デッドエンドで処刑された悪役令嬢は、魔王様の手により蘇って溺愛されるそうです

yui

文字の大きさ
5 / 17

5 魔王様激怒

しおりを挟む
「ふふふ~ん、ふ~ん、ふん、ふふふ~ん♪」

ご機嫌に身につけたペンダントを眺めるローズ。貴族の頃、確かに外行の格好として装飾品を着けることは珍しくなかっが······贈り物は初めてなので嬉しくなる。

そんなローズの様子に少しだけ複雑そうな表情を浮かべるイリアだったが、ふと気配を消して部屋に近づいてきてる存在がいるのを捉えて警戒体制に入る。

「ローズ様。少し失礼します」
「え?」

驚くローズを抱き寄せて姿勢を低くしてローズを庇うように扉に背中を向けるーーーと、突然ドアが破壊されて、黒い陰が襲ってきた。

ローズを衝撃から守ってから、イリアは懐から小刀を出すとそれで相手の爪をなんとか受け止める。そしてその人物が誰なのか分かって顔を顰めて言った。

「お下がりください······ガウル様。このようなことを魔王様が望まれないのはわかっておりますよね?」

案の定というか、襲ってきたのは側近のガウルだ。普段の姿より一回り大きい本来の姿で襲ってきたガウルは鋭い視線で後ろにいるローズを睨むと言った。

『どけ。俺はその女を殺さねばならない。魔王様を誑かすその魔女をな』
「なりません。この方は魔王様の大切なお后様です」
『ふざけるな!人間ごとき下等生物が魔王様のお傍になど相応しいわけがないだろう!』
「ぐっ······!」

空いてるもう片方の手でイリアを吹き飛ばすと、ガウルはローズにその爪をたてようとするが······その前に横から割り込んできたイリアによって阻止される。

「お逃げください!ローズ様!」
「で、でも·······イリアが······!」
「私は大丈夫です!それに·····あなた様は魔王様に必要なお方です。絶対に守ってみせます!」
「イリア·······」

どうすればいいのか立ち尽くすしかなかったローズ。折角助けられた命だ。せめてこの命は魔王のために使いたい。でも、イリアを見捨てることなど出来なかった。

「がっ!」
『ふん·····手こずらせおって』

見れば、イリアはガウルの爪で足を負傷して組み伏せられていた。そうしてトドメの一撃を加えようとするのを見てローズは·····勢いよくガウルにタックルをすると叫んだ。

「やめて!イリア逃げて!」
「ローズ様·····!何故·····!」
『離れろ魔女め!』
「きゃっ!」

非力なローズは少しの振り払いですぐに地面に飛ばされてしまった。イリアがなんとか立ってローズを庇おうとするが·····それよりも早くガウルはローズに近づくと言った。

『貴様ごときが魔王様のお傍にいるなんて有り得ないのだ。生まれてきたことを後悔するといい!』

奇しくもそれは元婚約者の王太子に言われた台詞に近かった。そうして最後の一撃がローズに当たる前に········今度はローズは前とは違って微笑んでいた。

(魔王様······大好きです·······)

不思議と前のような恐怖や諦めはなかった。ただただ、彼の優しい顔が浮かんでいた。

「さようなら······魔王様······」

そうして何かを叫んでいるイリアに微笑んでからそっと目を閉じるのだった。






痛みはなかった。それどころか何かに優しく包まれているように思えた。知っている温もり。

「大丈夫か?」

その声も知っていた。ゆっくりと目を開けると·······そこには自分を抱きしめている魔王の姿があった。

「魔王様·······夢·······?」
「現実だよ。遅くなってすまなかった」

どうやら自分はまだ生きているようだった。見ればガウルの爪は空中で見えない何かによって防がれていたのだ。

『ま、魔王様······!?なぜ······!?』
「あ、魔王様!イリアが······」
「わかっている」

ガウルの驚愕を無視して魔王はローズを抱きしめたまま怪我で倒れているイリアに近づくと言った。

「よく頑張ったな、イリア」
「ま·····魔王様·····申し訳·····」
「気にするな。お前はできる限りのことをしたさ」

そっとイリアの頬に触れる魔王。するとイリアの傷は一瞬で綺麗に消えたのだった。ゆっくりと寝息をたてるイリアを見てホッとするローズを魔王は1度下ろすとそっと抱きしめてから言った。

「こんなことに巻き込んでしまってごめん」
「いいの。だって魔王様助けに来てくれたもん」
「そうだな······少しだけこの部屋で待ってて。俺はガウルと話をしてくるから」

そう言ってパチンと指を鳴らすと途端に消える魔王とガウル。きっとどこかに移動したのだろう。それを見てからローズはへたりと地面に座り込むのだった。






「さて······ガウル。お前は楽には殺さないからな」

一瞬で移動したのは異空間。それも恐らく魔王個人の空間だろう。ガウルは魔王から放たれる殺気を浴びて震えながもなんとか弁明をしようとする。

『ま、魔王様。どうかご再考ください!あのような下劣な女を娶るなど······がっ!』

ザクザク!と全身を空中から現れた無数の刃で貫かれるガウル。派手な血飛沫をあげて苦しむガウルは虫の息だが、しばらくそうして苦しみを与えてから死にそうになるところで魔王は治癒の魔法で一瞬で回復させる。

『はぁ·····はぁ······ま、魔王様······』
「勘違いをするな。許してなどいない」
『へ·····ぐばっ!』

今度は全身を毒で蝕まれる。物凄い激痛と手足が消えていく苦しみを味わってから、死ぬ寸前でガウルはまた魔法で蘇生させられる。

「言っておくが、私はお前を許してはいない。これから······生まれてきたことを後悔しながら絶望というものを教えてから·······欠片も残さずに消し去ってやる」

永遠にも思える時間をガウルは苦しみと恐怖で過ごした。そして誓った。もし生まれ変わったなら絶対にローズには関わらないようにしようと·········そうしてこの日、ガウルという存在は永遠に消えるのだった。転生もさせないほどに消滅させたのだ。







しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

恋心を封印したら、なぜか幼馴染みがヤンデレになりました?

夕立悠理
恋愛
 ずっと、幼馴染みのマカリのことが好きだったヴィオラ。  けれど、マカリはちっとも振り向いてくれない。  このまま勝手に好きで居続けるのも迷惑だろうと、ヴィオラは育った町をでる。  なんとか、王都での仕事も見つけ、新しい生活は順風満帆──かと思いきや。  なんと、王都だけは死んでもいかないといっていたマカリが、ヴィオラを追ってきて……。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...