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仮説と推測
「…俺に何か様か?」
そう言いつつ顔を上げると、やはりムカつくニヤケ顔のマルセルが立っている。
「ほれ。」
手に持っていた水の瓶が俺の顔の前に差し出される。
何も言わずに受け取る。
「母さんから。
心配してたぞ?
笑って出て行くなんて、酒飲ませたせいでおかしかなったんじゃないか!ってな。」
「別に。気まぐれだ。」
そう言い受け取った水の瓶を開け一口飲む。
「ふぅーん?」
マルセルは立ち去る事なく俺のすぐ横に立ち壁に寄りかかる。
まだ何か用がありそうだが、俺から聞くわけがなく黙る。
数分の沈黙の後、マルセルが聞いてくる。
「さっきの話。
お前はどう思う?」
「ふっ。どの話かわからねぇな。」
どの話の事かは分かるが、とぼけて見せた。
「おお?もう酔いが覚めていつものカレルド様復活か?」
揶揄い返される。
「うるせぇ。俺の考えは言ったはずだ。」
「もっと詳しく聞かせろって言ってるんだバーカ。」
“一々ムカつく”
「ったく。…ココでその話するのかよ。」
アルヤの部屋の下。
聞こえはしないだろうが、前公爵の話をするのは気が引けた。
「言いたい事は分かるが、今ぐらいしかお前と話す時間は作れないからな。
仮説通りなら、お前も首を突っ込んでくるんだろ?」
「…気が向けばな。」
「よく言う。元々お前の仕事だったんだ。
気にはなってたろ?」
気にならないと言えば嘘になる。
が、前公爵が関わっているのなら気が進まない。
「元は俺の仕事でも、今はお前のだ。
なんだ?俺の助けがないと終わらせそうにないのか?」
嘲笑う様に鼻で笑ってやった。
「…言ったろ。正直行き詰まっている。
認めたくないが、俺1人じゃ厳しい。
それを分かって父さんは話を聞いてきたんだろうし、俺は話したんだ。」
珍しく弱音を吐く。
昔なら、意地でも認めずに1人でやってみせると息巻いていただろう。
気持ちも分かるし、俺もそうするだろう。
「…ふーん。」
それだけ返事をしまた一口水を飲む。
「前公爵。関わっていると思うか?」
マルセルの覇気のない問いに答えた。
「まぁ。無関係ではなさそうだとは思う。
お前の言う、媚薬の製造元は前公爵がアルヤに仕込んだ薬を作っていた未だ見つかっていない場所。だと言うのは良いセン行っていると思う。」
俺の答えに大きくため息を漏らすがマルセルはすぐに口にする。
「だが…理由が分からない。
なぜ媚薬なのか。
なぜか侯爵と手を組むのか。
なぜまだアルヤを狙っているのかも含めてだ。」
「後、黒ずくめの奴らが俺を狙った理由もな。」
「なっ!?」
目を丸くし驚き見下ろされる。
「デケェ声出すな。」
「聞いてねぇけど?それ。」
ムッとしたマルセルが俺を見下す様に睨む。
「今言ったからな。」
「アルヤを狙ったと思ってたが違うのか…」
「あぁ。明らかに俺への敵意だった。
そんな奴らなんぞ山ほど居るから気にしていなかったがな。
あの媚薬の甘ったるい匂いがアイツらからしたからお前の所にやっただけだ。」
「実力は?」
「少しかじったくらいの素人。」
「そんなんで向かって来たのか?
死にに来たと同義だろ。」
「知るか。
そいつらはどうなった?その様子じゃ、黙りか?」
またマルセルの大きなため息が漏れる。
「半数以上が舌を噛みちぎりやがった。
窒息し死にそうになった奴もいるが、処置が間に合い死んではいない。
今は残りも含め全員が錯乱状態で話なんかできる状態じゃない。」
「はぁ?
全員?10人はいたろ?
そんな度胸のある奴らには見えなかったが。」
思わず顔をしかめる。
「9人だ。
お前の所から渡され、イメリオと数人の隊の奴等が引き継ぎ牢に入れた。
までは良かったが、牢に入れた瞬間から豹変したらしい。
俺が着いた頃には既に舌が転がってた。」
“イメリオ…。アイツか。”
マルセルの所には、俺が嫌う奴らが集まる。
「それは、お前ん所の団長が無能だっただけじゃないのか?」
ふんっと嫌味を言う。
「じゃぁ、お前の所の団長は9人が一斉に舌を噛み出したら全員止められるんだな?」
「…あぁ。」
思わず少し返事に詰まるのをマルセルは見逃さずに揶揄う。
「ちょっと自信ないんだろぉー?」
「うるせぇ。
大体すぐに噛み切れるもんじゃねぇ。
時間はあったろ。」
「俺もそうは思う。
普通は躊躇し、激痛に苦しみやめる者が大半だ
が、イメリオ含めその場にいた隊の者全員が一瞬で噛み切ったと言っている。」
「さぞ恐ろしい奴が後ろにいるんだな。
捕まったら舌を噛みちぎれと指示されても普通はしないし、なんなら助けを求めてもおかしくない。」
「あぁ…。見た目での判断にはなるが、絶対服従している主人をもつ者達には到底見えない。
どちらかと言うと…」
マルセルの言葉を遮ぎる様に口を出す。
「逆。だな。
気の弱そうな奴らの集まりで、服従ってより使われている。
そんな者らだな。」
「そんな感じだな。」
“気の弱そうな…。
確か…媚薬を始め配っていた奴は、若く大人しそうな者。だったか…。”
自分で言った『気の弱そうな。』
に、引っかかる。
「…そいつらは今、錯乱状態だと言ったな?」
「そうだが?」
聞くだけ聞いて黙る俺にマルセルは結論を急がせる様に話しかけてくる。
「何なんだよ?」
「黙ってろ。」
「はぁ…。話しながら結論を出すって事が出来ないものか。」
呆れた様に言うのを無視し、自分の考えを頭の中で組み立てていく。
大人しいそうな者。と気の弱そうな者。
そんな者らが媚薬を配り回り、俺に剣を向けた。
そんな事するか?
強い思考に捉えられそれを善とする考えを持っているのなら、しない事はないのか…。
だが、その強い思考とはなんだ…
誰のだ?
前公爵の口車に乗せられた?
いや、それだけじゃ全員が一斉に舌を躊躇なく噛みちぎる様な事は…
じゃあ、なんだ…
そこまで出来る理由は。
大体、捕らえたのは俺らだ。
その時には、舌を噛む様な素振りはなかった。
数人の顔に似合わない怒号が響くくらいで、特に気になる様な事はない…。
脅した後、さらにキツく縄で縛り上げベテラン騎士と中堅騎士の2人で皇宮に送った。
暴れたなんて報告はなく、文句も言わず黙ってついて来た。とだけ。
引き渡し、牢に入れた瞬間に豹変…。
それも変な話だ。
なぜ捕まった瞬間ではなく、わざわざ皇宮まで歩き牢に入れられてからなのか…。
死にたくなかったから。か?
牢なら助けが入ると思ったから…
だとしても、全員が一斉には考えられない。
そしてさらに全員が錯乱…。
ある言葉が頭をよぎった。
「洗脳…。」
ボソッと口から出た言葉を聞き取ったマルセルが声を上げる。
「はぁ!?」
上を向き立ったままのマルセルを睨む。
思わず声が出てしまったのだろう、口を手で覆っていた。
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