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3 イケメン豚公爵

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「おい、あれって………」
「豚公爵だよな?何か雰囲気違うような」
「痩せた?いや、目元がなんか優しくなった」

コソコソと影で色々言われてる様子。俺こと豚公爵のベスターさんは悪目立ちしてしまうようだ。入るとこの巨体のせいでやはり目立ってしまう。ここ最近のダイエットもそこまで上手くいってないしね。

そんなことを思っているとドンと横に軽い衝撃があってそちらを向くと飲み物を持った侍女がうっかり俺にぶつかってしまったようだ。倒れて顔を青くする侍女に俺は可能な限り優しく声をかけた。

「大丈夫?」
「は、はい!も、申し訳ありませんでした!」
「いや、失敗は誰にでもあるからね。次に同じことをしなければいいさ」
「で、でもお洋服が………」
「確かに汚れたね。すまないが控え室を貸して貰えるかな?着替えたいからね」

そんな会話に唖然とするギャラリー。

「え、あの豚公爵が………」
「前なら絶対に激怒してたよな?」
「ていうか、本当にあれ同一人物か?」
「でも、ちょっと素敵かも……」

何やら影で色々言われてるようだ。まあ、豚公爵は嫌われ者でも仕方ないよね。そんなことを思いながら別室で汚れた服から予備の服に着替える。

「ベスター様……成長しましたね」

侍女のアンゼがしみじみとオカンみたいなことを言う。まあ、俺オカン生まれたと同時に亡くしてるけどね。

「あの程度でそう思われてもな」
「いえいえ、このアンゼ、ベスター様の寛大なお心に感動すら覚えました。前なら間違いなく娘に惨い罰を下していましたからね」

……うん、服が汚れた程度でそれってやっぱり貴族って面倒かも。まあ、そうじゃなくても人間とは必ず失敗する生き物だ。その度に色々言うのも疲れる。本当に必要な時にこそ怒りはとっとくべきなのだ。………って、まあ、前世はその怒りを向ける前に死んだんだけどね。

まあ、そんなことを思いつつササッと着替えて会場に戻ると、丁度殿下……攻略対象の王子とその婚約者の悪役令嬢であるドロテア・ベルン公爵令嬢が入場してきていた。

実物の彼女は俺が知ってる銀髪と青い瞳の物凄い美少女なのだが、やっぱり本物は格が違った。でも、一つだけ。

(……なんであんなに悲しそうな顔してるんだろ)

殿下にエスコートされているのに表情はどこか暗かった。ゲームのヒロインとはまだ会ってないはずだけど……もう関係性が悪化してるのかな?でも、なんというかあんな顔をさせたくはないと思ってしまう。

そうは言いつつもろくに話してもいない他人がどうこうできる訳もなく、結局その場を見送るしかなかった。そう、その場はだ。



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