ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか

柚ノ木 碧/柚木 彗

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 死者累々。
 その言葉がわかるかのような光景が今、目の前にある。


「ありゃ~馬鹿だね~。」


 と言って居るのは僕等の前に座っている杏花音さん。
 そうして、ちょっとだけ困惑しているようなそうでないような、どこか庇ってやりたくやる雰囲気の儚げな男性が皇さんの方を見てから頭を下げた。

 そんな僕等には目もくれず、担架を担ぎ込んで来た黒いカフェエプロンを着ているスタッフらしき人々がワラワラと現れ、慣れているのかあっという間に皇さんの威嚇によって倒れた数名を担架に担ぎ込んでいる。


「壱屋はそっち持って。」

「あ、はい!」

「って壱屋大丈夫か?こいつら全員αだけど。」

「平気っす、てか随分弱っちいαっすね。俺平気だったっすけど。」

「あーそりゃあ、彼処に居る上位αが壱屋には当てなかったのだろ~よ。喧嘩にも騒動にもならなかったし、俺にも威嚇が来なかったし、いやぁ~助かるわ、其処の君ありがとうなー!」


 と皇さんにお礼を言って、スタコラサッサ~と保健室方面へと去って行った。
 以前とは違い、随分と威嚇フェロモンの出し方が上手くなって来たなぁ皇さん。初めて会った時は部屋中に拡散してしまって、部屋に居た父さん達に指導されていたけど。
 あれ、父さんって言えば、保健室って陽平父さん今日不在だけど開いているのかな?それとも誰か別の人が臨時で保険医をしているのかな?と思っていたら、


がく!大丈夫だった!?」


 焦ったように先程別れた舞ちゃんが駆け寄って来る。


「舞!」


 舞ちゃんに声を掛けられた儚げな雰囲気の男性が、パアッと花が開花したように笑みを浮かべる。周囲がふわふわと光溢れるような光景に、「あれ、今って昼間だったっけ?」と言った錯覚を覚える。


「僕は大丈夫。あのαさんが助けてくれたから。舞、心配掛けてごめんね?」


 ふわふわした笑みを湛えている男性に抱き着かれ、満足そうにしている舞ちゃん。
 そしてそこかしこから「ふつくしい」「可憐だ」「やべぇ、月下美人じゃん…」「大学1の美人様だ」「本物の月下美人様だ…」という声が漏れ出ている。

 うん?月下美人?
 何だっけ、確かえーとサボテンの花だったかな。純白で、咲いたと思ったらあっという間に枯れてしまう花。成程、その容姿の儚さ具合からそう呼ばれているのかな?
 と言うか日本人かなぁ、凄く肌が透き通るように白くて髪の毛も色素が薄い。
 此処からだとよく見えないけれど、瞳の色ももしかしたら色素が薄いのかも知れない。


「婚約者を助けてくれて有難う皇君、助かりましたわ。」

「いいや、ああいう輩はほっとくと迷惑になるからな。それに先程から見ていたが、嫌がっている相手の言い分を無視して身勝手な事ばかり言っていた。そういう輩は一度痛い目をみねばなるまい。」


 つまり鉄拳制裁ですね、わかります。


「おまけに倉敷や一戸のことも見ていたからな。…牽制せねばなるまい。」

「ふふ、つまり嫉妬ですわね?」

「やる~皇君。愛されている~優樹君っ」

「べ、別に愛されているわけじゃ…」


 誰が見ても愛されているでしょ?と杏花音さんに言われて俯いてしまう。
 だって今、皇さんに手を繋がれている状態でカフェの席に座っているワケで。しかも4つある席の僕等の向かいには片手にスマホを掲げ持っている杏花音さんが、何時の間にかニマニマ笑いながら座っている。
 少し離れた席には先程の舞ちゃんと舞ちゃんの婚約者さんがほのぼのとした雰囲気を醸し出して座っていて、アチラはアチラで何だか別世界の様に穏やかな空気を作り出している。
 しかも何方も美男美女。

 絵になるよねぇ…。

 絵にはなるけど、何故僕等に向けてスマホを掲げ持っているのだろうか?
 どうせなら婚約者さんに向けたら良いのに。


「倉敷。」

「うん?」


 皇さんに呼ばれたので横(皇さんが真横に座っているから。)を向くと、何時の間にか先程頼んだプリンが届けられており、先程担架で皇さんの牽制で倒れ込んだ人達を担ぎ込んでいった黒いカフェエプロンを着こなした男性が「ごゆっくり」と微笑を湛えて去って行く。
 その何処か柔らかな物腰にあれ、あの人Ωかな?と思って去って行く後ろ姿を見詰めてしまう。

 その途端、僕の口の中に冷たくて甘いつるんっとした感触が入り込む。


「美味し…っ」


 パチクリと目を凝らしてよく見ると、僕の前にはスプーン。
 そしてスプーンを持っている皇さんが蕩けるような笑みを湛えて僕を見ている。

 あれ、何時の間に?
 ついさっきまで手繋いで居た筈なのに、今はスプーンを持っている。


「え」


 驚いて口を開けると、更にもう一口と甘いプリンが僕の口の中に入り込んで来る。


「美味いか?」

「う、ううう、うん。」


 確かに美味しいけど、美味しいのだけど!
 今の僕の頭の中は、絶賛大パニック中!
 一体何がどう絶賛なのかは全くわからないのだけど。

 今僕の気分が某ゲームや漫画のように見えるとしたら、僕の頭の上には大きなハテナマークが幾つも浮かんでいることだろう。

 そうして、僕達の姿を見て何故か小さく「きゃああああ」と悲鳴?奇声!?を上げながら、バシャバシャとスマホで撮影している舞ちゃんと杏花音さん。
 その周囲には何故か同じく男性の「ぐぉぉぉ」と言う若干引き攣ったような、意味不明の奇声、いや悲鳴?をあげ、物凄い勢いで机に頭をゴツン!という音を上げ衝突している人がチラホラ。


 …地獄絵図だけど…。
 この学園大丈夫かなぁ。


 ※※※

 前回のグループLINEの裏側ではこんなことがあったのでした。

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