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第二話 記憶
しおりを挟むその夜、彼からの返事が届いたのは、日付が変わる少し前だった。
メッセージの通知音が鳴り、画面を見て小さくつぶやいた。
「……来た」
私は急に心臓が跳ねるのを感じながら、画面を開き、数枚の画像とメッセージが表示されていた。
「“来来島”って名前で検索しても出ないけど、昔、郷土史の資料の中で見たことあるらしい。
無人島扱いになってるけど、たしかに昔は人が結構住んでたって話もあった。
今は釣り人とか、もしかしたら住人住んでるかも、あとこれ、その時の資料に載ってた写真のスキャン」
送られてきたのは、くすんだ色の古い白黒写真だった。
海に囲まれた小さな島。港にぽつんぽつんと建つ社のような建物と、島を囲むように立ち並ぶ朽ちた木造の家々。
どこか、息をひそめるような静けさが写真から伝わってきた。
島の写真と一緒に送られてきたのは、もう一枚、古い集合写真だった。
どこかの祭りか何かの記念撮影らしく、十数人の男性、若い数人の女性、が一列に並び、中央には神主のような装束の老婆が写っている。
その中に――いた。
中学生くらいの女の子が、他の誰よりもこちらを真っ直ぐに見ていた。
まるで、写真越しに“こっち”を見ているような、そんな目だった。
「……この人……どこかで」
胸の奥がざわりと騒いだ。
どこかで見たことがある。
けれど、思い出せない。
見覚えがあるのに、名前も、記憶も結びつかない。
もう一通、メッセージが届く。
「行き方も載ってた。フェリーじゃなくて、定期便もないから個人でチャーターするしかないって港の名前は“○○港”。場所は、千葉県の沿岸部にある小さな漁港。
正直、観光地じゃないし、釣り人か住人しか行く理由がある人なんていないと思うけど……、里奈の性格なら行くと思って場所も聞いといた。」
読み終えて、スマホを胸の前でぎゅっと握った。
“里奈の性格なら”――その言葉が
なぜかじんと胸にしみた。
一歩踏み出すのが怖くても。
知りたい気持ちを止められない自分を、
誰かがちゃんと見てくれていたことに、心が少しだけ救われた。
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