悪役令嬢はショタ王子に溺愛される

yui

文字の大きさ
1 / 2

1 断罪前に割り込んできたのは……

しおりを挟む
「アーシャ!貴様とは婚約破棄する!よくも私を騙していたな女狐め!」

それはとある夜会での出来事だった。

最近、私、パステル公爵家の長女であるアーシャ・パステルは婚約者であるこの国の第二王子、エドワード・グリーフ殿下が私を避けている上に、何やら平民の女と親交を深めていることを知ってはいたが、公の場所で、しかも国王陛下主催の夜会でそんなことを言い始めるとは思わず私は呆気に取られてしまった。

まあ、今夜の夜会のエスコートを放置された時点で近いうちに何かしらあるかもとは思っていたが、しかしまさかよりによってこんな公衆の面前で婚約破棄を切り出されるとは思わなかった。

エドワード様の隣にはここ最近彼が親しくしている平民の娘がいかにも小動物のように震えながら立っていた。ちなみにその周りにはエドワード様の側近である現宰相の息子に、騎士団長の息子、あとは私の義理の弟が彼女を守るように立っているのだが……皆私を見る目がやけに険しい。


「えっと……エドワード様?何故いきなり婚約破棄などと言ったのでしょうか?それに騙していたとは一体……」
「とぼけるな!お前はリリーを影で虐めていたのだろうが!!」

リリー?はて、どなたなのでしょう。そんな気持ちになるが、なんとなく雰囲気でエドワード様の隣にいる平民の娘だとわかったので、私はありのままの真実を告げた。

「えっと……何の話なのかさっぱりですが、何か勘違いをされてませんか?私はリリーという人物も知りませんし、その方に虐めをする理由もないのですが」
「理由ならあるだろう!貴様が私と彼女の仲を快く思わずにやったことだろ!証拠もあるぞ!」

そう言ってから、エドワード様の側近達が交代で私が何をしたのかを並べはじめた。

まとめると、エドワード様とリリーという少女の仲に嫉妬した私が、彼女の私物を壊したり、影で悪口を言ったり、彼女を仲間はずれにしたり、挙げ句の果てにこないだ階段から突き落としたそうだ。

うん。全く記憶にない罪状なのですが……


「あの……本当にそれ私がやったのですか?」
「当然だろ!」
「えっと……その証拠というのはリリーさんという方とエドワード様のご友人の方のみのもので他にはないのですよね?」
「ええい、黙れ!貴様がやったことは明白だろう!この期に及んでしらを切るとは恥知らずが!」

ど、どうしましょう……まったく身に覚えのないことで糾弾されている上に、こちらの話はまるで聞いてくれない。

エドワード様の怒濤の勢いに会場もなんとなく私が悪役という風な認識になってきているようだし、このままじゃ……

「ドバイ!逃げられないようにその女狐を抑えつけろ!」

そんな私に追い討ちをかけるようにエドワード様が騎士団長の息子に命令を下して私は地面に抑えつけられる。

ただの貴族の令嬢である私が鍛えている殿方に勝てるわけもなくあっさりと抑えつけられて、地面に横になる。痛みで涙が浮かんでくるが、そんな私を周りの人は冷たい目で見てくる。


(あぁ……ここまでかしら)


退路はなく、このまま冤罪で私はきっと裁きを受けることになるのだろうと諦めの感情でそっと目を伏せた時に、その声は聞こえてきた。

「いいえ。彼女は無実ですよお兄様」

聞き覚えのある声だった。声変わりをする前の幼い男の子の声はここ最近、王宮でよく話していた人物の声とそっくりで私は思わず目を開くと――そこには銀髪の少年がいた。

エドワード様は側室である母親から譲り受けた赤髪なのに対して、この国の正妃であるレオノーラ様譲りの美しい銀髪に中性的だが、将来はきっとかっこよくなるであろう整った容姿は紛れもなく私が知っている人物――グリーフ王国の第三王子であり、現在5歳……になられたばかりの少年、そして、私の婚約者だったエドワード様の弟のレイズ・グリーフ殿下がその場にはいた。

「レイズ様……」

思わず名前を呟くと、少年……レイズ様は私に視線を向けてから微笑んで私を抑えつけている騎士団長の息子に向けて言った。

「その手を離してください。第三王子としての命令です」
「……そ、それは」
「二度は言いません。離さないというならこちらも実力行使でいかせていただきます」

そう言ってからレイズ様は一度手を叩く。すると、いつの間にやら黒服の集団が私を抑えつけている騎士団長の息子の周りを囲んであっさりと私を解放してくれた。

私はなんとか痛む体を起こそうとするが……どうやら抑えつけられた時に足を捻ったようで途中でバランスを崩してしまい倒れそうになるが――そんな私を小柄な体でレイズ様は受け止めてくれた。

「遅くなってすみません」
「……レイズ様。どうして」

私は情けなくも年下の少年にそう聞くと、彼は天使のような微笑みで私を抱き締めて言った。

「もちろん、あなたをお兄様から奪うためですよ」
「う、奪うって……」

予想外の台詞に思わず唖然とするが、レイズ様は震える私をその小さな手で優しく撫でてくれたことで不覚にも安心してしまった。こんな小さい子に守ってもらって安心させてもらうなんて年上として情けないけど……誰も味方がいない中で颯爽と助けてくれたレイズ様に私は不思議な胸の高鳴りを感じていた。

「おい、レイズ!何故邪魔をする!」

そんなやり取りを見てフリーズしていたエドワード様はようやく再起動したようで、そうレイズ様に怒鳴りつけるが、レイズ様はそれに対して余裕の微笑みで言葉を返した。

「何故って決まってるじゃないですかお兄様。お兄様と同じですよ」
「同じだと?」
「ええ。自分が心から愛する者のために邪魔者を排除するためですよ」


……本当にこの子は5才なのだろうか?そんな疑問を後に抱くことになるが、この時の私は不思議な胸の高鳴りとこの予想外の展開にただ混乱することしかできなかった。

そんな私を置いておいて二人の話は進んでいく。

「その女は性悪なんだ!そんな女をこの国の王妃にするなど愚の骨頂。ましてやそんな罪人を庇うなんて正気の沙汰ではないぞ!」
「はぁ……お兄様。隣の女から何を聞いたのか知りませんが、全部無実ですよ」
「そんな訳ないだろ!そいつは私のリリーを――」
「そもそも、アーシャ嬢にはそんな暇ありませんよ。何しろ王妃教育で学園にはほとんど通えてませんし、何よりお兄様や周りの方々の証言の日には学園に行ってませんから」

その言葉にエドワード様や側近の方々がフリーズする。そんな彼らにレイズ様は続けて言った。

「これは国王陛下や王妃様も知っておられる事実です。何よりこんな場所で……陛下の目の前でこんな騒ぎを起こして陛下や王妃様が今までまったく介入してきてない時点で少しは気づいてください」
「な……デタラメを!なら何故父上や母上は何も言わないのだ!」
「お兄様を試しておられたのですよ。陛下や王妃様はこの一件を最初から知ってました。それで次の国王になるはずのお兄様を試したのですよ。もし真実に気づいてアーシャ嬢を助けるなら合格。でも、今のように感情に流されてアーシャ嬢を捨てるというなら……言わずともわかりますよね?」

その言葉にエドワード様は先ほどから大人しくしている陛下と王妃様の方を向いてみると、二人は心底失望の眼差しをエドワード様に向けて言った。

「愚かな息子よ……お前を王族から外すことに決めた」
「な……父上!?」
「まったく貴方には失望しましたよ。そんな小娘に簡単にたぶらかされて……挙げ句にアーシャを傷つけたりして」
「は、母上までなぜ……!?」

突然のことにエドワード様は一気に顔色を悪くする。先ほどまでは隣の平民の娘と幸せになれると思っていたのに一転して一族から追放されるという事態。エドワード様はしばらく呆然としてからこんなことになった元凶として私を睨み付けて怒鳴った。

「貴様のせいか!!この女狐め!父上と母上まで騙して……」

その怒声に私は思わず体を縮こませてしまうが、そんな私を優しく抱き締めてからレイズ様は兄に向かって言った。

「むしろアーシャ嬢は被害者ですよ。でも……お兄様には感謝もしてるんですよ」
「か、感謝だと!?どういうことだ!」
「どうって……お兄様がアーシャ嬢をいらないと言ってくださったので、私がアーシャ嬢を手にいれるチャンスが出来ました。諦めていた初恋が叶うかもしれないので感謝ですよ」
「えっ……?」

その言葉に私は思わず声を出していた。

諦めていた初恋?私を手にいれるチャンス?それって……

言葉の意味にしばらくして思わず顔が赤くなる。

な、なんで……レイズ様はまだ子供なのに私はこんな気持ちになっているのかしら。


子供の言葉に大人なら微笑ましく思わなきゃいけないはずなのに、嬉しいと思ってしまっている。

もちろん、私がテストのための囮に使われたことに関して少なからずショックは受けているが……そんなことよりも、私はさっきの状況から颯爽と助けてくれたレイズ様のことで頭がいっぱいになっていた。


ど、どうすれば……


そんな私の思考を読んだかのようにレイズ様は一度こちらを見て微笑んでから言った。

「まあとにかく、私はこれからアーシャ嬢とお話がありますので、今日はこれで失礼します。お兄様とは二度と会うことはありませんが……どうぞお元気で」
「な……ま、待て!?」

行きましょうと私を支えながら歩きだすレイズ様。この年でここまで大人びていることにも驚きだが、この包容力……未来の国王の器を感じるというか……こんな人の隣にいられたら幸せだなぁ……

そんなことを考えて私は思わず顔を赤くして首をふった。

これじゃあ、まるで子供好きの変態みたい……でも、レイズ様かっこよかったなぁ……

「あ、そうそう」

そんな私を優しくエスコートしながら衛兵に取り押さえられているエドワード様に向けて最後にレイズ様は天使のような微笑みで言った。

「もし、今後アーシャ嬢に何か危害を加えるようなことがあれば……私は本気で潰しにいきますので覚えておいてくださいね♪」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら4人のヤンデレ彼氏に溺愛される日々が待っていた。

aika
恋愛
主人公まゆは冴えないOL。 ある日ちょっとした事故で命を落とし転生したら・・・ 4人のイケメン俳優たちと同棲するという神展開が待っていた。 それぞれタイプの違うイケメンたちに囲まれながら、 生活することになったまゆだが、彼らはまゆを溺愛するあまり どんどんヤンデレ男になっていき・・・・ ヤンデレ、溺愛、執着、取り合い・・・♡ 何でもありのドタバタ恋愛逆ハーレムコメディです。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

大金で買われた少女、狂愛の王子の檻で宝石になる ―無自覚な天才調合師は第二王子の婚約者(虫除け)を演じることになりました―

甘塩ます☆
恋愛
「君を金貨三十枚で買ったのは、安すぎたかな」 酒浸りの父と病弱な母に売られた少女・ユナを救ったのは、国中から「放蕩王子」と蔑まれる第二王子・エルフレードだった。 ​「虫除けの婚約者になってほしい」というエルの言葉を受け、彼の別邸で暮らすことになったユナ。しかし、彼女には無自覚の天才調合師だった。 ​ユナがその才能を現すたび、エルの瞳は暗く濁り、独占欲を剥き出しにしていく。 「誰にも見せないで。君の価値に、世界が気づいてしまうから」 ​これは、あまりに純粋な天才少女と、彼女を救うふりをして世界から隠し、自分の檻に閉じ込めようとする「猛禽」な王子の物語。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

世話焼き幼馴染と離れるのが辛いので自分から離れることにしました

小村辰馬
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢、エリス・カーマインに転生した。 幼馴染であるアーロンの傍にに居続けると、追放エンドを迎えてしまうのに、原作では俺様だった彼の世話焼きな一面を開花させてしまい、居心地の良い彼のそばを離れるのが辛くなってしまう。 ならば彼の代わりに男友達を作ろうと画策するがーー

悪役令嬢に転生したにしては、腕っぷしが強すぎます

雨谷雁
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公は、悪役令嬢セラフィナ。 本来ならヒロインをいじめ、最後は断罪される役だ。 しかし彼女には一つ問題があった。 前世の影響で、異常に腕っぷしが強いのである。 悪役らしく陰で動こうとしても、トラブルが起きれば拳で解決。 剣術教師より強く、騎士団にも勝ち、結果的に周囲から恐れられる存在になる。 そのせいで、断罪イベントは次々失敗。 ヒロインや王子たちとの関係も、ゲーム通りには進まない。 破滅を避けたいだけなのに、 力が強すぎて世界の流れを壊してしまう―― これは、物理で運命をねじ曲げる悪役令嬢の物語。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...