最強悪魔、子供拾ったので育てます。

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何気ない日常に幸せを

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時は流れ、いくつもの季節が過ぎた。





冥府の朝は、いつもは静か。
けれどこの家に限って言えば、例外中の例外である。

 

「わぁっ!?つめたっ!」

「ズア!またレピオにかけたでしょ~!」

「えへへ~当たったもん勝ち~♪」

 

ひゅんっ!と、またひとつ、水のボールが空を切った。
ズアが魔力で生成した水球は、直撃すると全身がビショ濡れになるという悪戯魔法。
それが、今日も元気に炸裂していた。

 

「ズア~~!!いいぞ~!もっとやれぇ!」

「やった!ルカーシャ様が許可出たー!!」

 

縁側で紅茶を飲んでいたルカーシャが、ぐいっと手を挙げる。
子どもたちに負けじとノリノリである。

 

「ま、マジ!?レピオ逃げろぉ!ズア本気だよぉ!」

「うわ待てネフリス!?お前、逃げてる場合か!!」

 

……と思いきや、そのネフリスがくるりと振り返った。

 

「えいっ♡」
ばしゃっ!

「ちょっ……ネフリス!?お前までえええ!?」

「きゃははっ!レピオびしょびしょ~~!!」

 

今度はズアとネフリスの水球コンビネーションが炸裂し、レピオがびしょ濡れ。
やがてレピオも牙をむいて反撃開始。

 

「くそっ!こうなったら俺もやるからな!!」

 

三人が庭を走り回り、水しぶきが空に舞う。
魔力のきらめきが太陽のように光って、冥府の空に似合わぬ明るさを見せていた。

 

ルカーシャはその様子を縁側から見て、手を叩いて大笑いしていた。

 

「良いぞ良いぞ!水浸し合戦じゃぁ!最後に残った者には……おやつのご褒美じゃ!」

「わぁっ!!ルカーシャ様最高!!」

「ルカーシャ様だいすき~!」

「ズルいぞズア!よーし、おやつは俺がもらうっ!!」

 

きゃあきゃあと笑い声が響き、ルカーシャも立ち上がる。
袖をまくり、庭に歩み出たその姿に、3人は一瞬、ビクッと身構える。

 

「さて……わらわも参戦するぞ?」

「え……」

「え……?」

「え……!?」

 

ばっしゃあああ!!

 

「うわあああルカーシャ様ぁぁぁ!!」

「冷たい~~っ!」

「ルカーシャ様ずるいよぉ~!!」

 

大はしゃぎの4人。
びしょ濡れになりながら、誰も止まらない。
笑いと魔法と水の音が、静かな冥府に響き渡った。

 

その夜。
静かになった屋敷の片隅で、ルカーシャは独り、紅茶をすすっていた。


子供達は疲れ果てて夢の中である。
 

けれど、さっきまでの喧騒が、心のどこかに残っていた。

 

「悪魔が子育てとは………ふふ、世も末じゃの」

ルカーシャは自嘲気味に笑う。

でも、その顔はこの上なく幸せそうだった。 

空気が、ふと冷たくなる。


「さて、わらわも眠るとするかの」



次の日の朝、ルカーシャが3人に叩き起こされるのはまた別の話。



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