デッドエンドで処刑された悪役令嬢は、魔王様の手により蘇って溺愛されるそうです

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2 魔王様はお優しい

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「うぅん········ここは·······」

意識が浮上する。ローズは何があったのかしばらく分からずにぼーっとしてから、不意に自分の身に起こったことを思い出した。

「そうだ······私、処刑されて······」

首を触るがそこには全く傷跡はなかった。いや、それどころか全身にあったはずの昔の傷まで綺麗に消えていた。体調も今まで1番良くて困惑していたローズは······しかして、その近くで椅子に座って寝ている人物を見て驚愕した。

「すぅ·······すぅ·······」

強面だが何となく母性本能を擽られる寝顔。だがそこではなく、角や尻尾が生えていたのだ。そしてローズは人間ではない彼に思い当たることがあって呟いていた。

「魔王·······」

見たことはない。でも不思議と彼が魔王だとわかった。そして·····同時に角や尻尾に触りたくなった。

「で、でも相手は魔王だし······それに魔王って冷徹で残忍って言ってたし········でも、夢なら大丈夫だよね?」 

どうせ処刑されたのだから夢なのだろうと思い込んで恐る恐る角に触る。と、思ったより柔らかくてびっくりする。

(·······なんか和む)

そうしてしばらく堪能していると、流石に目覚めた魔王は彼女を見てキョトンとして聞いた。

「······何してるの?」
「え、あ·········」

何をしているのだろうと思って手を離すローズ。そんなローズを見て魔王は強面な顔を緩ませて言った。

「えっと·······大丈夫?どこか痛くない?」
「大丈夫ですけど······あの、ここは?」

今更ながら見知らぬ場所にいることに気づいてそう聞くと魔王は少し考えてから答えた。

「ここは魔物の国だよ。俺は魔国って呼んでるけどね 」
「魔国······あの、じゃあ貴方は魔王様なんですか?」
「そうなるかな」

不思議なことに恐怖は少なかった。確かに外見は怖いけど······彼から感じる視線は今までで1番優しいものだったからだ。

「ごめんね、怖いでしょ。あと勝手に連れてきて生き返らせちゃったけど······」
「じゃあ······やっぱり私1回死んでるんですか?」
「うん。もっと早く気づけば良かったのにね······本当にごめんね」

そうして申し訳なさそうに、泣きそうに微笑む彼は噂で知ってる冷徹でも、無慈悲でも、残忍でもなく、その見た目に反して物凄く柔らかく見えた。

「あの······どうして助けてくれたんですか?」

当然の疑問だ。その疑問に魔王は少しだけ迷ってから答えた。

「その·······一目惚れしちゃったんだ·····」
「ふぇ?」
「君が凄く小さい時に一目惚れして········その、本当はもっと早く助けたかったけど、色々あって遅くなって······こんなの虫のいい話だと分かってても君を諦められなくて·······ごめん」

シュンとする魔王にローズは驚いてしまった。まさか自分のことを好きだと言ってくれる人がいるとは·······人じゃないけど。

「夢じゃないの······」
「え?」
「あ、あの······私のこと、好き、なの?」
「うん·······え······?」

気がつくとローズは涙を流していた。初めて他人から向けられた好意。しかもこんなに自分のことを思っての言葉にローズは思わず涙を流しながら魔王に抱きつくと言った。

「本当に·····本当に、私のこと好きなの·····?」
「うん······」
「あのね·······私、皆から嫌われてて·······信じてた人にも裏切られたの·······貴方は私のこと見捨てない?」
「その······こんな強面で人間じゃないけど······それでも、君のこと本当に大好きなんだ」

そっとローズを抱きしめる魔王。その手は本当に優しくてローズは更に涙を流してしまうのだった。





「魔王様。お時間です」
「······わかった」

泣き疲れてしまったローズをベッドに戻して優しく頬を撫でてから魔王は表情を鋭くする。いや、ローズのために柔らかくしていた表情筋を元に戻しただけなのだが······それでもかなり鋭く見えてしまうのだ。

「魔王様。あの娘どうなさるのですか?」

廊下を歩いているとそんなことを聞いてくる側近のガウル。狼のような容姿の魔人である彼は魔物の中でも必要に応じて魔王が魔物からクラスアップさせた存在なのだ。

元来魔物というのは1000年以上の時を生きれれば魔人という上位種族にクラスアップするのだが、魔王は自身の魔力でその進化を促すことが可能なのだ。

そんな彼の質問に魔王は先程まででは考えられないほど冷たい声で言った。

「無論、我が妃にするのだ」
「·······下等種の人間ごときをですか?貴方は我らが王なのです。妃はもっと別のものを探すべきかとーーーがっ!」

ガウルの首を片手で持ち上げながら魔王は意図的に口調を変えて言った。

「我が欲したのだ。それと我の前で彼女を侮辱するなら貴様といえど消すからな」
「か、畏まりました······」

内心ため息をつく魔王。こんな傍若無人は性にあわないから嫌いなのだが······我の強い魔物を従えるのならこうしないといけないと分かってるので無理をしてでも演じる。

こんな姿をローズに見られたら嫌われるかもなぁと思っていた魔王だが、結果としてそれは杞憂に終わるのだった。その光景をたまたま見ていたローズは彼が無理をしているのがすぐにわかったし、何より自分のために本気で怒ってくれたことが何より嬉しくて·······彼のことが益々気になるのだった。








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