コールドスリーパーの私が異世界で目を覚ます

亡月

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授業の難易度には本当に安心した。
この分ならもしかしたら卒業まで必死に勉強しなきゃいけないってことはなさそうかな。座席は相変わらず自由なのでセルジオ様の後ろに座ることにした。セルジオ様も授業中はつまらなさそうに外を見てるか教室にいないことが多かった。授業をさぼるなんて度胸を私は持ち合わせていないので、ずっとエティと念話のようなもので話をしていた。

『ってことがあったんだ。ろくでもない人もいるけど、初めて友達ができたんだよ!』

『それは良かったな、ずっと友達が欲しいって言ってたもんな。今度俺がそっちへ行ったときに友達とやらを確かめよう。』

『どうしてエティが確かめるのよ。』

『俺のレティに近づく奴は、俺がしっかりと確かめなければレティは時々ころっと騙される時があるからな。』

『ちょっと!私がいつ騙されたのよ。』

『それじゃあ、一番最近レティが騙されたことを教えてやろう。今、寮として使っているあの建物、寮じゃないぞ。』

『うそだ!父様も兄様もあそこで学園生活を過ごしたって言ってくれたもん!』

『いくら辺境伯の娘といえど、一生徒に1つの建物を与えていたらきりがない。そもそも王子たちだって普通の寮の1室だぞ。流石に部屋は広いがな。』

『家ごとに振り分けられてるって…。』

『それ自体が嘘だ。レティはうっかりとんでもない魔法を使ったり、思ってることが顔に出てしまうからな。アルがいつでもフォローできるように一緒に暮らしているんだろう。兄妹と言えど男女が同じ寮に住むわけがないしな。』

『私はちゃんとポーカーフェイスを身につけたよ!どんくさい子みたいに言わないで!』

『身につけたな。どんくさいとは言ってないだろう?レティはいつでもかわいいぞ。』

『そんなこと言って、騙されないんだから!』

『大丈夫だぞ、これは嘘じゃないから。』

むこうから笑ってる声がする。全く失礼な契約者だ。

『そんなことより、魔領の様子はどうなの?』

『良くないな。親父殿と俺の2体体制でさえ、以前と同じくらいにしか魔力の流れを操れない。親父が言うには、大本の原因が何かあるらしい。俺は青龍探しと並行してそれも探ろうと思う。』

『それじゃあ、もっと会えなくなるね。無理しないでよ、私にできることがあるなら何でも言って。』

『以前と同じくらいはそばにいるようにするぞ。俺もレティのそばに居たいからな。今は多少無理をするときだと思ってる。全部解決してレティが言ってたようなのどかなところで2人でゆっくり過ごすためにな。』

『ふふ、楽しみにしてるね。』

『そうだ、レティには1つ頼みたいことがあったんだ。レティと同じクラスにいる聖女とやらを探ってほしい。青龍が持つ聖属性を人間が持っている時点でおかしいんだ。知ってると思うが、炎・氷・地・闇そして聖属性は俺たち幻獣しか扱えない。それはこの世界の理だから覆るはずがない。それなのに、その聖女とやらは聖属性を持っているという。虚偽の可能性が高いが、一応調べてくれ。』

『わかった、任せて。ちょうどこの後は魔法の演習だから、しっかり観察してくるよ。』

『ああ、頼んだ。俺は他の可能性を先に潰してくる。』

『行ってらっしゃい!』

『また夜に連絡する。』

エティからの声が途絶える。前を向くと初老のおじいさんが貴族とは何たるかと語っている。こんな授業必要なの?先生はこんなこと教えてこなかったけど。一番苦労しそうなのはこういう科目かもしれないなとため息をつく。
ーーーー魔法の演習は弓道場のような場所で的が遠くに置かれていて、こちらからそれを狙うみたいだった。

「魔法の演習場ってこんな感じなんだ。」

「この授業は受けるのね、おかえり。」

「ただいま。さっきの授業ほど時間の無駄なものはないと思うよ。」

「同感。」

「それでも、ちゃんと教室に残ってるレティアナ様はえらいね。僕と一緒に図書室で時間をつぶさない?面白い本が結構あったよ。」

「それはとても興味深いけど、教室で時間をつぶす良い方法があるんだ。」

「うらやましい、今度そのコツを僕にも教えてよ。」

「もちろんよ、いつかね。」

いつかセルジオ様にもエティを紹介できたらいいな。
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