デッドエンドで処刑された悪役令嬢は、魔王様の手により蘇って溺愛されるそうです

yui

文字の大きさ
4 / 17

4 魔王様は手作りに感動する

しおりを挟む
「ど、どうかな?」

ドキドキしながら魔王のリアクションを待つローズ。イリアに習って人生で初めて作ってみたが······正直形は微妙に歪なので不安なのだ。

そんなローズの不安とは裏腹に魔王は久しぶりに食べた食事·····しかも手作りに密かに感動していた。この身体······魔王となってから激務続きで食事など、きちんと取れてなかったのだ。

無論、この身体は睡眠も食事も必要ない非常に便利な身体だが、出来ないわけではないので有難い。

しばらく味わってから魔王は彼女にだけ分かるように微笑んで言った。

「凄く美味しいよ。ありがとう」
「えへへ·····良かったぁ」

ホッとするローズ。強ばってた魔王の表情を柔らかく出来たのも嬉しかったのだ。そんな優しい彼女の気遣いに気付いた魔王は自分の狡さに少しだけ罪悪感を抱いて思わず聞いていた。

「ローズ。本当にいいの?」
「ん?何が?」
「その·····俺みたいな怖いのの側にいて。君が望むなら人間の世界に君を返すことも出来るけど·······」
「それは····絶対に嫌」

ローズとしてはもう、人間は誰も信じられなかった。かと言って魔物を信じてる訳でもない。彼女が信じてるのは魔王ただ1人。彼の側にいることがローズにとっての幸せなのだ。

「私ね、初めてなの。誰かに好きって言われたの。それにね······魔王様はいつも無理してるから私の前だけでも楽にして欲しいの」

きっと、自分には想像もつかないほどに過酷なことをこれまで1人でやってきたであろう魔王の心を少しでも癒したいのだ。そんな彼女の言葉に魔王は嬉しくなって思わず少しだけ涙ぐんでしまっていた。

「ありがとう······」
「ねぇ、魔王様。本当の名前はなんていうの?」
「名前?」
「うん。魔王様って名前が本当の名前じゃないんでしょ?」

久しく聞かれたことがなかったその質問に魔王はしばらく迷ってから本当に久しぶりにこの世界での本名を告げていた。

「そう·····素敵な名前だね」
「でも、出来れば魔王で通して欲しい。その······恥ずかしいのもだけど、真名はバレたくないんだ」
「うん。分かった」

物分りのいいローズに魔王は心底有難いと思った。特に魔物ばかり相手にしてると力でねじ伏せなくていいから本当に楽でいい。そして可愛い。

「ローズ。これを持っててくれないか?」
「綺麗なペンダント·····貰っていいの?」
「うん。お守りみたいなものだから」

初めて貰ったプレゼントにローズは嬉しそうに微笑むが·····魔王は願わくばこれの力が発動しないことを切に願うのだった。




「イリア」
「はい。魔王様」

ローズとの憩いの時間を過ごした後。部屋を出て近くで待機していたイリアに魔王は先程までの緩めていた表情をキリッと戻して言った。

「ローズの護衛、警戒は怠るな。恐らくそう遠くないうちに最初の奇襲があるからな」
「はい。この命に代えましてもローズ様はお守りいたします」
「ダメだ。命は大切にしろ。それにお前が居なくなってはローズが悲しむ」
「なんと慈悲深い······かしこまりました」

長年魔物や魔人を見てきてわかったことがある。上位の存在に絶対服従で、命すら簡単に投げることもあるということだ。イリアが死んでは代わりにローズの世話をする者がいなくなるのでなるべく長生きして貰いたいのだ。

まあ、人間に近い姿でこうまでローズと親しく出来るのもイリアくらいだろう。

「魔王様。ガウル様のことは·····」
「わかってる。そのうち処理するさ」
「考えたくはないですが······ローズ様に何しから危険があるとすれば」
「そうだな」

忠義も行き過ぎて暴走すれば邪魔でしかない。その時は遠慮なく消すつもりだ。そうしてイリアに命令をしてかれ魔王は仕事に戻るのだった。その嫌な勘が当たっていたと知るのはそう遠くないうちのことだった。


しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処理中です...