社畜勇者は異世界で旅館を開きました

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「さて・・・とりあえずなんでミリーがここにいるのか聞いてもいいか?」

場所を変えて、使わない予定の客間に集まってから改めて暁斗はそれを聞いた。
すると、ミリーは微笑みを浮かべて言った。

「もちろん愛しい暁斗様のお側にいたいからですわ」
「相変わらず口が上手いのはいいが・・・なんでここにいるってわかったんだ?」

チラリと疑惑の視線をクラウドに向ける暁斗だが、そんな暁斗の視線に首を横にふるクラウドだった。

「まあ、私がここにいる理由は至極簡単ですわ。暁斗様に是非ともシンフォニー王国に来ていただきたいからですわ。無論、私の夫として」
「だから、言っただろ?俺はこれから宿屋を経営するから無理だって」
「そちらの妾も一緒でいいと言ってもダメですか?」

チラリと視線をアリスに向けるミリー。その視線を受けて少し怖がりながも、アリスはなんとかミリーの瞳を正面から受け止めた。その様子に少し驚くミリーだったが・・・それを顔には出さずに終始笑顔でいた。

そんな女同士の攻防には気づかずに暁斗はため息をついて言った。

「アリスのことなら勘違いだよ。それに・・・俺はもう、勇者には戻らないって決めてるからな」
「そうですか・・・でしたら、私をお側に置いてくれませんか?」
「はぁ?」

驚く暁斗にミリーは笑顔で言った。

「ですから、私をお側において欲しいと申しているのです。もちろん、暁斗様の宿屋で働きますので」
「それは助かるが・・・国王が認めないだろ?」
「お父様はどんな形であれ、暁斗様の元なら問題ないとおっしゃってましたわ」

そこまで言われては何も言えない暁斗だった。幸い無理矢理勇者として連れ戻すつもりはないようだし、暁斗としても美少女の従業員が増えるのは願ってもないことなので頷いた。

「わかったよ・・・それで?ミリーはなんでこの場所を知ってるんだ?まだ誰にも教えてなかったのに・・・」
「クリス様からお聞きしましたの」

キッと視線をクラウドに向ける暁斗。やはりというか、情報の漏洩元である友人は知らん顔をしていたのでため息ついてから暁斗は言った。

「まあ、来ちゃったものは仕方ない・・・アリスもいいよな?」
「は、はい・・・」
「どうかしたのか?」

何やら言いたいことがありそうなアリスだったが・・・暁斗がそれを聞く前にミリーはアリスを見て言った。

「少しアリスさんと二人でお話してもよろしいでしょうか?」
「えっと・・・俺は別にいいが・・・」

チラリと視線をアリスに向けると、アリスはその視線を受けて静かにこくりと頷いた。

「わ、私も・・・ミリー様とお話したいので大丈夫です・・・」
「アリスがいいならいいけど・・・」

何故だろうか・・・アリスから何かの覚悟を感じて戸惑う暁斗だったが・・・そんな暁斗を放置して女性陣二人は部屋を出ていった。

「なぁ・・・二人はなんだって、あんなおっかない雰囲気になってるんだ?」
「・・・本気で言ってるなら、あなたはかなり鈍いですよ暁斗」

ため息をつくクラウドに、首を傾げている暁斗ーーー女性陣二人の話が終わるまでその状態のままだったのは言うまでもないだろう。

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