姉さんにおまかせ!~弟のパンツを被る私~

ぱぴっぷ

文字の大きさ
2 / 5

弟が何より優先

しおりを挟む
「……ノイン、行くよ!」
「わかったわ、クリス!」
「さあ、姉の力を見せ付けますわよ!」
「……ニナ、ノイン、頑張ろう! 弟の為に」

「「おー!」」





 私達が街で暮らし始めて一週間、この街は広くて人も多いからまだ慣れないが、私と弟は仲良く暮らしている。

「うぅ~ん、おねぇ……ちゃん……むにゃむにゃ……」

「ふふっ♪ 可愛い♥️」

 前に暮らしていた家よりは広くなったけど、弟が寂しいみたいなので、私達は一緒に寝ている。
 今朝も寝惚けて私に抱きつき寝言を言っている、これだけで今日1日頑張れそうだ! 

 今日からクリスとニナと一緒に働く予定なので、名残惜しいが私はベッドから出て用意を始める。

 装備と持ち物の確認をする。
 洗濯物から弟のパンツを取り出しバッグに入れて、ついでにシャツのニオイを嗅いでおく。
 まだ街に慣れてないから、毎日緊張してるのかな? シャツからはそんな弟のニオイがした。

 あの日、パンツを被ってから私は姉力か上がって、ニオイで弟の調子が何となく分かるようになってきた。

 クリスやニナにはまだまだ敵わないが、2人の話を聞くかぎり、最初からこのレベルの姉は中々いないから自信を持ってと誉められた。

 準備が終わり、次に朝食作りを始める。
 パンを焼き、スクランブルエッグにベーコン、そしてサラダにスープを調理をしていたら、弟が起きてきた。

「お姉ちゃん、おはよー!」

「おはよう♪ もうちょっとで朝ごはん出来るから、顔洗ってきなさい」

「はぁーい」

 そして弟と一緒に朝食を食べて、食器を洗いながらスプーンペロペロをして、弟の昼食も作っておく。


「それじゃあお姉ちゃん、仕事行ってくるからね♪」

「はーい、頑張ってね!」

「遊びに行くならあまり遠くに行かないようにね! 迷子になるわよ」

「わかったよ♪ 行ってらっしゃい!」

 弟とハグして、弟のニオイを目一杯吸い込み、弟の感触をしっかり確かめ、そして私はクリスとニナとの待ち合わせ場所に向かう。


「……ノイン、おはよ」

「待ちくたびれましたわ!」

「ゴメンゴメン! ハグしてたら遅くなっちゃった!」

「しょうがないですわね~、弟さんに免じて許しますわ!」

「……弟が何より優先、しょうがない」

「それで今日は何するの?」

「……街の見回り」

「私、この街に来たばっかりだから助かるよ! ついでに案内してね?」

「……そのつもりでこの仕事にした」

「さあ、2人とも行きますわよ!」

「「おー!」」


 そして私達は街を見て回り、特に異常もなかったので、休憩とお昼ご飯の為に喫茶店に入った。

「それにしてもクリスは人気あるんだね! 色んな人に話かけられて」

「……そうかな? 弟の方が人気あると思う」

「そういえばクリスの弟さんって、どんな感じなの?」

「……私の弟はママ似で可愛い顔してるよ、背もそんな高くないし、でも1番可愛いのは困った顔と泣きそうな顔、だからついついイジワルしちゃう」

「えっ!? でもあんまりイジワルすると、弟さんに嫌われちゃうよ?」

「……それは大丈夫、本気で怒るギリギリを攻めてる」

「そうなの? それならいいけど……ニナの弟は?」

「わたくしの弟は……わたくしに似てますわね! そういえば昨日久しぶりに、一緒にお風呂に入ってくれましたわ♪」

「ええっ! お風呂!?」

「……いいなぁ、うちの弟は流石にもう入ってくれない」

「うちも恥ずかしがって、もう入ってくれなくなっちゃったよ……」

「そうですの? わたくしの弟はまだ10歳ですからね、一緒に洗いっこしましたわ♪」

「あ、あ、洗いっこ!?」

「……凄い!」

「さすがにわたくしも恥ずかしいから背中をですわよ?」

「何だ……ビックリした……」

「……私も」

「一緒に湯船に浸かって、お湯をかけっこして遊んで、楽しかったですわ♪」

「楽しそうでいいなぁ……私も弟を連れて、どこか遊びに行こう」

「……私の弟は最近家にいないから、帰ってきたら、遊ぼうかな? ……弟で」

「何それ~? ヒドイよ~♪」

「それはあんまりですわよ♪」



 この街に引っ越して来て、安定した仕事があって、弟トークをできる友達も出来た。
 ホントにクリスとニナに感謝している。

 食事と弟トークをし終わって店を出て、見回りを再開した私達に、争うような声が聞こえてきた。

「お姉! お願いだ! その……そのヒールを履いて踏んでくれ!」

「やめてよ! 何言ってるの? 昨日からおかしいよ!?」

「頼むよ! 早く履いて! 早く!」

「変だよ? お願い! 元に戻って!」

 様子がおかしい…… ヒールで踏んでくれ! って、急に変な性癖に目覚めたんじゃないの?

「クリス、ニナ、あの人達何か様子が変だよ?」

「……聞いてみましょう」

「そうですわね!」 

 弟に迫られているお姉さんを助けるために、私達は止めに入った。 

「あなた! 何やってるの?」

「……お姉ちゃんの嫌がる事、したらダメだよ?」

「お姉ちゃんにヒールで踏めなんて! 弟のする事じゃありませんわ!」

「お姉…お願い! お姉……」

 目が虚ろで焦点が合ってない……様子がおかしい!

「……ノイン、ニナ、これは……洗脳かもしれない……」

「洗脳!?」

「誰がそんな事を!」

「……ただ、洗脳されてすぐみたい……それなら!」

 そしてクリスがおかしくなった弟に手をかざし、回復魔法を使う……すると、

「あれ、お姉!? 何でここに? 確か友達と遊んでて……」

「ああ! 良かった! ありがとうございます!」

「……大丈夫、治って良かった」

「ところで何があったの? 様子が変だったよ?」

「友達と遊んでたら変な人に話しかけられて……それから覚えてないです……」

「……変な人?」

「どんな人だったの?」

「う~ん……あまり覚えてないけど……あっ! H・Tとか言ってました!」

「H・T……聞いた事ないですわね……」

「……それで友達は?」

「その後どうなったか、分からないです……」

「分かったわ! ありがとう♪ もしまた何か思い出したら教えてね!」

「お姉ちゃんをあんまり心配させちゃダメですわよ?」

「……お姉ちゃんも弟の様子を気にかけてて」

「分かりました! ありがとうございます! ほらあなたもお礼言いなさい!」

「ありがとう、お姉ちゃん達!」

 姉弟と別れ、私達はもう一度見回りをしたが、特に何も見つからずその日は解散した。


「ただいま~♪」

「おかえり~! お姉ちゃん、お腹空いた~」

「ごめんね、今作るから♪」

 お腹を空かせた弟の為に急いでご飯を作る。
 しかし頭の中ではさっきの出来事が……

 洗脳されてヒールで踏んでくれと言う弟、そしてH・Tと言う謎の言葉……
 よく分からないが、もしあの姉弟が自分達だとしたら許せない!

 可愛い弟が洗脳され、変態にされる……
 考えるだけで恐ろしい。

「ごちそうさま~♪」

「はい♪ お茶碗洗うから、その間にお風呂入っちゃいなさい?」

「はぁ~い」

 明日クリス達ともう一度調査してみよう! そして犯人を見つけてやる!

 スプーンとフォークをペロペロしながら、私はそう決意した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

まほカン

jukaito
ファンタジー
ごく普通の女子中学生だった結城かなみはある日両親から借金を押し付けられた黒服の男にさらわれてしまう。一億もの借金を返済するためにかなみが選ばされた道は、魔法少女となって会社で働いていくことだった。 今日もかなみは愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミとなって悪の秘密結社と戦うのであった!新感覚マジカルアクションノベル! ※基本1話完結なのでアニメを見る感覚で読めると思います。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...