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78 疑惑3
しおりを挟むside.一戸陽平
ん?
今なんと?
「ゆうが、優樹の戸籍作りに協力してくれたんだ。」
「は、い?」
どういうことだ?
優樹の戸籍作り?
戸籍って日本人が産まれてから死亡するまでの身分関係のことだよな。
それで、ええとこの場合は阿須那の息子である優樹個人の戸籍ってことだ。それを作る?
いやいや、普通日本で産まれたら役所に出生届けを出すだろう?
それを協力?
【当たり前】のことだろう!?
「どういうことだ、阿須那。」
つい、訝しんでしまって目付きがきつくなっているような気がする。
何故なら阿須那が少し怯んだ気配がするから。
そりゃあ…此処数年悩んでいたし、先程だって変だなとは思っていた。それでも阿須那が言いたくないならば聞かない方が良い。と思ってはいたし、いつか話してくれるまで待とうとは思っていた。
だから話してくれるならばこの旅行中ではないだろうかとも思っては居たのだ。
それが今何と言った?『【ゆう】が優樹の戸籍作りに協力してくれた。』だって?
あの【ゆう】が、か?
長いこと大事な一人息子である優樹を育児放棄していたあの女が?
中学になってから異様に阿須那に粘着し、俺等二人っきりになるのを何度も邪魔をしたあのクソ女が?阿須那が居なくなってから急に今迄被っていた猫を捨てて周囲を巻き込み、俺を罠に嵌め込んだりしたあの女が?
…まぁ、ゆうが村の問題児だったαの男の娘だったから、警戒されて同世代の者達には信用されて居なかったのは今となっては助かったけど…。
小学生の頃はともかく、中学入ってから徐々に阿須那に対する行動が異様だったから尚更拍車掛けていたし。
それにしたって、俺に内緒で協力って何だよ!
「ゆうが居なかったら、優樹を出産して育てて行くことも出来なかった…」
「は?阿須那何を言っている、ゆうは産んだ一人息子である優樹を長年放置していたぞ?」
「それは…そうだけど。」
「それに、何があったのかはわからないけど、どうして俺に相談しなかったんだ?高校卒業したら急に連絡が取れなくなって、俺は…」
これ、今言うことでは無いよな。
本来ならもっと前に…いや、蒸し返したく無かったから聞かなかったし聞きたく無かった。
結婚する前に、いやそれよりももっと前、阿須那が俺をやっと受け入れてくれるようになったから過去はもう良いとそう決めていた。
逃したくなかった、俺ってほんっと昔から阿須那しか見えて無くて、阿須那が好きだよなぁ…。
不破が前に「気持ち悪い位に好きなのですね、その気持に負けましたよ。」って言っていたなぁ。あれって、何時だったか、ああ、今はそれ所では無いな。
「すまない」
「いや、阿須那が俺に言いたく無いことの一つや2つはあるよな。此方こそすまない。」
「本当は陽平に言いたかった。けど…言い出せなかった。」
「阿須那?」
んん、どういうこと?
「俺は弱いから、うまく言葉に出来なくて。だから…高校生の時、陽平から逃げ出したんだ。」
「…阿須那は弱くねーよ。」
だから、どういうこと??
逃げ出したのは知っているし、避けられているのはわかったから俺からなるべく接触しないようにと思って阿須那の前に姿を見せないようにとはしていたんだ。
だけど、阿須那の一人息子の件でそれどころでは無くなったから、だから俺が弱った阿須那に付け込んで懐柔して…。
ああ、俺ってほんっと、今思うとつくづく屑なやり方しちゃったよな~…。
こりゃ~高校生の時、阿須那に逃げられるワケだ。
「弱い。だから…お前の子が出来たって知って、俺は…逃げ出した。」
ーーーーーーーーは???
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