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プロローグ
『誰かの手記』
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俺が知っているこの都市は案外変わっているのかもしれない。外部が出版していた本を片手にふと、そう思った。
ノーレニー都市。その名の通り、ここは雨が降らない都市だ。何故降らないのかなんて今でも俺には分からない。しかし、その珍しさからか何時しかこんな言い伝えが出てきた。
『〝雨〟が降ると悪夢が始まる』
そんな言い伝えが昔からずっと続いている。何故、そんな物が出来たのかは察しがつくだろう。過去に〝雨〟が降ったその日は大体不幸な事件が多発していたからだ。まぁ、そんなただのこじつけがましい様な言い伝えだが少なくとも良い事は起きていないらしい。
例えば、そんな言い伝えの始まりとして挙げられるのはやはり『狂乱壊世界戦争』だろうか。これはまだこの都市が一つの国家であった時代に起きた最後の大戦争だ。被害が最も酷く、凄惨な風景しか広がっていなかったらしい。戦場にいた兵士は全滅、近くの土地は枯れ果て、人が住めない状況になったそうだ。戦争に参加していた国家全てにとっては大きな痛手を負い、勝者も敗者もないものだった。戦地は血に濡れ、数え切れない程の死体の山が、死の匂いが充満している様が、悪夢が今でも語り継がれている。
そんな戦争が雨の日に起きた。雨の匂いと潤いのお陰で死臭も腐敗も抑えられ、土地も小規模の被害で済んだとも言えるし、そのせいで血の川ができて水が汚れてしまったとも言える。地獄絵図がこの地の上で起きていたのだ。
遠い昔の出来事でも、こうして語り継がれているのは事の大きさ故なのか何なのかは分からない。しかしここに住む者たちには〝雨〟が悪夢の始まりの象徴となるには十分過ぎる出来事であろう。この都市周辺はただ単に雨が少ないだけなのかもしれないが人はそんな不思議をつけていたいものだ、そんな心理が読み取れるような言い伝え。近代化が進んだ今でも信じ続けられている伝承。
手に取っていた本を元の場所に戻し、資料館から出る。今日も晴れ晴れとした太陽は初夏を知らせる様にじりじりと俺の体を照りつけた。少し汗ばみながらも赤いマフラーを巻き直して孤児院へと戻る。
今年は何をしてあの子たちの思い出を作ろうか。
ノーレニー都市。その名の通り、ここは雨が降らない都市だ。何故降らないのかなんて今でも俺には分からない。しかし、その珍しさからか何時しかこんな言い伝えが出てきた。
『〝雨〟が降ると悪夢が始まる』
そんな言い伝えが昔からずっと続いている。何故、そんな物が出来たのかは察しがつくだろう。過去に〝雨〟が降ったその日は大体不幸な事件が多発していたからだ。まぁ、そんなただのこじつけがましい様な言い伝えだが少なくとも良い事は起きていないらしい。
例えば、そんな言い伝えの始まりとして挙げられるのはやはり『狂乱壊世界戦争』だろうか。これはまだこの都市が一つの国家であった時代に起きた最後の大戦争だ。被害が最も酷く、凄惨な風景しか広がっていなかったらしい。戦場にいた兵士は全滅、近くの土地は枯れ果て、人が住めない状況になったそうだ。戦争に参加していた国家全てにとっては大きな痛手を負い、勝者も敗者もないものだった。戦地は血に濡れ、数え切れない程の死体の山が、死の匂いが充満している様が、悪夢が今でも語り継がれている。
そんな戦争が雨の日に起きた。雨の匂いと潤いのお陰で死臭も腐敗も抑えられ、土地も小規模の被害で済んだとも言えるし、そのせいで血の川ができて水が汚れてしまったとも言える。地獄絵図がこの地の上で起きていたのだ。
遠い昔の出来事でも、こうして語り継がれているのは事の大きさ故なのか何なのかは分からない。しかしここに住む者たちには〝雨〟が悪夢の始まりの象徴となるには十分過ぎる出来事であろう。この都市周辺はただ単に雨が少ないだけなのかもしれないが人はそんな不思議をつけていたいものだ、そんな心理が読み取れるような言い伝え。近代化が進んだ今でも信じ続けられている伝承。
手に取っていた本を元の場所に戻し、資料館から出る。今日も晴れ晴れとした太陽は初夏を知らせる様にじりじりと俺の体を照りつけた。少し汗ばみながらも赤いマフラーを巻き直して孤児院へと戻る。
今年は何をしてあの子たちの思い出を作ろうか。
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