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「しっかし、優樹が俺の職務先に入学とはねぇ~。」
中々失礼なことを述べている僕のもう一人の父親である陽平おじさ…陽平父さんは、阿須那父さんと結婚してから喫煙を辞めた。
そのため、今はポイっと口の中に1日三枚のみと決めているガムを入れている。このガムが食べ終わったら今日はもう、カロリーゼロの炭酸水にするか~等とのんびり言っている。
中年だからカロリーが怖いんよねぇと言いながら、今もシートベルトを付けて運転席に座り車を発射させる。
ちなみに助手席は父さん…陽平おじさんが運転する時は阿須那父さんの指定席だ。
僕は中学のゴタゴタ以降から後部座席一択になっている。
何となくだけど駄目。
助手席が座れない。
理由は良くわからないけどこう、背筋がゾワゾワする。
全身変に鳥肌が立つ。
陽平父さんだけではなく、阿須那父さんが運転席側に居ても駄目。
タクシーに乗った際に試してみようとしたけど、どうしても落ち着かなくて駄目だった。
後部座席がとても落ち着く。
更には同級生との接触も駄目になった。
これは多分だけど僕がΩになったからじゃないかなって思っている。
他には思い当たらない。
更には非常に申し訳無いのだけど、元祖母位の年齢の女性との接触も身体が勝手に硬直する。
トラウマって奴かな。
以前Ω専用の病院に向かうのに公共の交通手段であるバスを利用したのだけど、そこで偶々すれ違った祖母ぐらいのご年配のお婆さんに接触してしまい、あの時の記憶が一気に蘇り、硬直して身動きが取れなくなってしまった。
以降、病院に向かう時は二人居る父のうち何方かが車を出してくれるようになった。
「この辺りで唯一のαとΩ専用の学校だし。それに何よりΩだと授業料どころか制服やら教科書まで学校側が出してくれるって言うし。昼食とかまで無料だって言うよ?それなら入学した方が得でしょ?」
「優樹が言うとまるでスーパーのお買い得情報みたいだな。」
「僕は安くはないよ?」
「当たり前だ。大事な息子である優樹は安売りせん。」
「だな。」
阿須那父さんと陽平父さんの二人が共に頷いている。
僕はそのことに少し嬉しくなる。
元祖母は僕がΩだと知った途端罵倒した挙げ句、「こんな子いらない」「捨てろ」と「殺せ」と言う言葉を繰り返して大声で罵り、その祖母を見て当惑した元母は顔色を悪くして何も言わず、父と僕の元を去って行った。
そう言えば元母は結局あの後一度も会っていないどころか、連絡さえとっていない。
父さん達二人とは離婚した際に話し合いぐらいはしているとは思うけど、僕に全く接触して来ないという事は必要ないもしくは僕を要らないと思っているのだろう。
阿須那父さんと陽平父さんの判断で会わせないようにして居るのかも知れないし、そうじゃないかも知れないけれど、僕としてはもうどうでもいい事柄へと昇華しつつある。
消極的な人だったし、僕がΩになってしまったからどう接したら良いのか判断つかなかったのかも知れないし、何より元祖母が怖かったのだろう。
元祖母は母の肉親だしね。
「それにしても良かったのか?あの学校に入るってことは、その、なぁ。」
「αとの集団見合いの意味があるってことでしょ?知っているよ。」
「…優樹。」
阿須那父さんが複雑そうな顔をし、後部座席に居る僕を振り返って見つめる。
「僕ね、陽平父さんと阿須那父さん達二人を見て良いなって思ったんだ。」
陽平父さんが4つ目のガムを運転しながら口に入れる。そのことに助手席側に居る阿須那父さんが咎める目で見詰めるが、陽平父さんは気が付いていない。
今日の陽平父さんのおかず、一品減らされそうだなぁ。
「僕、誰かに必要とされたいって。」
仲が良い阿須那父さんと陽平父さん、二人の父さん達を見ていて人を好きになりたいとか大事にされたいとか思ったんだ。
だって、羨ましい。
僕はまだ初恋はしたことが無いけど、陽平父さんは幼少時に初恋だった阿須那父さんに長い間片思いしていたんだって先日コッソリ教えてくれた。
ついでに、「数十年ぶりに実った初恋って言うのもなんだがな。」と言って照れていた。
あ。必要とされたいとかって、何だか受け身な思考のような。
どうもΩになって来てから思考が受け身気味になって来ているような気がする。
前はもう少し前向きな気がしていたけど、僕はここ数年で色々と変化して来ているのかな。
「必要かぁ、ならもう少し学業に前向きにならないとな。」
「うぐ。」
「少なくとも夏休みの宿題とか、ギリギリまで放置とかってのは高校に行ってからは卒業してくれよ?」
「うぐぐぐ。」
「うぐぐぐ、ではなくて返事は?」
「はぁーい。」
「そこは「はい」な、優樹。」
「うう、はい。」
くすくすと笑う二人の父親と共に車を学校指定の駐車場に止め、降りる。
今日から僕はこのαとΩ専用の学園に入学する。
車から降りた途端、僕達と同じような生徒や父兄達が校舎へと消えていく。
僕と同じΩとか居るのかな?
制服を着ている他の学生を見てみるけど、学生服で隠れるせいか、Ωの証のプロテクターを付けているようには見えない。
Ωはαよりも更に人口が少ないと言うから、もしかしたらこの場に居るΩは僕一人かも知れない。
それとも向こうを歩いている女生徒が僕と同じΩかも。
「あっちか。」
阿須那父さんが呟くと、
「それじゃ俺は此処までだな。後は大丈夫だよな、優樹?」
言葉では僕の名前を呼びながら、阿須那父さんの方を向く陽平父さん。
こう見えて結構過保護なんだよなぁ。
阿須那父さんってβなのに、時折Ω?ってご近所から言われているのを僕は知っている。
ご近所の奥様方が「やばい位の色気よね~」「男の色気だわ」「ファンになっちゃう!」って。
チラチラと阿須那父さんをコッソリ見ながら井戸端会議を道の端でしているのを何度か見掛けたから。
ちなみに陽平父さんの場合はちょっと違う。
「男らしい」とか、「逞しい」とか、「勇ましいわぁ、あの上腕二頭筋。」「胸筋、とっても素敵」とか、ちょっと羨ましいことを言われていたりする。
男っぽいってことかな?
確かに男の僕から見ても陽平父さんは職業が医者なのにちゃんと鍛えられている筋肉が身体に付いていて、男らしいと思う。正直かなり羨ましい。
僕も付かないかなぁ筋肉。
腕なんて陽平父さんと一緒に鍛えてみようと、リビングで腹筋等をしているのを横目に少ししてみたのだけど、僕は5回位しか出来なかった。陽平父さんは平気な顔をして、50回確りやっていたけど。その後腕立て伏せまで確り50回やっていたけど。
うう、ついていけない。
阿須那父さんは、陽平についていけるわけがないと言って苦笑していた。
阿須那父さんの方に幾つか視線が集まっているのを見て、陽平父さんが視線の主達に牽制するようにジトリと睨みつける。
うわぁ~空気が変わったよ。
威嚇ですか、何だかちょっと凄いなぁ。
目付きが『俺の』って声を大にして主張しているみたい。
その陽平父さんを阿須那父さんが見て、苦笑しつつ「大丈夫。」なんてのほほんとしている。
「は~…昔から阿須那の大丈夫は大丈夫じゃないからなぁ。」
「それ、どういう意味かな、陽平。」
「つまり、俺の阿須那ってことかな。って、優樹はそこでうんざりした顔をしない。」
グリグリと僕の蟀谷に拳を押し付けてくる。
「陽平父さん痛いってばっ。」
「痛くしてやっているの」と言ってからくくくと苦笑し、「じゃ、後でな」と小さく手を振って陽平父さんは僕達とは違う方へと移動していった。
中々失礼なことを述べている僕のもう一人の父親である陽平おじさ…陽平父さんは、阿須那父さんと結婚してから喫煙を辞めた。
そのため、今はポイっと口の中に1日三枚のみと決めているガムを入れている。このガムが食べ終わったら今日はもう、カロリーゼロの炭酸水にするか~等とのんびり言っている。
中年だからカロリーが怖いんよねぇと言いながら、今もシートベルトを付けて運転席に座り車を発射させる。
ちなみに助手席は父さん…陽平おじさんが運転する時は阿須那父さんの指定席だ。
僕は中学のゴタゴタ以降から後部座席一択になっている。
何となくだけど駄目。
助手席が座れない。
理由は良くわからないけどこう、背筋がゾワゾワする。
全身変に鳥肌が立つ。
陽平父さんだけではなく、阿須那父さんが運転席側に居ても駄目。
タクシーに乗った際に試してみようとしたけど、どうしても落ち着かなくて駄目だった。
後部座席がとても落ち着く。
更には同級生との接触も駄目になった。
これは多分だけど僕がΩになったからじゃないかなって思っている。
他には思い当たらない。
更には非常に申し訳無いのだけど、元祖母位の年齢の女性との接触も身体が勝手に硬直する。
トラウマって奴かな。
以前Ω専用の病院に向かうのに公共の交通手段であるバスを利用したのだけど、そこで偶々すれ違った祖母ぐらいのご年配のお婆さんに接触してしまい、あの時の記憶が一気に蘇り、硬直して身動きが取れなくなってしまった。
以降、病院に向かう時は二人居る父のうち何方かが車を出してくれるようになった。
「この辺りで唯一のαとΩ専用の学校だし。それに何よりΩだと授業料どころか制服やら教科書まで学校側が出してくれるって言うし。昼食とかまで無料だって言うよ?それなら入学した方が得でしょ?」
「優樹が言うとまるでスーパーのお買い得情報みたいだな。」
「僕は安くはないよ?」
「当たり前だ。大事な息子である優樹は安売りせん。」
「だな。」
阿須那父さんと陽平父さんの二人が共に頷いている。
僕はそのことに少し嬉しくなる。
元祖母は僕がΩだと知った途端罵倒した挙げ句、「こんな子いらない」「捨てろ」と「殺せ」と言う言葉を繰り返して大声で罵り、その祖母を見て当惑した元母は顔色を悪くして何も言わず、父と僕の元を去って行った。
そう言えば元母は結局あの後一度も会っていないどころか、連絡さえとっていない。
父さん達二人とは離婚した際に話し合いぐらいはしているとは思うけど、僕に全く接触して来ないという事は必要ないもしくは僕を要らないと思っているのだろう。
阿須那父さんと陽平父さんの判断で会わせないようにして居るのかも知れないし、そうじゃないかも知れないけれど、僕としてはもうどうでもいい事柄へと昇華しつつある。
消極的な人だったし、僕がΩになってしまったからどう接したら良いのか判断つかなかったのかも知れないし、何より元祖母が怖かったのだろう。
元祖母は母の肉親だしね。
「それにしても良かったのか?あの学校に入るってことは、その、なぁ。」
「αとの集団見合いの意味があるってことでしょ?知っているよ。」
「…優樹。」
阿須那父さんが複雑そうな顔をし、後部座席に居る僕を振り返って見つめる。
「僕ね、陽平父さんと阿須那父さん達二人を見て良いなって思ったんだ。」
陽平父さんが4つ目のガムを運転しながら口に入れる。そのことに助手席側に居る阿須那父さんが咎める目で見詰めるが、陽平父さんは気が付いていない。
今日の陽平父さんのおかず、一品減らされそうだなぁ。
「僕、誰かに必要とされたいって。」
仲が良い阿須那父さんと陽平父さん、二人の父さん達を見ていて人を好きになりたいとか大事にされたいとか思ったんだ。
だって、羨ましい。
僕はまだ初恋はしたことが無いけど、陽平父さんは幼少時に初恋だった阿須那父さんに長い間片思いしていたんだって先日コッソリ教えてくれた。
ついでに、「数十年ぶりに実った初恋って言うのもなんだがな。」と言って照れていた。
あ。必要とされたいとかって、何だか受け身な思考のような。
どうもΩになって来てから思考が受け身気味になって来ているような気がする。
前はもう少し前向きな気がしていたけど、僕はここ数年で色々と変化して来ているのかな。
「必要かぁ、ならもう少し学業に前向きにならないとな。」
「うぐ。」
「少なくとも夏休みの宿題とか、ギリギリまで放置とかってのは高校に行ってからは卒業してくれよ?」
「うぐぐぐ。」
「うぐぐぐ、ではなくて返事は?」
「はぁーい。」
「そこは「はい」な、優樹。」
「うう、はい。」
くすくすと笑う二人の父親と共に車を学校指定の駐車場に止め、降りる。
今日から僕はこのαとΩ専用の学園に入学する。
車から降りた途端、僕達と同じような生徒や父兄達が校舎へと消えていく。
僕と同じΩとか居るのかな?
制服を着ている他の学生を見てみるけど、学生服で隠れるせいか、Ωの証のプロテクターを付けているようには見えない。
Ωはαよりも更に人口が少ないと言うから、もしかしたらこの場に居るΩは僕一人かも知れない。
それとも向こうを歩いている女生徒が僕と同じΩかも。
「あっちか。」
阿須那父さんが呟くと、
「それじゃ俺は此処までだな。後は大丈夫だよな、優樹?」
言葉では僕の名前を呼びながら、阿須那父さんの方を向く陽平父さん。
こう見えて結構過保護なんだよなぁ。
阿須那父さんってβなのに、時折Ω?ってご近所から言われているのを僕は知っている。
ご近所の奥様方が「やばい位の色気よね~」「男の色気だわ」「ファンになっちゃう!」って。
チラチラと阿須那父さんをコッソリ見ながら井戸端会議を道の端でしているのを何度か見掛けたから。
ちなみに陽平父さんの場合はちょっと違う。
「男らしい」とか、「逞しい」とか、「勇ましいわぁ、あの上腕二頭筋。」「胸筋、とっても素敵」とか、ちょっと羨ましいことを言われていたりする。
男っぽいってことかな?
確かに男の僕から見ても陽平父さんは職業が医者なのにちゃんと鍛えられている筋肉が身体に付いていて、男らしいと思う。正直かなり羨ましい。
僕も付かないかなぁ筋肉。
腕なんて陽平父さんと一緒に鍛えてみようと、リビングで腹筋等をしているのを横目に少ししてみたのだけど、僕は5回位しか出来なかった。陽平父さんは平気な顔をして、50回確りやっていたけど。その後腕立て伏せまで確り50回やっていたけど。
うう、ついていけない。
阿須那父さんは、陽平についていけるわけがないと言って苦笑していた。
阿須那父さんの方に幾つか視線が集まっているのを見て、陽平父さんが視線の主達に牽制するようにジトリと睨みつける。
うわぁ~空気が変わったよ。
威嚇ですか、何だかちょっと凄いなぁ。
目付きが『俺の』って声を大にして主張しているみたい。
その陽平父さんを阿須那父さんが見て、苦笑しつつ「大丈夫。」なんてのほほんとしている。
「は~…昔から阿須那の大丈夫は大丈夫じゃないからなぁ。」
「それ、どういう意味かな、陽平。」
「つまり、俺の阿須那ってことかな。って、優樹はそこでうんざりした顔をしない。」
グリグリと僕の蟀谷に拳を押し付けてくる。
「陽平父さん痛いってばっ。」
「痛くしてやっているの」と言ってからくくくと苦笑し、「じゃ、後でな」と小さく手を振って陽平父さんは僕達とは違う方へと移動していった。
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