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6 魔王様を慰める
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「あ、魔王様······」
魔王がローズ達の部屋に戻ってきたのはローズの主観では5分後くらいのことだった。魔王がガウルを消すのにかけた時間は異空間ということでこちらでは大した時間ではなかったが·······魔王は少しだけ疲れてるようにローズには見えた。
「ローズ、ごめん。怖い思いさせたよね?」
「ううん、大丈夫。あの人はどうしたの?」
「······まあ、二度とローズに会えないようにしてきたよ」
それが言外に殺したと言ってるように思えたが·······ローズとしては魔王の辛そうな顔が見ていて辛かった。
「本当に油断してたよ。ガウルがこんな強硬手段を取るとはね。まあ、魔物だから有り得る話だったんだけどね」
「·······あの人にとって、私は邪魔だったんだね」
「それは違うよ。ガウルはそもそも人間が嫌いだから。本当はイリアのように接することが出来る者が多ければいいんだけど·······なかなか難しいね」
はぁっと、ため息をついてから魔王は真剣な表情でローズに聞いた。
「ローズ。もし今回のことで嫌になったら遠慮なく言って。ローズが望む場所に送るから」
「········嫌」
「ローズ?」
「貴方の側がいい」
真っ直ぐに見つめてくる瞳に魔王は少しだけ驚いていた。こんな怖い思いをしてまで側にいてくれると言ってくれるとは思わなかったのだ。そんな魔王にローズは抱きつくとぎゅっと魔王を離さないように強く抱きしめて言った。
「私ね、今まで誰も助けてくれなかったの。怖くても、痛くても、例え助けを求めても応えて貰えなかったの。だからね、さっきは本当に嬉しかった」
ローズのピンチに颯爽と現れてローズを助けてくれた魔王。そんな魔王の姿がローズには昔、物語で読んで憧れたカッコイイ王子様のように思えたのだ。
「魔王様だけが私を助けてくれた。魔王様だけが私のこと本当に好きでいてくれてるって分かったの」
「········ローズ。俺は人じゃない。これから先また君に怖い思いをさせるかもしれない。それでも君は·······」
「側にいます」
絶対に譲らないという意志を感じた。そして同時にローズは顔をあげると少しだけ涙ぐみながら言った。
「魔王様にそんな辛そうな顔させたくない。私、魔王様には笑ってて欲しいの」
「······辛そうに見えるの?」
「うん。だって凄く泣きそうだもん」
強面の顔になって初めて言われた台詞。確かに辛いのかもしれない。ガウルに全く情がなかったわけでもない。ローズが離れると言えば本心は寂しかった。そんな女々しい心を包み込むようにローズは魔王を優しく抱きしめると言った。
「私、魔王様の好意が本当に嬉しい。そんな優しい魔王様が私大好きになったの。だから······側にいたい」
「ローズ·······」
「ダメ·····かな·····?」
ここまで言われてしまっては魔王も拒むことは出来ない。いや、元よりローズを拒むことはないが········魔王は痛くないようにそっと抱き返すとローズに囁くように言った。
「約束する。何があってもローズは必ず守るって。だから·······俺と一緒に生きてくれ」
「はい········」
きっと、これが2人の始まりだったのだろう。彼女が魔王に惚れて、魔王が彼女を惚れ直したのは。そして、同時に彼女の中で魔王の存在が絶対になるのだった。
「気分はどうだ?」
「魔王様のご慈悲のお陰で完治しました」
ローズの部屋を出て、再び見張りをしていたイリアはガウルから受けた傷を完全に回復しており元気そうだった。まあ、魔王の力ならその程度雑作ないが·······それでも少し心配だったのでホッとする。
「それならば良かった。よくローズを守ったな感謝する」
「勿体なきお言葉。それに私はローズ様を完全には守りきれませんでした。どのように償えばよいのか·······」
「いや、むしろお前の忠義が本物だと分かってホッとしている。これならこれからもお前にローズの世話を任せて問題なさそうだ」
人型に近い魔物は貴重だ。加えてローズと仲良く出来るならこれ以上にいいことはない。
「よろしいのですか?」
「ああ。それにローズがお前を助けるために無茶をしたと聞いた。どうせならお前にはローズの側にいて貰いたいのだ」
「ありがとうございます」
「これから大掃除と·······遠くないうちに世継ぎも考えている。そこでも力を借りると思うが······よろしく頼む」
「この身に変えましても」
ガウルとの一件は多くの魔物に衝撃を与えた。魔王は力で支配をしても元来どんな性格でも受け入れていた懐の深さと、ほとんど私欲で暴れることがない賢王として知られていた。そんな魔王の唯一の沸点がローズだと知り、魔物の多くは怒りに触れないように、ローズには手を出さないように内心決意する者も多かったが·········同時に彼の弱点を見つけた者も少なくはなかった。
まあ、そんな企てはさておき·····彼らの甘い日々はこれから始まるのであった。
魔王がローズ達の部屋に戻ってきたのはローズの主観では5分後くらいのことだった。魔王がガウルを消すのにかけた時間は異空間ということでこちらでは大した時間ではなかったが·······魔王は少しだけ疲れてるようにローズには見えた。
「ローズ、ごめん。怖い思いさせたよね?」
「ううん、大丈夫。あの人はどうしたの?」
「······まあ、二度とローズに会えないようにしてきたよ」
それが言外に殺したと言ってるように思えたが·······ローズとしては魔王の辛そうな顔が見ていて辛かった。
「本当に油断してたよ。ガウルがこんな強硬手段を取るとはね。まあ、魔物だから有り得る話だったんだけどね」
「·······あの人にとって、私は邪魔だったんだね」
「それは違うよ。ガウルはそもそも人間が嫌いだから。本当はイリアのように接することが出来る者が多ければいいんだけど·······なかなか難しいね」
はぁっと、ため息をついてから魔王は真剣な表情でローズに聞いた。
「ローズ。もし今回のことで嫌になったら遠慮なく言って。ローズが望む場所に送るから」
「········嫌」
「ローズ?」
「貴方の側がいい」
真っ直ぐに見つめてくる瞳に魔王は少しだけ驚いていた。こんな怖い思いをしてまで側にいてくれると言ってくれるとは思わなかったのだ。そんな魔王にローズは抱きつくとぎゅっと魔王を離さないように強く抱きしめて言った。
「私ね、今まで誰も助けてくれなかったの。怖くても、痛くても、例え助けを求めても応えて貰えなかったの。だからね、さっきは本当に嬉しかった」
ローズのピンチに颯爽と現れてローズを助けてくれた魔王。そんな魔王の姿がローズには昔、物語で読んで憧れたカッコイイ王子様のように思えたのだ。
「魔王様だけが私を助けてくれた。魔王様だけが私のこと本当に好きでいてくれてるって分かったの」
「········ローズ。俺は人じゃない。これから先また君に怖い思いをさせるかもしれない。それでも君は·······」
「側にいます」
絶対に譲らないという意志を感じた。そして同時にローズは顔をあげると少しだけ涙ぐみながら言った。
「魔王様にそんな辛そうな顔させたくない。私、魔王様には笑ってて欲しいの」
「······辛そうに見えるの?」
「うん。だって凄く泣きそうだもん」
強面の顔になって初めて言われた台詞。確かに辛いのかもしれない。ガウルに全く情がなかったわけでもない。ローズが離れると言えば本心は寂しかった。そんな女々しい心を包み込むようにローズは魔王を優しく抱きしめると言った。
「私、魔王様の好意が本当に嬉しい。そんな優しい魔王様が私大好きになったの。だから······側にいたい」
「ローズ·······」
「ダメ·····かな·····?」
ここまで言われてしまっては魔王も拒むことは出来ない。いや、元よりローズを拒むことはないが········魔王は痛くないようにそっと抱き返すとローズに囁くように言った。
「約束する。何があってもローズは必ず守るって。だから·······俺と一緒に生きてくれ」
「はい········」
きっと、これが2人の始まりだったのだろう。彼女が魔王に惚れて、魔王が彼女を惚れ直したのは。そして、同時に彼女の中で魔王の存在が絶対になるのだった。
「気分はどうだ?」
「魔王様のご慈悲のお陰で完治しました」
ローズの部屋を出て、再び見張りをしていたイリアはガウルから受けた傷を完全に回復しており元気そうだった。まあ、魔王の力ならその程度雑作ないが·······それでも少し心配だったのでホッとする。
「それならば良かった。よくローズを守ったな感謝する」
「勿体なきお言葉。それに私はローズ様を完全には守りきれませんでした。どのように償えばよいのか·······」
「いや、むしろお前の忠義が本物だと分かってホッとしている。これならこれからもお前にローズの世話を任せて問題なさそうだ」
人型に近い魔物は貴重だ。加えてローズと仲良く出来るならこれ以上にいいことはない。
「よろしいのですか?」
「ああ。それにローズがお前を助けるために無茶をしたと聞いた。どうせならお前にはローズの側にいて貰いたいのだ」
「ありがとうございます」
「これから大掃除と·······遠くないうちに世継ぎも考えている。そこでも力を借りると思うが······よろしく頼む」
「この身に変えましても」
ガウルとの一件は多くの魔物に衝撃を与えた。魔王は力で支配をしても元来どんな性格でも受け入れていた懐の深さと、ほとんど私欲で暴れることがない賢王として知られていた。そんな魔王の唯一の沸点がローズだと知り、魔物の多くは怒りに触れないように、ローズには手を出さないように内心決意する者も多かったが·········同時に彼の弱点を見つけた者も少なくはなかった。
まあ、そんな企てはさておき·····彼らの甘い日々はこれから始まるのであった。
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