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3 魔王様の仕事風景
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「ねぇねぇ、魔王様ってどんな人なの?」
ローズが魔王に救われて数日が過ぎた。昼と夜にはローズの部屋を訪れる魔王だが、それ以外の時間は仕事で忙しいみたいだ。そしてローズの側には護衛兼お世話係として人間そっくりの姿をしたメイドがいるようになった。名前はイリア。黒髪の美人の彼女はいつも通りの涼しい顔でその質問に答えた。
「魔王様はこの地を統べる我らの王です」
「それはわかるけど······イリアから見てどんな人なの?」
「私はただの護衛ですから。ですが······そうですね。魔王様は我らをお救い下さった偉大なるお方です」
「救った?」
「ローズ様は私のこと人間のように見えますよね?」
その質問に頷くとイリアは少しだけ悲しそうな表情を浮かべながら答えた。
「魔物にとって人間というのは下等生物なのです。その姿に近い私達の種族はよく迫害を受けるのです。ですが魔王様はそんな私達のことを受け入れてくれて、あまつさえお仕えすることまでお許しいただきました。あの方は私達にとって大切なお方なのです」
「······それって恋愛感情?」
少しだけムスッとするローズ。なんとなく魔王にそういう感情を向けられるのが嫌なのだ。そんな可愛い嫉妬を知ってか珍しくくすりと笑ってイリアは答えた。
「滅相もない。私達はあのお方にお仕えするだけで十分なのです。ですからローズ様のご心配されるようなことは有り得ません」
「······じゃあ、魔王様が求めてきたら受け入れるの?」
「それは·······ご命令でしたら。ですが、あの方がそんなことをしないというのはローズ様の方がお分かりになるのでは?」
確かにそうだ。彼の素顔を知ってるからこそ、そんなことはしないと断言できた。ローズはそれで少しだけ安心しつつも思いきってイリアに聞いていた。
「ねぇ、魔王様のお仕事って見ること出来ないの?」
「·······出来なくはないと思います。ですが、この城にはローズ様のことを快く思ってない者もおります。魔王様としてはローズ様を確実に守りたいのでお部屋でのんびりとされることを望まれております」
その言葉にローズは少しだけ考える。確かに人間の自分が魔物から良く思われてない可能性は高い。でも、彼がああして無理をしてるのを自分だけは知ってるのだ。なら時々でいいからもっと息抜き出来るように側にいたい。そう思ったのだ。
「ねぇ、イリア。お料理って出来る?」
「人間の世界で一応は習いましたが·······どうなさるのですか?」
「うん、あのね·······」
「魔王様。こちらの書類が終わりましたら、人魚族への慰問です」
「·····わかった」
思わずため息をついてしまいたくなる。混沌としていた魔物の国を1度力で纏めてから統治をしているが·······こういう細かいことが出来る魔人はほとんどいないので結局ほとんど全部自分の仕事になってしまう。
唯一の癒しはローズとの時間のみ。いっそずっと側にいて欲しいが·····彼女も自分のような怖いのとずっと一緒は辛いだろうと自重していた。
彼女をなんとか助け出してから、魔王は彼女との距離感を計りかねていた。告白みたいなことはしたけど·······そもそもこんな状況でつけ込むのはなんだか卑怯な気がしたのだ。もちろん魔王としては彼女のことを愛でたくて仕方ないが·······この姿の自分が本当に愛でていいのか悩んでしまう。
彼女が望むならどうにかして人間の世界に返してもいいとも思ってるが······それを言い出せないのが魔王の自分でも狡いと思ってるところだ。
コンコン。
『魔王様。イリアです』
珍しい客人に魔王は驚く。イリアにはローズの側役を命じたはずだが·····何かあったのだろうかと不安になりながら答えた。
「構わん。入れ」
『失礼します』
そうして入ってきたのはメイド服を来たイリアと······そして、彼が今1番考えている人物のローズだった。ローズの姿を見た瞬間側近のガウルが視線を鋭くしたが、それを魔王は鋭い視線で威圧して黙らせてから聞いた。
「ローズか。どうかしたのか?」
「魔王様に作ってきたんだけど······食べる?」
その手には手作りと思われるサンドイッチが皿に乗っており、魔王はそれに驚いてから聞いていた。
「お前が作ったのか?」
「うん·····下手かもだけどどうかな?」
「魔王様は現在大切な仕事の最中だ。それにそのような粗悪品を魔王様に献上するなど······」
「ガウル·····少し黙れ」
ギロりと殺気を乗せてガウルを睨んで黙らせてから、魔王は書類を片付けながら言った。
「次の仕事まで時間がある。部屋でゆるりと食べるとしよう」
「うん!」
嬉しそうに頷くローズを可愛いと思いつつも、そのローズを恨めしそうに見ているガウルにため息をつきたくなる。こうまで人間が嫌いだとこれからは邪魔になるし······場合によっては消そうと考えるのだった。忠義は嬉しいが、個人的感情が強すぎる上にローズに危害が及ぶなら本末転倒だ。
ローズが魔王に救われて数日が過ぎた。昼と夜にはローズの部屋を訪れる魔王だが、それ以外の時間は仕事で忙しいみたいだ。そしてローズの側には護衛兼お世話係として人間そっくりの姿をしたメイドがいるようになった。名前はイリア。黒髪の美人の彼女はいつも通りの涼しい顔でその質問に答えた。
「魔王様はこの地を統べる我らの王です」
「それはわかるけど······イリアから見てどんな人なの?」
「私はただの護衛ですから。ですが······そうですね。魔王様は我らをお救い下さった偉大なるお方です」
「救った?」
「ローズ様は私のこと人間のように見えますよね?」
その質問に頷くとイリアは少しだけ悲しそうな表情を浮かべながら答えた。
「魔物にとって人間というのは下等生物なのです。その姿に近い私達の種族はよく迫害を受けるのです。ですが魔王様はそんな私達のことを受け入れてくれて、あまつさえお仕えすることまでお許しいただきました。あの方は私達にとって大切なお方なのです」
「······それって恋愛感情?」
少しだけムスッとするローズ。なんとなく魔王にそういう感情を向けられるのが嫌なのだ。そんな可愛い嫉妬を知ってか珍しくくすりと笑ってイリアは答えた。
「滅相もない。私達はあのお方にお仕えするだけで十分なのです。ですからローズ様のご心配されるようなことは有り得ません」
「······じゃあ、魔王様が求めてきたら受け入れるの?」
「それは·······ご命令でしたら。ですが、あの方がそんなことをしないというのはローズ様の方がお分かりになるのでは?」
確かにそうだ。彼の素顔を知ってるからこそ、そんなことはしないと断言できた。ローズはそれで少しだけ安心しつつも思いきってイリアに聞いていた。
「ねぇ、魔王様のお仕事って見ること出来ないの?」
「·······出来なくはないと思います。ですが、この城にはローズ様のことを快く思ってない者もおります。魔王様としてはローズ様を確実に守りたいのでお部屋でのんびりとされることを望まれております」
その言葉にローズは少しだけ考える。確かに人間の自分が魔物から良く思われてない可能性は高い。でも、彼がああして無理をしてるのを自分だけは知ってるのだ。なら時々でいいからもっと息抜き出来るように側にいたい。そう思ったのだ。
「ねぇ、イリア。お料理って出来る?」
「人間の世界で一応は習いましたが·······どうなさるのですか?」
「うん、あのね·······」
「魔王様。こちらの書類が終わりましたら、人魚族への慰問です」
「·····わかった」
思わずため息をついてしまいたくなる。混沌としていた魔物の国を1度力で纏めてから統治をしているが·······こういう細かいことが出来る魔人はほとんどいないので結局ほとんど全部自分の仕事になってしまう。
唯一の癒しはローズとの時間のみ。いっそずっと側にいて欲しいが·····彼女も自分のような怖いのとずっと一緒は辛いだろうと自重していた。
彼女をなんとか助け出してから、魔王は彼女との距離感を計りかねていた。告白みたいなことはしたけど·······そもそもこんな状況でつけ込むのはなんだか卑怯な気がしたのだ。もちろん魔王としては彼女のことを愛でたくて仕方ないが·······この姿の自分が本当に愛でていいのか悩んでしまう。
彼女が望むならどうにかして人間の世界に返してもいいとも思ってるが······それを言い出せないのが魔王の自分でも狡いと思ってるところだ。
コンコン。
『魔王様。イリアです』
珍しい客人に魔王は驚く。イリアにはローズの側役を命じたはずだが·····何かあったのだろうかと不安になりながら答えた。
「構わん。入れ」
『失礼します』
そうして入ってきたのはメイド服を来たイリアと······そして、彼が今1番考えている人物のローズだった。ローズの姿を見た瞬間側近のガウルが視線を鋭くしたが、それを魔王は鋭い視線で威圧して黙らせてから聞いた。
「ローズか。どうかしたのか?」
「魔王様に作ってきたんだけど······食べる?」
その手には手作りと思われるサンドイッチが皿に乗っており、魔王はそれに驚いてから聞いていた。
「お前が作ったのか?」
「うん·····下手かもだけどどうかな?」
「魔王様は現在大切な仕事の最中だ。それにそのような粗悪品を魔王様に献上するなど······」
「ガウル·····少し黙れ」
ギロりと殺気を乗せてガウルを睨んで黙らせてから、魔王は書類を片付けながら言った。
「次の仕事まで時間がある。部屋でゆるりと食べるとしよう」
「うん!」
嬉しそうに頷くローズを可愛いと思いつつも、そのローズを恨めしそうに見ているガウルにため息をつきたくなる。こうまで人間が嫌いだとこれからは邪魔になるし······場合によっては消そうと考えるのだった。忠義は嬉しいが、個人的感情が強すぎる上にローズに危害が及ぶなら本末転倒だ。
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