初めてはアイツと!?〜大嫌いなチャラ同期に、鉄壁の秘密を暴かれました〜

萩野詩音

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第7話

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「そういえば相川、今日飲み会くんの?」

 わざと高い声でそう訊ねると、相川は無言で頷いた。少しだけ相川の纏う温度が下がった気がする。やっぱり乗り気ではないんだろう。
 嫌な予感が兆した。
 吉野は、飲み会に参加するのが珍しい相川と話したい男が寄ってくるのを狙っているはずだ。
 できることなら一緒に会場に向かって、隣に座りたいところだが……残った仕事を考えると、難しいだろう。
 ずん、と不安が重しのように胸に沈んだ。

「マジか。気をつけろよ。企画部の男性陣、結構押しが強いから。飲まされそうになったら呼んで」
「……なんで」
「なんでって。まあ相川ならすぱっと断れるのかもしれないけど。さすがに鉄仮面のお前でも、初めて会う人間には少しくらい気を遣うだろ」

 ストレートに「モテるんだから気をつけろ」と言ったところで、相川は取り合ってくれそうもない。なんなら「彼氏持ちの女に寄ってくる男なんていない」と言い返されそうだ。
 そもそも相川は自分の価値をわかってなさすぎる。

「飲み会でまで愛想悪くするつもりないけど」

 そう言われ、固まった。
 なんでだよ。飲み会で愛想良くする必要ねーだろ仕事でもないんだし。
 他の男に優しくするなって言いたいだけなのに。なかなか伝わらない意図に、不安が焦りに変化していく。

「いや、飲み会でこそ愛想悪くしとけ。無闇に優しくする必要ねーから」
「私だって場所くらいわきまえますけど」
「そうじゃなくて!あー、まあいいや。」

 言っても言っても伝わらない。仕方ない。
 そこが相川の良いところでもある。でも、この自己肯定感の低さみたいなものは、なんなのだろう。
 これだけ美人で異性から好意を寄せられていれば、多少自意識過剰になったっていいのに。
 ガシガシと頭を掻く。だめだ。何と言ったらいいのかわからない。
 そうこうしているうちに、営業部に戻ってきてしまった。

「じゃあ、今日の進捗はメールします」

 そう言ってデスクに戻ろうとする相川に、「そういえば」と慌てて付け加えた。
 あの不自然な強さのカールが目に飛び込んできて、本人が席にいることに気づく。ぐっと腰を折って、相川にだけ聞こえるよう耳元に近づいた。
 突然近づいた距離のせいか、相川の髪がわずかに揺れて、俺の頬を掠める。甘い香りに、一瞬仰け反りそうになった。けれどその前にこちらを見上げた黒い瞳に、自分が映っていることに気づく。ごくりと喉が鳴った。

「……吉野には気をつけろよ、仕事だけじゃなくて飲み会も」
「え?」
「あいつ、いろんな手使ってくるから」

 毎日、必死に吉野の面倒を見ている相川たちアシスタントのことを思うと、あからさまな陰口は言えなかった。でも吉野はきっと相川をダシにするつもりだ。自分のことしか考えていないはず。
 どこまで俺の言葉を本気で受け取ってくれたのか、「はいはい」と頷いて席へ戻っていく相川の背を、俺はしばらく見つめていた。


 定時間際に相川から送られてきたメールに目を通しながら、舌を巻く。
 一時間そこそこで作ったとは思えない資料の雛形が添付されていたからだ。素早く目を通し、要望点を箇条書きにして返信した。
 相川に、この程度か、と思われない仕事をしたい。相川の存在は、間違いなく自分のモチベーションだ。
感想 2

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