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3章 今日も学園はゴタゴタしていますが、何故か苗字が変わってしまってコッソリ鑑賞出来にくくなる様です。

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「うごぁぁあ…」


 キツクテ苦しくて。

 思わず小さな呻き声を上げる。

 言って居る言葉はとても13歳の乙女の台詞とは言えないけどね。


 さて、私の本名はレッティーナ・アレイ。

 今迄はレナという偽名で通して居たけど、男爵家の三女の名前は何だか妙に硬い名前だ。

 お陰で個人的にはレナと言う偽名の方のが気に入って居る。

 だって前世の感覚なのか何なのか、何処と無く厳つくて長いレッティーナよりもレナと言う短く短縮した方が覚えやすくて良いと思うんだよね。


 因みに今、私はベットの住人では無い。

 ほんの少し前迄は、背に切り付けられた魔物から受けた怪我が原因で数日間高熱が出てベットの住人と化して居たが、その怪我が大分良くなり、まともに動けるようになった事によって今、今世紀最大の苦汁を強いられている。


 ふぉぉぉ…

 腰が、こしがぁぁ…ハキソウ。

 足、あしがぁぁぁっ

 誰かぁ~た~すけてぇえええっ


「あのなぁレナ」


 呆れた声を上げて来る、本来なら高位貴族の子息側に居るべき人が今回友人件今回の『事件(と言うべきなのだろうか…?)』証人(付き人かも)として横に居る。

 まぁニキ様ですがね。

 と言うか今この場に居るのはレッティーナですよっと。

 ああ成程、今後渾名としてなると。

 成程なるほど納得。

 それなら硬い響きのレッティーナより、短いレナのが好きだから良いなぁ。おまけに気軽だしね。


「だってぐるじぃ~」


 名前が気軽に短縮化されても、今現在の苦しみからは解放されないので状況は変わらないのだけど。


「我慢しろ」


「ヴヴ~…」


 分かっては居るんだけどね。

 今私は不本意ながらもこの国の城の中に居る。

 しかも王城の公式の場。

 所謂謁見の間とか言っちゃう場所だ。


 正直初めて来た場所なのでキョロキョロと貧乏田舎貴族根性丸出しで周囲を見たかったのだけど、その行為は宜しく無いという事で我慢中。


 見たいんダケドネ!

 更にそんな公式の場に居るという事は、一応名ばかりの『男爵家三女』と言う肩書がある為にコルセットで無情にも腰を締め付け…一歩間違えたら内臓出ると言える程に締め付けられております。


 このコルセット、とある魔法大臣のタウンハウスにて其処のメイドさんによって身支度されたのだけど、ゼッッッタイニ、絞め殺すつもりでやった筈。

 閉め付けた時にメイドさん約一名、確実に口元が歪んでいたからね。


 あの時のメイドさんの顔、あれは絶対笑いを堪えていた顔だ…


 イヤ良いけどさ。

 正式な格好をしなくては為らないからって言われても貧乏男爵家三女等、王城での公式のドレス等持って居ない。

 かと言って連絡しても、実家は当然と言わんばかりに見て見ぬ振りと言うかスルーして来るのは分かって居た。

 ならば仕方ない、街着の少しでも良い物を着て行くかなぁと思って居たら、なんとユウナレスカ様の提案で(後にユリア様が助言したと判明)ドレス一式を貰ってしまったのである。


 良いの!?と思ったが、結構こういった事はあるらしく、貴族でない一般庶民の場合は貸し出しをしているらしい。


 と言うか、一般庶民も参加出来るのか。

 考えてみたら今回のスタンピードみたいに『冒険者』とか活躍するだろうし、他にも色々あるだろうし考えてみればそう言うものなのかも。

 でもな~庶民の場合は流石にアクセサリーとか…ん?王城で身体を磨いてから貸す、と。成程それなら貸し出して、用事が済めば即返して貰えると言うことなのね、成程納得。


 後盗みそうな奴は基本謁見等はしない、と。

 恐れ入りました。


 因みにアクセサリーも一式の内に入って居るみたいで何から何まで細かく入って居るあたり、流石としか良いようが無い。


 でも下着…コルセットォォォッ!

 それが今回の責め苦ナノデスヨネェ。

 せめて紐で締め上げるモノでなければ良いのに。

 …自作する。

 どうせ今後も何度か装着させられそうだし、ソフトなタイプを自作してやるぅぅぅ!

 あ、市井に良い品があればソッチ購入致します。

 無論安価であればですが。

 それは兎も角。

 お礼を言った後レスカ様に確認をしたら、


「レナの事情は知って居るし、今回の褒美の一つとして父上から受け取って欲しいと言われている。だから遠慮はするな」


 と言われて了承。

 一応牽制の意味もあるそうで。

 って、何の牽制?


「レナは一応『男爵家三女』だからな。今回の事で目立つだろうし、珍しい『魔力を吸収』何て言う魔力の持ち主だからな。婚約をしていないから、今後狙って来る輩も出て来るだろう。その為の牽制だ」


 アレイ家としては別として、婚約者が居ない立場なら私の『魔力を吸収』する力を狙って、また血統的に魔力が少ない家柄の貴族が狙って来る可能性が高いのだとか。

 うえぇ~…


「男爵家という事で圧力を掛けて来る輩も出るだろうし、王家として私が盾になって置けば早々妙な輩が出て来にくいしな」


 最も彼奴らが早々に打ち明ければこんな手間は必要ないがな、と堂々と言われ苦笑いをしてしまった。


 彼奴らって…人増えてるし。








「レナ、お腹の下辺りに力を入れると少しはマシになると聞いて居る。こっそり魔力で身体強化も掛けてやってみろ」


「うう、兄さんわかった」


 コルセットがきつい。

 ハイヒールの踵が痛い。


 このヒール何センチあるんだ?前世の知識だと八㎝以上だとハイヒールとかって言ったようなそうで無い様な。

 少なくとも八㎝以上はあるよね、これ。

 痛む部分をこそっと強化してみると少しだけ楽になる。

 おお、これは良い。

 ならばとお腹の下に力を入れてみるけど、全く…うん、変わらないんですケド?


「兄さん、そのお腹云々の話だけど、誰から聞いたの?」


 因みにこの場には私の他に、右側に兄のジーニアス。左側にニキ様。そして兄のやや後方にコリンさんが居る。

 本来ならコリンさんは兄の隣に居るべきなのだけど、貴族では無い為に半歩程下がって居る。

 会場に入る際に同じでも良いのですよ、騎士団の方ですしと言われたのだけど、コリンさん当人が「尊敬する先輩に敬意を払っているのです」と宣言し、その様な配置となって居る。

 ジーニアス兄さんは気にしなくて良いのにとは言ったのだけど、余計意固地になってしまったからこれはもう苦笑するしかない。


「ん?あ~…シドニー姉さんから」


「シドニー姉さん正式な貴族のドレス着た事あると思う?」


「…」


「…」


「騙された…」


 ガクッと項垂れる兄に、シドニー姉さん多分揶揄ったのだろうなぁと思う。

 シドニー姉さんは実家での境遇を結構強く恨んでいて、時々こうしてジーニアス兄さんを揶揄う事がある。

 でもその行為はちょっと考えれば即分かる程度の事が多く、何だかんだ言ってジーニアス兄さんを可愛がって居るのだろうなって思うんだよね。


 ジーニアス兄さん、アレイ家では一番不遇な男子兄弟だからね。最も姉妹の私達のがもっと酷いのだけども。


「多分商家の時の服とかでは良いのかも知れないけどね」


 一応フォローを入れて置く。

 だけど、多分商家関係ではこんなにひどく締め付けるコルセットはしないんじゃないかなぁ。大事な商談や商売道具を持ち歩くのにキツク締め付け、内臓飛び出しそうになるコルセットは邪魔にしかならないだろうし。


「そうだな、うん」


 素直に納得している兄をみて、また揶揄われそうだなぁと思いつつ。


 謁見の間に国王達が入室して来た。












「ジーニアス・アレイ前へ」


「は!」


 ジーニアス兄さんはドレス姿の私とは違い、騎士団の正式な格好…普段の鎧姿では無く、公式の場での装いである。

 因みにその際階級によって色々装飾が違うらしく、兄は青と白の豪華な…ん?これって結構出世してるんじゃないっけ?


 今回同じく褒美を貰う兄の後輩のコリンさんも並んで居るけど、彼は装飾品が少なく比較的簡易な衣装となっている。色合いも白と赤で、これは見習いより一個上、つまり正式ではあるが極々一般的な騎士の衣装となる。


 尚この騎士団の衣装、全て貸出である。

 公式の際に着るだけだからと言うのもあるが、アレイ家みたいな貧乏貴族の出が結構多く、またこの衣装が結構高額で普通の一般家庭が用意をするとなると…いや、私のお給金で二年分の金額が掛かると聞いた。


 無理ですね、はい。

 貯金しておりますが、とてもでは無いけど其処まで溜まって居ない。

 貸し出し制度大助かりです。


「此度の活躍実に見事だった」


 兄の前にこの国の国王、アレキサンダー・ハンクス・アナジスタ様。

 つまりユウナレスカ様のお父様が賛辞を述べる。

 初めて会ったけど、ほんっと似て無い。

 ユウナレスカ様は睫毛バッチリの色白美少年って感じだけど、この王様ちょっと肌の色が黄色人種の色白さんと言う感じで色彩が違う。それでも流石王族と言う感じで美しい容姿だけど、どちらかと言うと美丈夫と言う感じ。

 相当鍛えているんじゃないかな?

 上腕二頭筋が中々で、ボディビルダー程では無いけど力強い気配がする。


 それと王の覇気。

 カリスマって言うのかな?それが凄まじい。

 お陰で中年の年齢にも関わらず、若々しく見えるのだから末恐ろしい。

 二十代中盤から後半に見えちゃうんだもんねぇ…。

 そして今回の襲撃、スタンピードの被害者で何十人もの暗殺者に狙われた隣国の王子であるアレクサ・ロー・ウィックロー様が横に控えて居て、ニコニコと微笑んでいる。


 う~ん目が幸せになりそうだ。

 笑む様は正に美少年、いや天使か。

 眼差しは柔らかく、その美貌は正しく天上の…以下略。

 乙女ゲームの公式だとエライ褒めちぎられて居たけど、確かにと思う。思うんだけど、何か違和感。


 その原因はアレクサ様の目だ。

 ソックリなんだよね、アレス・バーンド様と。

 全体的な作りは女性的な美しさ、いや中性的かな?なアレクサ・ロー・ウィックロー様と男らしい容姿のアレス・バーンド様。

 面差しも全く違うのに、目だけが瓜二つ。

 アレス様を知らなければ気が付かないけど、ねぇ…

 そんなアレクサ様の横にはこの国の第二王子のユウナレスカ様が控えている。


 …ん?


 何だかさっきからやたら視線を感じるのだけど。

 うーん背後ではない、よね。

 いや、謁見の間に集められている貴族達からやたらと視線を集めているのは分かるけど、前方から目線が外れないんだよねぇ。

 誰だ?

 ユウナレスカ様なら心配してって言うのもあるかも?だけど、彼はコッチを見て居ないし。

 と言うか、王の反対側に控えている第一王子ガーフィールド・アナジスタ様を見て無いか?

 そしてその人物がジーと此方を見て居ないか?


 何故だ。

 うん、きっと私の背後に居る貴族の誰かを見てるんだよね?

 気に為る貴族の子女とか多分居るんだよ、きっと。

 そう思ってチラリと其方の方、ガーフィールド様の方に視線を向ける。

 いや、何故此方をマジマジと見てるし。

 しかも視線バッチリと合わさったのに、真顔で見てるし。

 どうしたらいいのよ。

 視線外すべき?さり気無さを装って見てませんよ~と言う風に視線ずらすべき?


 ぐぉぉっ!微笑まれた。

 何故だぁ!

 よ、よし、視線。えーと視線少しずらし…うん、ユウナレスカ様を見ると困惑した顔付で此方を見られた。一体この状況は何事なのよ~!


 キノセイ。

 よし、気のせいだ。

 未だに視線が外れないけど、きっと幻覚だな。


 さてそんな事はどこぞに放置して、と。

 この謁見の間、正妃と言うか王妃は不在だ。

 この国の王妃は数年前に亡くなっており、今は側室が一人居る。だが王はその側室を正妃にする事を拒んで居る。

 勿論この情報は乙女ゲームでの情報で実際の情報とは違うかも知れないけど、現に王妃の座る椅子は空席。

 ゲームでしか見覚えが無いけど、側室が他の貴族と同じ様に、まるで王家とは関係無いかの様な位置である場所に立って居る。


 これってせめて王室側に立って居たりするんじゃないのだろうか。王室の側室なのに、何だか見せしめの様な位置に居ない?

 しかもこの側室、『不渡り』等と言う噂も流れているんだよね。勿論コレも乙女ゲームの知識でしか無いけど、どうもこの側室が他の貴族達よりやや後方に居る辺り、あまりこの王城での地位とか諸々良い状態で無い気がする。


 まぁ私には関係ないけどね。

 ただまぁ、その側室がジトーとした目で王妃の居る席を睨み付けて居る辺り、正直関わり合いに為りたくないと言うのが本音だけど。


 その目がとてもコワイよぅ。


「よって、ジーニアス・アレイ。其方に爵位を授ける」


 王がそう言った後、【魔法大臣】のハリトン・ノスタルジア・ジアス様。ケイン様のお父様が声を上げ、


「名をこれよりジーニアス・アルセーヌ・ガルニエへと今日より名乗ると良い」

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