異形の魔術師

東海林

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王立魔術院編

第15話

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「親方~、終わりました!」
「おーしご苦労、お前ら休憩は入れ」

 若い衆は一旦休憩に入るようだ
 すかさずミシュリーさんがお茶を出して物凄く恐縮してる

「さて、俺達はここからが本番だ。さっきの続きだがこの線は実際の建物の1階部分と同じだ、これで建物の位置に不具合が無いか最終確認をするんだ。まぁ今回はこんな開けた場所だから気にするのは隣との窓の位置と距離だけどな」
「なるほど」

 確かに隣との距離は大事だし、窓の位置もなんかの恋愛漫画じゃあるまいし、向かい合ってたら拍子が悪い

「今回は魔術院らしく施工方法を2種類実験する事になったんだ」
「ランディ君は家の作り方を知っているかい?」
「いえ、残念ながら」
 
 正確にはこの世界のだけどね
 一応前世の記憶では、木造と鉄骨とコンクリート位ザックリとした違いしか判らない
 建築関係の人か、家を建てた事ある人じゃ無いとわからないよね

「簡単に言えば、木を使うか土を使うかだね。共通するのは魔法を使うと便利に早く作れる点かね。そして今回は土魔法を使うのだよ」
「もしかして防御魔法として習った土壁や、土操作ですか?」
「それの応用になるね。今回は2種類方法を試そうと思ってね、まずは数人がかりで家の骨格を一気に作り上げて、後から壁などを作っていく方法。もう一つは1つの階づつ作っていく方法だよ」
「今まではどうしていたのですか?」
「もちろん職人による手作業だよ、魔法は接合や強度の居る場所に限定的に使われてきたんだよ。平民は魔力量が少ないから一気に作るなんて事は出来ないし、魔力量の有る貴族や魔法士はこんな事に使うのは嫌がるからね」
「確かに…」

 魔法は攻撃や防御とか華々しい方向に目が行きやすいから仕方ないと言えば仕方ない…のかな?

「今回は魔力量もそうだけど、複数人で行うからイメージの統合も課題なんだよね。まぁ問題点の洗い出しも含めて実験だからね」
「なるほど」
「そしてココまでは前提。そしてココからが本題、今回ランディ君だけを連れてきたのは何故でしょうね?」

 うっわぁ、めっちゃ言い笑顔だよ院長
 ここまで言われれば答えは簡単、だけど出来るのか?

「自分に、この2種類の方法で魔法を使って見せれば良いんですね?」
「うん、正解。ユリウス様から君の魔力特性に関しては聞いているよ。何処まで出来るかのテストと思って気を張らずにできる範囲でやってみてくれるかね?」
「判りました、できる範囲でやってみます」

 確かに魔力は強くなって限界がどの辺なのか把握したいし、属性魔法がどれぐらい使えるようになったか知りたい

「まずは親方と完成イメージを確実にするために、ミニチュアを作ってもらおうかね」
「おう、よろしくな」

 と言うわけで親方とミニチュア作りから始めたわけだけど、最初から形になって驚いた
 人の時には属性値が低くて属性魔法は初期の物しか使えなかったから、このサイズのミニチュア作るのにも苦労していた
 それがこの体になってスイスイと出来てしまうのが驚きだった
 まぁ形にはなったけど、窓の位置だったり形が一部歪だったりして、結局5度ほどやり直して本番に臨む事になった

「ではランディ君頼んだよ」
「最後に作ったのを参考に大きくすりゃ良いだけだ、お前さんなら出来る」

 あんまりプレッシャーかけないで欲しいな
 それよりも集中集中っと、最後に作った模型を見ながらイメージを固めて、魔力を練り上げる
 手を地面について力ある言葉と共に完成イメージと練った魔力を開放

「クリエイト」

ズモモモモモモモモッ

 地面が盛り上がり、見えない手で捏ねられてかのように家の形が整い、目の前に予定されていた家の形が出来上がる

「こりゃまた凄いな、俺仕事無くなるかも…」
「いきなり家一軒造築ですか、これは予想以上ですね……ランディ君魔力は大丈夫ですか?」
「はい、大分使ったなぁとは感じてますが、まだまだ大丈夫です」
「そうかそうか、ではイメージが薄れないうちにもう一軒の願いしますね」
「判りました」

 もう一軒は先ほどよりもスムーズに作る事が出来た
 魔力も2軒連続で作ったにもかかわらず、まだまだ余裕が感じられる
 この感じならもう数件作っても大丈夫そうだ

「これは、明日からのランディ君のテストを見直さないといけないね」
「お手柔らかにお願いします」

 院長が嬉しそうで何よりです…
 その後親方達に厳しくチェックされた結果、1軒目は各所の手直しが必要で、2軒目は簡単な手直しが必要と言われた
 同じ物を回数こなせば上手くなっていくしね

 この日は手直し箇所を修正して親方のOKが出て終了となった
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