなみにそのワイバーンは、アデルの配下達が美味しく頂いたそうだ。って、それはそれで弱肉強食の世界…。そして寝込みを襲われそうにって、どれだけ長物の女性を射止めやすいのかアデルよ。種族の壁超え過ぎ。
なんだろうか。黒豹のダンテが配下に次々に書かれて行く布地の文字に凹んでしまっているアデルの肩をポンポンと叩き、元気出せと言わんばかりに慰めている。
「本当に女運にゃいんにゃね、アーデルベルトの旦那…」
アガーテがぽつんと呟くと、
『ヤメてあげてー』
『マスターのライフは0よー』
何時ぞやで聞いた台詞を再度布地に書き出していく配下の蜘蛛達。
コレはコレでアデル更に凹むんじゃないだろうか…
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