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2 魔王様の運命の出会い
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「ルートヴィヒ、身体は大丈夫なのか?」
「はい、お父様。いつもご心配をおかけします」
どうやら我が父は国王としても父親としても良き人格をしているようだ。俺は病弱な第3王子、上に優秀な兄と姉がいるというのにわざわざ気にするのだから本当に珍しいくらいに優秀だろう。長年王族というものを見てきたが、自分が中に入るのはなんとも新鮮で面白いものだ。
「気にすることはない。お前も可愛い私の息子の1人だ。しかしヴィルヘルムの婚約者候補との立ち会いに出たいとは珍しいな」
「興味がありますので」
「ほう、まあとはいえ私はあまりこの縁談はいいものにはなりそうもないと思うがな」
「そうなのですか?」
「…いや、すまない。忘れてくれ」
失言だったようだが、思ったより先を見ているようだ。この人間は面白い。ならばここで少しだけ伏線を張るとしよう。
「お父様。お願いがあります」
「なんだ?」
「簡単です。お兄様が遠くないうちにこの縁談を無にして他の女性と添い遂げようとしたら、その時は僕に彼女のことをください」
予想外の言葉に父は驚いたような表情を浮かべてから何かを探るようにこちらを見てくる。ふむ、まあ突然こんなことを言えば警戒するだろう。実際俺がルートヴィヒとして彼女に会ったことはない。だが、ここで先に1つ先手を打てれば面白くなりそうだからだ。
「お兄様はとにかく我の強い方です。王とは傲慢で丁度よろしいですが…まあ、それでも万が一のことは考えるべきかと」
「確かにな…しかし、それはあくまで彼女の…フォルタール公爵令嬢の気持ち次第だ。軽々には受けられない」
「ええ、それで構いません」
元からそこまで欲してはいないのだ。これでひとまずは布石を打てたのだから後は芽が出るのを待つだけだ。
「お父様、おはようございます」
「おお、ヴィルヘルムか」
そんな会話が終わるタイミングで我が兄が悠々と出てきた。俺を見てから意外そうな表情を浮かべてから兄は言った。
「ルートヴィヒか。何故ここにいるんだ?」
「興味本位の見学です。お邪魔はしません」
「まあ、なんでもいいさ。早く終わらせてしまおう」
面倒そうな我が兄の態度に不安そうな表情を浮かべる父。ふふふ、俺の言葉に少ならかず揺さぶられているのだろう。これはこれで面白いが…さて、本命の方はどうだろうな。
「失礼します」
そんなことを考えていると、侍女の案内と共に入ってくる2人の男女。件の婚約者候補の両親…フォルタール公爵と公爵夫人だろう。そしてその後ろから歩いてくる少女に俺は少しばかり驚いてしまう。
白銀の長い髪に、赤い瞳。幼いながらも感じられる美しさ。これまで美女や美少女は何度も見てきたがこれほどの存在は初めてかもしれない。
(悪くない…いや、欲しいな)
思わずそう思ってしまう。ニヤけてしまうのを抑えてから。彼女を見ると何やら緊張しているのか、今にも転けそうな様子だった。
「お、お初にお目にかかりま――」
ガクッと、足を捻ったのか転ぶ少女。俺は反射的に彼女の元にダッシュするとそっと受け止めていた。
「えっ…」
「大丈夫ですか?」
驚く彼女と周囲。病弱設定なのに確かに一瞬で彼女の元までいったのだからそりゃこうなるか。ふむ、予定は少しだけ狂ったけど、仕方ない。
「あ、ありがとうございます…」
「いえ、無事で何より」
にっこりと微笑んでからそっと彼女を立たせる。すると彼女は聞いてきた。
「あ、あの。もしかして貴方がヴィルヘルム様ですか?」
「申し訳ありません。僕は弟のルートヴィヒです」
「ルートヴィヒ様…」
「親愛を込めてルーイと呼んでください」
そう微笑むと顔を赤くする彼女。おやおや、この程度で反応するとは初だなぁ。しかし可愛いものだ。思わずそう思ってから俺はせっかくなので少しだけここでも伏線を張ることにした。
「お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「…ミーシャ。ミーシャ・フォルタールです」
「可愛いお名前ですね」
「~~~!?」
顔を真っ赤にする彼女に俺は少しだけ嗜虐心をそそられながら決めた。今回のゲームは彼女を手に入れることに尽力しようと。
「はい、お父様。いつもご心配をおかけします」
どうやら我が父は国王としても父親としても良き人格をしているようだ。俺は病弱な第3王子、上に優秀な兄と姉がいるというのにわざわざ気にするのだから本当に珍しいくらいに優秀だろう。長年王族というものを見てきたが、自分が中に入るのはなんとも新鮮で面白いものだ。
「気にすることはない。お前も可愛い私の息子の1人だ。しかしヴィルヘルムの婚約者候補との立ち会いに出たいとは珍しいな」
「興味がありますので」
「ほう、まあとはいえ私はあまりこの縁談はいいものにはなりそうもないと思うがな」
「そうなのですか?」
「…いや、すまない。忘れてくれ」
失言だったようだが、思ったより先を見ているようだ。この人間は面白い。ならばここで少しだけ伏線を張るとしよう。
「お父様。お願いがあります」
「なんだ?」
「簡単です。お兄様が遠くないうちにこの縁談を無にして他の女性と添い遂げようとしたら、その時は僕に彼女のことをください」
予想外の言葉に父は驚いたような表情を浮かべてから何かを探るようにこちらを見てくる。ふむ、まあ突然こんなことを言えば警戒するだろう。実際俺がルートヴィヒとして彼女に会ったことはない。だが、ここで先に1つ先手を打てれば面白くなりそうだからだ。
「お兄様はとにかく我の強い方です。王とは傲慢で丁度よろしいですが…まあ、それでも万が一のことは考えるべきかと」
「確かにな…しかし、それはあくまで彼女の…フォルタール公爵令嬢の気持ち次第だ。軽々には受けられない」
「ええ、それで構いません」
元からそこまで欲してはいないのだ。これでひとまずは布石を打てたのだから後は芽が出るのを待つだけだ。
「お父様、おはようございます」
「おお、ヴィルヘルムか」
そんな会話が終わるタイミングで我が兄が悠々と出てきた。俺を見てから意外そうな表情を浮かべてから兄は言った。
「ルートヴィヒか。何故ここにいるんだ?」
「興味本位の見学です。お邪魔はしません」
「まあ、なんでもいいさ。早く終わらせてしまおう」
面倒そうな我が兄の態度に不安そうな表情を浮かべる父。ふふふ、俺の言葉に少ならかず揺さぶられているのだろう。これはこれで面白いが…さて、本命の方はどうだろうな。
「失礼します」
そんなことを考えていると、侍女の案内と共に入ってくる2人の男女。件の婚約者候補の両親…フォルタール公爵と公爵夫人だろう。そしてその後ろから歩いてくる少女に俺は少しばかり驚いてしまう。
白銀の長い髪に、赤い瞳。幼いながらも感じられる美しさ。これまで美女や美少女は何度も見てきたがこれほどの存在は初めてかもしれない。
(悪くない…いや、欲しいな)
思わずそう思ってしまう。ニヤけてしまうのを抑えてから。彼女を見ると何やら緊張しているのか、今にも転けそうな様子だった。
「お、お初にお目にかかりま――」
ガクッと、足を捻ったのか転ぶ少女。俺は反射的に彼女の元にダッシュするとそっと受け止めていた。
「えっ…」
「大丈夫ですか?」
驚く彼女と周囲。病弱設定なのに確かに一瞬で彼女の元までいったのだからそりゃこうなるか。ふむ、予定は少しだけ狂ったけど、仕方ない。
「あ、ありがとうございます…」
「いえ、無事で何より」
にっこりと微笑んでからそっと彼女を立たせる。すると彼女は聞いてきた。
「あ、あの。もしかして貴方がヴィルヘルム様ですか?」
「申し訳ありません。僕は弟のルートヴィヒです」
「ルートヴィヒ様…」
「親愛を込めてルーイと呼んでください」
そう微笑むと顔を赤くする彼女。おやおや、この程度で反応するとは初だなぁ。しかし可愛いものだ。思わずそう思ってから俺はせっかくなので少しだけここでも伏線を張ることにした。
「お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「…ミーシャ。ミーシャ・フォルタールです」
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「~~~!?」
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