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16 魔王様慌てる
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「魔王様、何かございましたか?」
いつも通りに仕事をしている魔王に側近のオーガストはそう切り出した。その質問の意図を計りかねて魔王は言った。
「何かとは、お前らしくないな」
「申し訳ありません。ですが本日は何やら物思いにふけっているご様子。このオーガスト出過ぎたことかと存じますが、何かお心を煩わせているのでないかとこうして、ご質問させていただいた次第です」
魔王としてはいつも通りのつもりだったが········オーガストに分かるくらいには仕草に出ていたようなので魔王はため息混じりに言った。
「最近、ローズの体調が良くなくてな」
「それはそれは·······痛ましいことです。魔王様のお力でもどうしようもないのですか?」
「ああ、命に関わることではないようだが·······少し心配でな」
詳しく調べようにもローズが大丈夫だと言うのであまり深くは探れてないのだ。
「ふむ······時に魔王様。お世継ぎはどうなっているのでしょうか?」
「このタイミングでそれを聞くのか?」
「このお話と合致する可能性もあるかと」
それならば確かに納得出来ないわけじゃない。確かにそのために夜の営みを繰り返しているし、酸味が効いたものを最近好んでいるのも確認している。それなら辻褄があうが·······
「そうでなかったらと思うと心配でな」
「お世継ぎでしたら、我らにとって何よりも喜ぶべき出来事です。魔王様のお子にも忠義を尽くせるとなればこのオーガスト、より全身全霊で励ませていただきたく存じます」
「そうか······だが、私は子が望まぬならこちらには連れてはこないつもりだ。人間と魔物、どちらも見せて行きたい道を選ばせる。異論はあるか?オーガスト」
「何一つとして。全ては魔王様の望むままに。ですが·······」
少しだけ間があってからオーガストは頭を下げて言った。
「私の出過ぎた願いで恐縮ですが·······どうかお子に拝謁する機会はお与えください。魔王様の奥様やお子に拝謁する栄誉をどうかお与えいただきたく存じます」
「·······考えておこう。お前ほどの忠義者にならそのくらいは許すが·······もしローズや私の子に何かあったら私はお前を許さないと心に留めておけ」
「勿論でございます。このオーガスト、出過ぎた真似は致しません。全ては魔王様のために」
物分りのいい側近に少しだけホッとしていると、緊急用の思念が飛んできて魔王は耳に手を当てて言った。
「イリアか?ローズに何かあったのか?」
『はい。ローズ様が倒れました』
「オーガスト。後を任せる」
「御意に」
「イリア。私が行くまでローズを頼む」
『かしこまりした。ですが恐らく心配ないかと』
「何?」
眉を寄せる魔王にイリアは少しだけ嬉しそうな声音で言った。
『おめでとうございます。ご懐妊です』
いつも通りに仕事をしている魔王に側近のオーガストはそう切り出した。その質問の意図を計りかねて魔王は言った。
「何かとは、お前らしくないな」
「申し訳ありません。ですが本日は何やら物思いにふけっているご様子。このオーガスト出過ぎたことかと存じますが、何かお心を煩わせているのでないかとこうして、ご質問させていただいた次第です」
魔王としてはいつも通りのつもりだったが········オーガストに分かるくらいには仕草に出ていたようなので魔王はため息混じりに言った。
「最近、ローズの体調が良くなくてな」
「それはそれは·······痛ましいことです。魔王様のお力でもどうしようもないのですか?」
「ああ、命に関わることではないようだが·······少し心配でな」
詳しく調べようにもローズが大丈夫だと言うのであまり深くは探れてないのだ。
「ふむ······時に魔王様。お世継ぎはどうなっているのでしょうか?」
「このタイミングでそれを聞くのか?」
「このお話と合致する可能性もあるかと」
それならば確かに納得出来ないわけじゃない。確かにそのために夜の営みを繰り返しているし、酸味が効いたものを最近好んでいるのも確認している。それなら辻褄があうが·······
「そうでなかったらと思うと心配でな」
「お世継ぎでしたら、我らにとって何よりも喜ぶべき出来事です。魔王様のお子にも忠義を尽くせるとなればこのオーガスト、より全身全霊で励ませていただきたく存じます」
「そうか······だが、私は子が望まぬならこちらには連れてはこないつもりだ。人間と魔物、どちらも見せて行きたい道を選ばせる。異論はあるか?オーガスト」
「何一つとして。全ては魔王様の望むままに。ですが·······」
少しだけ間があってからオーガストは頭を下げて言った。
「私の出過ぎた願いで恐縮ですが·······どうかお子に拝謁する機会はお与えください。魔王様の奥様やお子に拝謁する栄誉をどうかお与えいただきたく存じます」
「·······考えておこう。お前ほどの忠義者にならそのくらいは許すが·······もしローズや私の子に何かあったら私はお前を許さないと心に留めておけ」
「勿論でございます。このオーガスト、出過ぎた真似は致しません。全ては魔王様のために」
物分りのいい側近に少しだけホッとしていると、緊急用の思念が飛んできて魔王は耳に手を当てて言った。
「イリアか?ローズに何かあったのか?」
『はい。ローズ様が倒れました』
「オーガスト。後を任せる」
「御意に」
「イリア。私が行くまでローズを頼む」
『かしこまりした。ですが恐らく心配ないかと』
「何?」
眉を寄せる魔王にイリアは少しだけ嬉しそうな声音で言った。
『おめでとうございます。ご懐妊です』
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