風華風唱-400年経った世界は残酷で優しかった

Aime

文字の大きさ
17 / 44
1章

14.

しおりを挟む

闇色が深くなってきた頃、俺は変装をといて黒装束になる。


膝丈まであるブーツを履き、太ももには小型ナイフをベルトで固定する。


夏淡は外して机に置いて、簡易剣を持った。


昼間持ち歩くから、万が一夏淡の形状を覚えている人に会うと正体がバレるから使えない。


アヤカシは特殊な金属か、薬品加工された武器しか通用しない。


簡易剣にはそのどちらも使われていないため、いざとなったら俺の刀を使わないとな。


さっとパソコンに写っていた地図を頭に叩きこんで、電源を落とした。


昨日調べた時に、今夜12時にこの学院でトリナッツァの取引があるらしい。


学院に来る前にも調べていたが、どうやらやっと手がかりが掴めそうだ。


「まずは校舎からか…」


場所までは把握出来なかったから、手当り次第調べていかないといけない。


ため息が出そうだが、早く任務を終わらせる為にはやらねば。


顔を隠せるフード付きの狩衣風コートを羽織り、窓をあけて下を見る。


俺の部屋は6階か…いけるな。


俺は躊躇いもなく外に身を投げ出した。


普通の人がやると複雑骨折しそうな高さを、スタッと音も無く降り立つと校舎の方に向かった。







音もなく俺は校舎に続く道を走っていた。


もしすれ違う一般人がいたら強い風が吹いたとしか分からないだろう。


玄関につくと、俺はあえてそこを通りすぎ裏口へ行う。


地図には玄関のすぐ入った所にセンサーがあり、少し解除に面倒な構造になっている。


潜り抜けるのが面倒で、センサーのない裏口から入ろうということだ。


裏口に向かう途中、人の気配に気付いて木に隠れた。


「……た……」


気配は五つほど。


3階の窓が開いており、ロウソクの火でぼんやりしている。


よし、行ってみるか・・・。


タンッと力をこめて跳ぶと3階のわずかに突き出た所につかまり、くるんと一回転して柱の影に隠れる。


そっと窓の中を覗き込むと、龍と稲妻の刻印が入ったローブが3人と学生服姿が2人顔を突き合わせている。


当たりだ。


耳をすませば、声も聞こえてきた。


「…で、これを使えば特殊な能力を手に入れる事が出来るんだ。」


ローブの1人が説明し、その説明を聞いていた学生服の1人が小さな包を持ち上げ、まじまじと見ている。


「いいなぁ!!ってことは特殊科に入れるのか!」


「あぁ。リスクは高いぞ。下手したら死ぬ。だが、ソレを越えたら特殊科を越える能力が持てるぞ。欲しい奴は?一つ1万だ。」


「俺!!」


「俺も!!」


よし、と一人が何かガサガサと取り出すと、甘いカカオに似た香りが教室を漂う。


トリナッツァ特有の香りだな…


俺は耐性があるから大丈夫だが、一般人があの香りを吸ってしまうとやばい。


一種の麻薬のようで、一度受け入れるともう手放せなくなる。


これは現行犯逮捕かな?


「じゃあ、お前吸ってみ…「そこまでだ。」っ…誰だ!!」


あ、そこまでって言ったのは俺。


さて、仕事しますか…


「この場にいる5名…危険物第A級薬物所持、使用の疑いにより一緒に来てもらう。」


「サツか!!」


ローブの3人が各々武器を構え、学生服は後ずさっていった。


「いいや。…依頼により、お前達を捕らえる。」


「なっ…お前らやっちまえ!!相手は一人だ!俺達なら楽勝だ。」


「「うおぉぉぉぉ!!!」」


バカの一つ覚えのような動作で突っ込んでくる3人を俺はひょいひょいっとかわしていく。


その所作を見る限り、戦闘の訓練を詰んだ動きではない、素人だ。


「こいつっ…ちょこまかと動きやがって!!」


「おらぁ!!」


大降りな剣をかわして持っていた簡易模擬剣で武器を叩きお落とす。


「っち…しつけーんだよ!!!」


剣を持った2人を簡単に制圧した俺は、背後からシャッッと音をたててむかってきた物を弾く。


キインー


「……爪を自由に伸ばす能力か。」


シュルシュルと手元に戻っていく細い5本の棒を見て、俺は瞬時に悟る。


「そのとーり。俺の爪は綺麗に研いであるから鋭いぜ。」


自身の爪をペロリと舐める男の目は赤黒い。


「薬を飲んだな…。ゼロス…」


ゼロスは薬を飲んで、能力を得てしまった者だ。


薬を服用し続けないと禁断症状がうまれ、飲み続けると目が赤黒く濁っていく。


そして、一度飲むと止められなくなり、救う手立ては一つ・・・殺すことだ。


「っしゃあ!!」


動きは簡単に読める。


ひらりとかわし、部屋の隅で縮こまっている学生の所まで一気に詰め寄った。


「ここから近く、人の来なさそうな広い所に案内しろ!!」


学生達に被害を与えないように、武器を振り回すには少し手狭だ。


地図を簡単には把握したが、戦いながらルートを確保するのは難しい。


「ひっ…」


縮こまっていた学生は戦闘科の服装だが、この様子からみて同じ1年みたいだな。


賭けるしかない。


「早く案内しろ!!」


俺がドアをあけると学生達は慌てて出ていった。


出ていった方向を気配で探り、ゼロスに向き直る。


「さて、移動しようか。」


「いいだろう。そこがお前の死に場所だ。」


肯定はするが、攻撃の手をやめないゼロスをあしらいながら、学生が駆けていった方向に向かった。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?

藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。 なんで?どうして? そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。 片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。 勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。 お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。 少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。 (R4.11.3 全体に手を入れました) 【ちょこっとネタバレ】 番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。 BL大賞期間内に番外編も完結予定です。

水泳部合宿

RIKUTO
BL
とある田舎の高校にかよう目立たない男子高校生は、快活な水泳部員に半ば強引に合宿に参加する。

孤独な蝶は仮面を被る

緋影 ナヅキ
BL
   とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。  全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。  さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。  彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。  あの日、例の不思議な転入生が来るまでは… ーーーーーーーーー  作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。  学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。  所々シリアス&コメディ(?)風味有り *表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい *多少内容を修正しました。2023/07/05 *お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25 *エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...