コールドスリーパーの私が異世界で目を覚ます

亡月

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目覚めた先にあるもの

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レティアナ視点


目が覚めたら見慣れた天井だった。ここは…私の部屋?確か私は神様と会って…誰かと話していた気がする。誰だったんだろう、とても大切な存在だったはずなのに思い出せない。私から何かが欠けた気がする…。よくわからない虚無感に苛まれたがどうしてもわからないから、しかたなくゆっくりとベッドから起き上がる。

『レティ!!起きたのか!体は大丈夫か?どこか痛いところはないか?』

足元で小さくなったエティが突進するような勢いで私のもとへ近づいて、あと一歩の所で足を止めて聞いてきた。

「エティ。大丈夫、私はどうしてここに…?私は確かに…。」

多少頭痛がするがそんなことより今の状況が知りたかった。

『レティが倒れた後、俺はレティの精神体を分裂できないか試してみた。』

そうだ、私はこの世界にいてはいけなくて死のうとしたんだ。そして、意識を失って神様のもとへ行った。そこで…、わからない。私は確かにここには戻ってこれないはずで、精神体の半分がないから…私のその半分はどこかに行ってしまっていて…、…どこに行っていたんだっけ?それに、分裂?私は何かと融合してたの?

「分裂?」

『そうだ、レティは異界の者の精神体と結合していたからこの世界に拒絶されていた。』

「異界の者?」

『レティ、まさか覚えていないのか?確かに倒れる直前に俺に話してくれたぞ。奴と同じ世界で生きていた人の記憶があると。』

「やつ?」

『偽聖女のアリサとかいうやつだ。』

「ああ、アリサ。」

少しずつ思い出してきた。魔領が攻められて、フェンリルが殺されて、アリサが消えて、私は死んだんだ。そうだ、私には異界の精神体の半分と融合していて…私の知っている人?そんなわけないじゃん、私は異界に知り合いなんていないんだけど。

『話を戻すぞ。俺はいくらやってもそれを分裂させることができなかった。それに精神体が消えかけてきたことで体もそれに合わせて朽ちようとしていた。それを食い止めるために俺がレティと契約するときに預かっていた精神体をそのタイミングで入れたんだ。』

契約の時?預かっていた?
 
ーーーーーー

『ん?なんだこれ。どういうことだ?』
『ああ、なるほど。こうすればいいか。こうして、…こう!できたぞ、どうだ?』

「魔力が巡ってるのがわかるわかりゅ!」

ーーーーーー
 
『あの時はまだレティが魔力を操ることができなかったから私が代わりにレティの魔力も操作したんだ。その時にレティの中には精神体が1.5人分あることに気づいた。そしてそれが邪魔をして魔力が上手く操れなかったんだ。どう見ても異質なものが混ざっていたから本当はそれを取り除きたかったんだがそれはもう片方の精神体の半分と完全に融合してしまっていて動かすことができなかった。だから、どれとも融合していない精神体を俺が預かって契約をしたんだ。勝手なことをしてすまなかった。幼いレティに話すことではないと思って、成人したら打ち明けようと思っていたんだ。』

「だから青龍様には私の精神体が一人分しかないって言われたのね。エティ、ありがとう。エティが預かってくれていたおかげで私はここに戻ってくることができたんだよ。どう感謝してもしきれないね。」

『レティ、泣かないでくれ。お礼を言いたいのは俺の方だ。よく戻ってきてくれた。本当にもう会えなくなるかと思っていた。』

エティが顔を私の肩に乗せて甘えてきた。

『レティ、約束してくれ。もう俺たちの間で隠し事をしないと。そしてもう勝手にいなくなろうとしないと。』

「ごめんね、もう本当にしない。エティを信じてこれからを生きていくことにする。こんな私だけどこれからも一緒にいてくれる?」

『もちろんだ。レティがいるところに俺はいつでもいよう。俺の唯一だからな。』

頭をぐりぐりとしてくるので私もぐりぐりとし返して2人でくすっと笑った。何だろう、今まで以上にエティに近づけた気がする。何かを失った気がしたけどエティがいれば、私の唯一がいればこれからも大丈夫な気がしてきた。
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