ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか

柚ノ木 碧/柚木 彗

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 side.一戸陽平


「…」


 後頭部をボリボリと誤魔化すように掻きながら、目の前…数メートル先で繰り広げられている惨事に参っていた。

 そんな俺とは違い参ってなど無いような、そうでないような。
 何とも言えない微妙な表情を浮かべ、病院の駐車場に止めてある俺の車の中で後部座席に座っている体格のいいαの男が2人。

 ちなみに俺は運転席。
 現在助手席は当然ながら空席だ。
 俺が運転席に座る時、助手席は阿須那の指定席。
 優樹でも阿須那が居る時は座ったことが無い。だから俺の車に乗る時、家族以外は問答無用で後ろの後部座席一択だ。

 不破と、その不破が連れている長身の外人(身長がある為に車の天井に頭を擦り付けそうになるのでは?と思ったが、腰を屈めて普通に座っている。若干ヤンキー座りみたいになってはいるのはまぁ…。俺の車、阿須那の車とは違ってちぃとばかり小さいからなぁ。ファミリータイプに買い換えようかな。)の部下という男が数名、病院の駐車場の前で何処かにスマホで連絡をやり取りしたり、タブレットを取り出したりして操作をしている。

 それは良い。
 その辺りは普通だ。
 だが…約1名地面に転がっている男がいるが、あれは視界には入れては行けない。
 見ないようにしているが、うっかり視界の端に写ってしまうと…生理的に受け付けなくて、背筋がゾッとする。
 きっとあの男は病んでいるのだろう。
 多分、きっと。

 よし、考えないことにしよう。


「アレに関しては聞くな。」


 いや、考えないことにしている。
 不破が視界に入れたくないのか背をそむけているが、不破の横にいる長身の外人が「あ~…なんか色々スマン」と言葉を出してから絶句している。
 どうやら変態を見てしまったようだ。


「何で地面の匂いを嗅いでいる…。」

「ほら、Ω専門の病院だからαの本能剥き出しているのでは?」

「だが幾ら嗅いでも匂いはしないだろう。っていうか、アレでαなのかよ…。」


 同類と思われたくないと、不破の口から本音が漏れる。


「あれはもう変態っていう生き物だから、普通じゃ考えられないことをする。」

「人間辞めているのか…。」


 人の形をした変態?とは、ガタイの良い外人さんから出た言葉。
 不破が「部下に対する言葉ではないな」と言えば「部下だと思いたくない」と吐息を付きながら本音を漏らしている。
 ちょっと所か大分人権侵害な発言に思うが、このことを言うと恍惚とした表情で悶え始めるらしく


「病んでいるとも言うな。」

「変態だけど。」

「変態だからじゃね?」

「変態と言う名の病か。」


 あの~現実逃避したいのはわかる。わかるが、そろそろ変態から離れないか?あれはもう、そういった者として認識しておけば今は良いだろう。

 …多分。


「確かに。」

「変態なだけだ。」

「目に公害発生中なだけ。」


 ほっとくと延々と変態話をしまくりそうなのでここらで止める。


「そろそろ真面目に会話っていうか相談をしたいから、変態から離れてくれ…。」


 おお悪い、と言って笑う悪い大人代表という面構えのα二人。
「ほっとけばお巡りさんが回収してくれるだろう。」と言う不穏な言葉は聞かなかったことにする。と言うかそれでいいのか上司。それで良いのか雇い主。この際俺も仕事を依頼した側だから依頼主ではあるのだが、変態が地面に転がっているだけだと目を逸らす。


「で、これからどうする?」

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