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日常の始まり

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まだ見慣れない天井を見ながら目が覚めた。

レティアナとしての一日が始まったことに少しうれしくなる。私専属のメイドはエマというらしい。当分は家族と交流する時間が主になると予定を教えてくれつつ、敬語を使わないようにと注意された。年上にタメ口で行くのは元日本人として抵抗があるけど郷に入っては郷に従えというやつだね、難しいよ!どうせ舌が回らないから敬語じゃなくていいのは少しありがたかったりする。よく気が付くこの侍女はもしや私の心が読めているのか?

「読んでおりませんよ。さあ起着替えをして朝食に参りましょう。」

読んでんじゃん!どうしてわかるんだよ~、ポーカーフェイスか!そうだポーカーフェイスをしよう。この侍女に負けたくない!とか意味の分からないことを考えているうちに昨日夕食を食べた部屋についた。食べ始めても父が来ない。

「ウィンスは昨日の夜からお仕事に行っちゃってまだ帰ってないのよ。今日は母様とアルと遊びましょうね~。」

この世界の人は全員心が読めるスキル持ちなのだろうか。いらないといったのは間違いだったか?よく考えたら神(?)っぽい人に歯切れの悪いような返事をされたっけ…。これは早々やらかしてしまったかもしれない。離乳食からおいしいスープにグレードアップした朝食に意識をとられながら考える。実際は誰もそのようなスキルは持っておらず、ただ3年間無表情のレティを見てきた分、微妙な表情の変化が読めてしまうだけだったがレティがそれに気づくのはもう少し先である。

朝食後は温かい庭に出て2人の話を聞く。私が3歳で、兄様が5歳だった。兄様が最近勉強した内容や好きな食べ物、流行の服など2人の日常を知ることができた。ただ…母様、父様とのなれそめ話は必要でしたか!?まあ、両親の仲がいいことはいいことなんだけどね!1日中2人について聞けたから、すでにマナの家族よりこちらの方が自然に家族だと思える。

子供だからか1日が本当に一瞬のようだったな。明日は屋敷の中、明後日は領地にある町に案内してくれることになった。こんな風に明日が楽しみになるなんてね。ベッドの中で少し笑ってから意識を手放した。
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