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26.裏庭
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組み立てにはいくつかの不具合が生じたものの、何とか開催当日に向けて目途が立った。聖堂の中では、三日後のお披露目に向けた最終調整と、余分な足場の撤去が始まっている。
窓には目隠しをして出入りも関係者だけに絞り、竜骨の存在はかなり厳密に秘されている。
だがそれが逆に興味をそそるらしい。
「皇帝陛下を満足させるものって、一体なんだ……?」
「すごい荷の量だったから、新しい祭壇か?」
「 一般開放が楽しみだな」
口々に囁き合って、胸を高鳴らせる住人の姿が引きも切らない。州都周辺の村から物見遊山でやってきたらしい、素朴な風体の家族連れも混じっている。
「あたしのお気に入りはね、……あの人! 格好良くない??」
「えー、そう? 私はあっちの方が好み」
遠巻きで一塊になって騒ぐ女達へ、若い仲間が調子に乗って手を振ると、たちまち黄色い声が上がる。まだ見物するものがないのに人だけが増えているから、リセル達にまで注目が集まっておかしなことになっている。
「あー、せっかく人生最高潮にモテてんのに、遊びに行く暇がないのが悔しいな」
苦笑した若者の後頭部を、「厚かましい」と叱りながら年かさの仲間がはたく。
水を飲みながら図面に目を落として、「平和だな」とリセルも笑った。邪魔になる風よけ布は外してしまって、額に軽く布切れを巻くだけにしてある。ほつれた髪がさらさらと頬を撫でて風に揺れる。
「リセル様、殿下をお連れしました。お願いします」
濃紺の制服に身を包んだケイブが大股で歩み寄って来ると、途端に群衆がまたざわざわと騒ぎ出す。アマレノの仲間はさておき、ケイブは上背もあって上品で見栄えがするから、女の子が見惚れてもおかしくない。
「分かった。行くよ」
リセルが図面を畳んで立ち上がる。
途端、悲鳴のような歓声が上がった。
「あああっ……、あの人! ね? 可愛いでしょ?」
「きゃー! やっと見られた! え? 男の人なの? きれーい!!」
「若いのに、結構偉い人みたいなの。命令してる姿も素敵なのよ」
どうやら自分の事を評されていると知り、リセルはげんなりと眉を下げた。もはや盛り上がれるのなら誰でもいいと見える。
ケイブは耳に刺さりそうな黄色い声に顔をしかめながら、「すごい人気ですね」と苦笑した。
並んで歩くエスメルも嫌そうに肩を落とす。
「リセルお前、もう前には出て来るな。うるさくてしょうがない」
「俺のせいかよ……。でもまあ、ここじゃ休憩にならないな」
せっかく昼食用に屋根だけの天幕をいくつか設置したのに、どうにも居心地が悪い。止まない歓声を背中に受けながら、リセルは頭を抱えた。
もうあと三日の辛抱だ。
聖堂の中の空気はひんやりと冷たくて、木と油と埃のにおいがする。荷物の空いたところから清掃の下男が入り始め、客用の卓や椅子が運ばれてきている。
「ここまで聞こえて来たぞ」
「何が?」
「リセルに熱を上げているご婦人方の声だ」
「……ふっ」
待ち構えていたジュノビオから大真面目に嫉妬されて、リセルは思わず吹き出した。そういえば最初の頃はナナにすらやきもちを焼いていた。案外心が狭い。
「あはは。みんな見るものがなくて退屈なんだよ」
「見世物小屋ではないんだがな」
「じゃあいっそ聖堂の前で芸でもしようか? 結構稼げると思うよ」
「やめてください、リセル様。そこまでいくと警備が必要になります」
顔をしかめるジュノビオの隣で、ケイブまで渋い顔をする。リセルは二人の背中をばんばん叩きながら、「同じ顔してるぞ!」とからかった。
「……あとは細かい所を補強して見栄えを整えれば、当日に間に合うと思う」
促して、竜の骨を見上げる。
大きな頭から複雑な胴部を経て長い尻尾まで、連なった骨が美しい弧を描く。脚を踏ん張りこちらへ首をもたげる黒い生き物は、見紛うことなく竜の姿をしていた。実際は鉄線に貫かれ縄に引っ張られ、足場に支えられてやっと立っているだけなのだが、まるで今しがた肉体を失ったかの様な躍動感がある。
「ありがとう。……素晴らしい」
ジュノビオは目を細めてそれだけ言った。
「明日には陛下が州都に入るから、私がここへ来るのは今日が最後になる。内装業者や花屋にも適宜指示を出してほしい」
「分かった。適当に上手くやるよ」
にっこり笑ったリセルを、ジュノビオは名残惜しそうに見下ろす。束ねた亜麻色の髪を掬い取ってそっと口づけた。
「しばらく会えないな……」
「いや、大げさだって」
視察と称してほぼ毎日聖堂へ足を運ぶ方がおかしい。予定を調整する侍従や警護を担うケイブたちの苦労が偲ばれる。
「わっ! おい、やめろ! ジュノ……!」
そのままぎゅっと懐深く抱き込まれる。
温かくていいにおいがして、リセルはおざなりに抵抗して見せながら、こっそりジュノビオを補給した。
「おい! その辺にしとけ!」
「殿下、人の目がありますので……」
エスメルとケイブに窘められて、ジュノビオはしぶしぶリセルを放す。とはいえ聖堂の中にいる人間は、領主と現場監督の親密さにだいぶ慣れてしまっている。見て見ぬふりが鉄則だ。
恐らく予定がぎっしり詰まっているのだろう。ジュノビオはそのまま、ケイブに引きずられるように連行されていった。
「聖堂の前じゃなくて、よかった」
ほっと胸を撫で下ろしたリセルの呟きに、眉を寄せたエスメルも同意して頷く。
興奮した女の子たちが卒倒しかねない。
屋敷で持たせてもらう昼食は毎日とても美味しい。今日のパンには確かチーズと、香辛料のきいた燻製肉が挟まっていたはずだ。
遅めの昼休憩が回って来て、紙袋を抱えたリセルは窓から裏庭へ抜け出した。聖堂の裏は野趣あふれる庭になっているのだが、高い塀に囲まれていて、本来は決められた扉からしか出入りできない。
裏庭の片隅には小さな礼拝堂があって、普段から祈りの場として使われていた。特に人目を避けて静かに祈りたい貴婦人たちにとっては、この礼拝堂を貸し切りで使うことが、格の高さと信心深さを表す一種の舞台装置になっているらしい。
「いつもの場所で食べるか……」
植え込みをかき分けて明るい木立を抜け、塀沿いに進む。木々に囲まれた小さな空間には、古い礎石がひとつ忘れ去られていて、腰を下ろすのに丁度いい。
しかし、リセルお気に入りのその場所には、すでに先客がいた。
塀の向こうから聖堂の巫女らしき女の声がする。
「……今礼拝堂を使われているのは、カイエス夫人?」
「そうだけど。妃殿下と似たような時間に頼んでおきながら、少し先に入ったのですって。あからさまよね。ぷりぷり怒りながら妃殿下の侍女が出て行ったわ」
「あら、可哀そう。じゃあ妃殿下が待ちぼうけ?」
先客はリセルに背を向けて、背筋をまっすぐ伸ばして佇んでいる。
「……妃殿下って、まだご懐妊の兆しがないの? もうご成婚から二年でしょ?」
「ダメみたいよ。まあ、不器量で不愛想と揃ってたら、無理もないわよね」
「ご健康そうだけど、そのうち廃されてしまうんじゃないかしら……」
砂利を踏む音がして、囁き合う女たちの声が遠ざかってゆく。
リセルはその場を離れようと、すり足で後ずさりした。
「精一杯考えて立ち回っているつもりでも、上手くいかないものね」
突然先客が振り向いて、リセルに薄く笑いかける。
まさか背後のリセルに気付いているとは思わなくて、心臓が口から飛び出そうになる。背中に目でもついているのだろうか。
「いや……行き当たりばったりの俺も、全然上手くいってないよ」
頭を掻きながらぼそぼそと返す。あんな噂話を一緒に聞かされた後では、どんな顔をしていいか分からない。
カリダは決して不器量ではない。素朴な顔立ちながら配置は整っているし、肌も体型も健康的で申し分ない。そばかすが少し高貴な雰囲気に合わないのと、表情が乏しいのがもったいないことくらいだ。
木漏れ日が揺れる真昼の裏庭で、静かに見つめ合った。
「私のこと、恨んでらっしゃらないの?」
静かに切り出したカリダの背筋は、相変わらず毅然と伸びている。
リセルは眩しくて苦笑しながら、ゆるく頭を振る。
「カリダの機転には感服するよ。頭がいいね。ただ、ナナを巻き込まないでほしかった」
「……そう」
カリダはひとつ頷いたきり黙り込む。何の感情も読み取れない。
「あのさ、ひとつ気になってたんだけど、あの時の女の人って演技だよな? まさか本当に乱暴されてたりしないよな?」
恐る恐る切り出したリセルに、カリダは眉をひそめて顔をゆがめた。努力して笑いをこらえているような、妙な表情だ。
「当たり前じゃない。あんなの演技に決まってるわ。男に貢ぐために同僚に借金をして、郷里に逃げ帰る寸前の侍女に依頼したのよ」
「そっか。なら良かった」
リセルはほっと胸を撫で下ろす。ずっと心の片隅に引っ掛かっていたのだ。巻き込まれた被害者でなくて安心した。
「……あなた、本当にお人好しね」
呆れたようにカリダが肩をすくめる。
褒められているのかけなされているのか分からなくて、リセルは天を仰いだ。腹が減っているのを思い出し、抱えた紙袋を示して誘ってみる。
「昼ご飯を食べにここへ来たんだ。カリダも食べる?」
「結構よ。どうぞお召し上がりになって」
ふいと視線を逸らしたカリダは、一筋の興味も示さずに礎石へ腰を下ろした。
かなり気まずい状況だが、気に入りの場所を譲ってたまるかという意地で、黙々とパンを齧った。さほど大きくもない礎石の端と端に腰掛けて、二人の間に静かな時間が流れる。
「……笑っても構わないわよ。さっきの話、聞いてらしたでしょう? 私、こちらの貴婦人たちに全く馴染めていないの。……嫌われてるのよ」
カリダが目を細めて、木々の間から覗く青い空を見上げる。
ひねくれた台詞の割には、不思議と拗ねた色はない。精一杯やったという言葉に嘘はないのだろう。
リセルは黙ってパンを平らげ、水筒のぬるい水を飲む。
「私……別に、お兄様がそれほど好きなわけじゃないの」
唐突にカリダが呟く。
妙に子供じみた物言いに、リセルは戸惑って目を瞬いた。嫁いで二年も経つというのに、いまだに“お兄様”と呼んでいること自体が奇妙だ。
「子供の頃は何度か一緒に遊んだけれど、成人してからは会うたびに悲しそうな顔をされるばかりで、どうしていいか分からなかった。でも、妃になることは決まっていたから、ふさわしい知識と振る舞いを身に着けるように努力はしたわ」
ちらりと寄越したカリダのまなざしとかち合う。
「だから、ありのままの姿でお兄様に愛されているあなたが、少し羨ましかったのは本当よ」
ほとんど何の表情もないまま、カリダは静かに語る。
背筋は相変わらずぴんと伸びて、膝の上で重ねた手は綺麗に揃っている。ひび割れた礎石が豪奢な布張りの椅子に見えてくる。
(これは……恋心なんて、欠片もないな……)
カリダはカリダなりに、妃という仕事と向き合うために力を尽くしたのだろう。その姿はまるで、大任を果たせず帰還した誇り高い騎士の様で、妙に切なかった。
カリダの茶色の瞳に木漏れ日が反射して、時折金色に光る。
「巫女の噂話もあながち的外れではないわ。お兄様は、式典の褒美に廃妃を願い出るのでしょう?」
「……なんで知ってんの? 本人から聞いたわけじゃないけど、たぶんそうだって……」
「それくらい分かるわよ。北部貴族がこぞって自分の娘を差し出したがっているんだもの」
きっぱり断言して遠くを見据えるカリダに、思わず舌を巻いた。礼拝堂で祈りを捧げることに心血を注ぐ、深窓の貴婦人の言動ではない。
リセルの動揺に気付いたように、カリダはほんの僅かに口角を上げる。
「私、フィオス家の長女なんかに生まれなかったら、結婚なんて絶対にしなかった。もっと知識を蓄えて、自分を生かせる場所を探していたわ」
リセルはその力強い言葉に、何気なく「アニヤみたいだ」と笑う。
「アニヤ?」
「うん。花刑を受けた仲間で、文武両道の豪快な女性がいるんだ。きっとカリダと気が合う」
本当に二人を会わせてみたくなって、リセルはくすくす笑う。
すると意外なことに、カリダが目をまん丸に見開いて、勢いよく身を乗り出した。この上なく上品ないい香りが、ふわりとリセルを包む。
「それって、アニヤベル・デシナ!?」
そばかすの浮いた頬が紅潮して、瞳はきらきらと光を放っている。
ため込んだ生命力が一気にあふれ出したような、美しいカリダの姿に見惚れながら、リセルは「さあ……?」と首を傾げる。
「女子教育の重要性を訴える書物を記した、アニヤベル・デシナ! 東部貴族の令嬢よ!」
「あ……うん。確か元貴族だったと思うけど。女性も役人に採用しろって言って、役所を襲ったって」
「ああ……すごいわ。生きてらしたのね……。投獄で全て禁書になったけれど、暗記するほど読んだわ」
頬に手を当ててうっとりと視線を彷徨わせるカリダは、まるで恋する乙女だ。
「……何かしら?」
リセルが凝視しているのにはたと気付いて、潤んだ目で睨んでくる。
「いや……、可愛いな、と思って」
「……っ!!」
カリダは声にならない叫び声を上げ、極めて優雅に地団太を踏んだ。
巫女の呼ばわる声が遠くから聞こえて、裾を払ったカリダが立ち上がる。
「三日後にこの身がどうなるか分からないけれど、今日はお話できて良かったわ」
あっという間に元の無表情に戻ってしまったが、どことなく声が明るい。
「俺は、それが心配なんだ。何か起るか分からない」
声を曇らせて紙袋を弄ぶリセルに、カリダが不思議そうに視線を落とす。
「どういうこと?」
「そのままだよ。皇帝がジュノのわがままを、素直に聞くとは思えない」
突然「妾になれ」と命じられた夜を思い出す。聞き流してくれればいいが、逆鱗に触れる可能性だってある。
「警備計画を見たら、聖堂の中は皇帝直属の騎士団しか入れないんだ。外には俺の仲間もジュノの兵もいるから、何かあったら踏み込めばいいんだけど、肝心の中の様子が分からないんじゃ意味ないし」
「あなたが中に入ればいいじゃない」
「それは考えたさ。でも当日朝に総点検されるから潜んでおくのも危険だし、お互い顔見知りの出席者に紛れるのは無理がある。……入口さえ突破できれば何とかなるんだけどな……」
ぎゅっと眉を寄せて腕を組んだリセルに、カリダは軽く首を傾げる。
見慣れるとかなり表情豊かだ。瞳の奥に好奇心と冒険心が光っている。
「あれなら、あなたにぴったりじゃなくて?」
カリダが指さした先には、木立をかき分け息をきらして駆けて来る、聖堂巫女の姿があった。
髪を結い上げて半分ほどをベールで覆い、額には銀細工の大きな飾りが揺れている。人の良さそうな若い巫女はカリダの顔を見るなり、半べそで眉を下げた。
「妃殿下……もう、お探し申し上げましたよ……!」
リセルは大喜びして、巫女の手を強く握る。
「ありがとう! 髪を切らずにいて良かったよ!」
額飾りを揺らした巫女は何のことやらさっぱり分からず、「ひっ」と息を飲んで顔を真っ赤に染めた。
窓には目隠しをして出入りも関係者だけに絞り、竜骨の存在はかなり厳密に秘されている。
だがそれが逆に興味をそそるらしい。
「皇帝陛下を満足させるものって、一体なんだ……?」
「すごい荷の量だったから、新しい祭壇か?」
「 一般開放が楽しみだな」
口々に囁き合って、胸を高鳴らせる住人の姿が引きも切らない。州都周辺の村から物見遊山でやってきたらしい、素朴な風体の家族連れも混じっている。
「あたしのお気に入りはね、……あの人! 格好良くない??」
「えー、そう? 私はあっちの方が好み」
遠巻きで一塊になって騒ぐ女達へ、若い仲間が調子に乗って手を振ると、たちまち黄色い声が上がる。まだ見物するものがないのに人だけが増えているから、リセル達にまで注目が集まっておかしなことになっている。
「あー、せっかく人生最高潮にモテてんのに、遊びに行く暇がないのが悔しいな」
苦笑した若者の後頭部を、「厚かましい」と叱りながら年かさの仲間がはたく。
水を飲みながら図面に目を落として、「平和だな」とリセルも笑った。邪魔になる風よけ布は外してしまって、額に軽く布切れを巻くだけにしてある。ほつれた髪がさらさらと頬を撫でて風に揺れる。
「リセル様、殿下をお連れしました。お願いします」
濃紺の制服に身を包んだケイブが大股で歩み寄って来ると、途端に群衆がまたざわざわと騒ぎ出す。アマレノの仲間はさておき、ケイブは上背もあって上品で見栄えがするから、女の子が見惚れてもおかしくない。
「分かった。行くよ」
リセルが図面を畳んで立ち上がる。
途端、悲鳴のような歓声が上がった。
「あああっ……、あの人! ね? 可愛いでしょ?」
「きゃー! やっと見られた! え? 男の人なの? きれーい!!」
「若いのに、結構偉い人みたいなの。命令してる姿も素敵なのよ」
どうやら自分の事を評されていると知り、リセルはげんなりと眉を下げた。もはや盛り上がれるのなら誰でもいいと見える。
ケイブは耳に刺さりそうな黄色い声に顔をしかめながら、「すごい人気ですね」と苦笑した。
並んで歩くエスメルも嫌そうに肩を落とす。
「リセルお前、もう前には出て来るな。うるさくてしょうがない」
「俺のせいかよ……。でもまあ、ここじゃ休憩にならないな」
せっかく昼食用に屋根だけの天幕をいくつか設置したのに、どうにも居心地が悪い。止まない歓声を背中に受けながら、リセルは頭を抱えた。
もうあと三日の辛抱だ。
聖堂の中の空気はひんやりと冷たくて、木と油と埃のにおいがする。荷物の空いたところから清掃の下男が入り始め、客用の卓や椅子が運ばれてきている。
「ここまで聞こえて来たぞ」
「何が?」
「リセルに熱を上げているご婦人方の声だ」
「……ふっ」
待ち構えていたジュノビオから大真面目に嫉妬されて、リセルは思わず吹き出した。そういえば最初の頃はナナにすらやきもちを焼いていた。案外心が狭い。
「あはは。みんな見るものがなくて退屈なんだよ」
「見世物小屋ではないんだがな」
「じゃあいっそ聖堂の前で芸でもしようか? 結構稼げると思うよ」
「やめてください、リセル様。そこまでいくと警備が必要になります」
顔をしかめるジュノビオの隣で、ケイブまで渋い顔をする。リセルは二人の背中をばんばん叩きながら、「同じ顔してるぞ!」とからかった。
「……あとは細かい所を補強して見栄えを整えれば、当日に間に合うと思う」
促して、竜の骨を見上げる。
大きな頭から複雑な胴部を経て長い尻尾まで、連なった骨が美しい弧を描く。脚を踏ん張りこちらへ首をもたげる黒い生き物は、見紛うことなく竜の姿をしていた。実際は鉄線に貫かれ縄に引っ張られ、足場に支えられてやっと立っているだけなのだが、まるで今しがた肉体を失ったかの様な躍動感がある。
「ありがとう。……素晴らしい」
ジュノビオは目を細めてそれだけ言った。
「明日には陛下が州都に入るから、私がここへ来るのは今日が最後になる。内装業者や花屋にも適宜指示を出してほしい」
「分かった。適当に上手くやるよ」
にっこり笑ったリセルを、ジュノビオは名残惜しそうに見下ろす。束ねた亜麻色の髪を掬い取ってそっと口づけた。
「しばらく会えないな……」
「いや、大げさだって」
視察と称してほぼ毎日聖堂へ足を運ぶ方がおかしい。予定を調整する侍従や警護を担うケイブたちの苦労が偲ばれる。
「わっ! おい、やめろ! ジュノ……!」
そのままぎゅっと懐深く抱き込まれる。
温かくていいにおいがして、リセルはおざなりに抵抗して見せながら、こっそりジュノビオを補給した。
「おい! その辺にしとけ!」
「殿下、人の目がありますので……」
エスメルとケイブに窘められて、ジュノビオはしぶしぶリセルを放す。とはいえ聖堂の中にいる人間は、領主と現場監督の親密さにだいぶ慣れてしまっている。見て見ぬふりが鉄則だ。
恐らく予定がぎっしり詰まっているのだろう。ジュノビオはそのまま、ケイブに引きずられるように連行されていった。
「聖堂の前じゃなくて、よかった」
ほっと胸を撫で下ろしたリセルの呟きに、眉を寄せたエスメルも同意して頷く。
興奮した女の子たちが卒倒しかねない。
屋敷で持たせてもらう昼食は毎日とても美味しい。今日のパンには確かチーズと、香辛料のきいた燻製肉が挟まっていたはずだ。
遅めの昼休憩が回って来て、紙袋を抱えたリセルは窓から裏庭へ抜け出した。聖堂の裏は野趣あふれる庭になっているのだが、高い塀に囲まれていて、本来は決められた扉からしか出入りできない。
裏庭の片隅には小さな礼拝堂があって、普段から祈りの場として使われていた。特に人目を避けて静かに祈りたい貴婦人たちにとっては、この礼拝堂を貸し切りで使うことが、格の高さと信心深さを表す一種の舞台装置になっているらしい。
「いつもの場所で食べるか……」
植え込みをかき分けて明るい木立を抜け、塀沿いに進む。木々に囲まれた小さな空間には、古い礎石がひとつ忘れ去られていて、腰を下ろすのに丁度いい。
しかし、リセルお気に入りのその場所には、すでに先客がいた。
塀の向こうから聖堂の巫女らしき女の声がする。
「……今礼拝堂を使われているのは、カイエス夫人?」
「そうだけど。妃殿下と似たような時間に頼んでおきながら、少し先に入ったのですって。あからさまよね。ぷりぷり怒りながら妃殿下の侍女が出て行ったわ」
「あら、可哀そう。じゃあ妃殿下が待ちぼうけ?」
先客はリセルに背を向けて、背筋をまっすぐ伸ばして佇んでいる。
「……妃殿下って、まだご懐妊の兆しがないの? もうご成婚から二年でしょ?」
「ダメみたいよ。まあ、不器量で不愛想と揃ってたら、無理もないわよね」
「ご健康そうだけど、そのうち廃されてしまうんじゃないかしら……」
砂利を踏む音がして、囁き合う女たちの声が遠ざかってゆく。
リセルはその場を離れようと、すり足で後ずさりした。
「精一杯考えて立ち回っているつもりでも、上手くいかないものね」
突然先客が振り向いて、リセルに薄く笑いかける。
まさか背後のリセルに気付いているとは思わなくて、心臓が口から飛び出そうになる。背中に目でもついているのだろうか。
「いや……行き当たりばったりの俺も、全然上手くいってないよ」
頭を掻きながらぼそぼそと返す。あんな噂話を一緒に聞かされた後では、どんな顔をしていいか分からない。
カリダは決して不器量ではない。素朴な顔立ちながら配置は整っているし、肌も体型も健康的で申し分ない。そばかすが少し高貴な雰囲気に合わないのと、表情が乏しいのがもったいないことくらいだ。
木漏れ日が揺れる真昼の裏庭で、静かに見つめ合った。
「私のこと、恨んでらっしゃらないの?」
静かに切り出したカリダの背筋は、相変わらず毅然と伸びている。
リセルは眩しくて苦笑しながら、ゆるく頭を振る。
「カリダの機転には感服するよ。頭がいいね。ただ、ナナを巻き込まないでほしかった」
「……そう」
カリダはひとつ頷いたきり黙り込む。何の感情も読み取れない。
「あのさ、ひとつ気になってたんだけど、あの時の女の人って演技だよな? まさか本当に乱暴されてたりしないよな?」
恐る恐る切り出したリセルに、カリダは眉をひそめて顔をゆがめた。努力して笑いをこらえているような、妙な表情だ。
「当たり前じゃない。あんなの演技に決まってるわ。男に貢ぐために同僚に借金をして、郷里に逃げ帰る寸前の侍女に依頼したのよ」
「そっか。なら良かった」
リセルはほっと胸を撫で下ろす。ずっと心の片隅に引っ掛かっていたのだ。巻き込まれた被害者でなくて安心した。
「……あなた、本当にお人好しね」
呆れたようにカリダが肩をすくめる。
褒められているのかけなされているのか分からなくて、リセルは天を仰いだ。腹が減っているのを思い出し、抱えた紙袋を示して誘ってみる。
「昼ご飯を食べにここへ来たんだ。カリダも食べる?」
「結構よ。どうぞお召し上がりになって」
ふいと視線を逸らしたカリダは、一筋の興味も示さずに礎石へ腰を下ろした。
かなり気まずい状況だが、気に入りの場所を譲ってたまるかという意地で、黙々とパンを齧った。さほど大きくもない礎石の端と端に腰掛けて、二人の間に静かな時間が流れる。
「……笑っても構わないわよ。さっきの話、聞いてらしたでしょう? 私、こちらの貴婦人たちに全く馴染めていないの。……嫌われてるのよ」
カリダが目を細めて、木々の間から覗く青い空を見上げる。
ひねくれた台詞の割には、不思議と拗ねた色はない。精一杯やったという言葉に嘘はないのだろう。
リセルは黙ってパンを平らげ、水筒のぬるい水を飲む。
「私……別に、お兄様がそれほど好きなわけじゃないの」
唐突にカリダが呟く。
妙に子供じみた物言いに、リセルは戸惑って目を瞬いた。嫁いで二年も経つというのに、いまだに“お兄様”と呼んでいること自体が奇妙だ。
「子供の頃は何度か一緒に遊んだけれど、成人してからは会うたびに悲しそうな顔をされるばかりで、どうしていいか分からなかった。でも、妃になることは決まっていたから、ふさわしい知識と振る舞いを身に着けるように努力はしたわ」
ちらりと寄越したカリダのまなざしとかち合う。
「だから、ありのままの姿でお兄様に愛されているあなたが、少し羨ましかったのは本当よ」
ほとんど何の表情もないまま、カリダは静かに語る。
背筋は相変わらずぴんと伸びて、膝の上で重ねた手は綺麗に揃っている。ひび割れた礎石が豪奢な布張りの椅子に見えてくる。
(これは……恋心なんて、欠片もないな……)
カリダはカリダなりに、妃という仕事と向き合うために力を尽くしたのだろう。その姿はまるで、大任を果たせず帰還した誇り高い騎士の様で、妙に切なかった。
カリダの茶色の瞳に木漏れ日が反射して、時折金色に光る。
「巫女の噂話もあながち的外れではないわ。お兄様は、式典の褒美に廃妃を願い出るのでしょう?」
「……なんで知ってんの? 本人から聞いたわけじゃないけど、たぶんそうだって……」
「それくらい分かるわよ。北部貴族がこぞって自分の娘を差し出したがっているんだもの」
きっぱり断言して遠くを見据えるカリダに、思わず舌を巻いた。礼拝堂で祈りを捧げることに心血を注ぐ、深窓の貴婦人の言動ではない。
リセルの動揺に気付いたように、カリダはほんの僅かに口角を上げる。
「私、フィオス家の長女なんかに生まれなかったら、結婚なんて絶対にしなかった。もっと知識を蓄えて、自分を生かせる場所を探していたわ」
リセルはその力強い言葉に、何気なく「アニヤみたいだ」と笑う。
「アニヤ?」
「うん。花刑を受けた仲間で、文武両道の豪快な女性がいるんだ。きっとカリダと気が合う」
本当に二人を会わせてみたくなって、リセルはくすくす笑う。
すると意外なことに、カリダが目をまん丸に見開いて、勢いよく身を乗り出した。この上なく上品ないい香りが、ふわりとリセルを包む。
「それって、アニヤベル・デシナ!?」
そばかすの浮いた頬が紅潮して、瞳はきらきらと光を放っている。
ため込んだ生命力が一気にあふれ出したような、美しいカリダの姿に見惚れながら、リセルは「さあ……?」と首を傾げる。
「女子教育の重要性を訴える書物を記した、アニヤベル・デシナ! 東部貴族の令嬢よ!」
「あ……うん。確か元貴族だったと思うけど。女性も役人に採用しろって言って、役所を襲ったって」
「ああ……すごいわ。生きてらしたのね……。投獄で全て禁書になったけれど、暗記するほど読んだわ」
頬に手を当ててうっとりと視線を彷徨わせるカリダは、まるで恋する乙女だ。
「……何かしら?」
リセルが凝視しているのにはたと気付いて、潤んだ目で睨んでくる。
「いや……、可愛いな、と思って」
「……っ!!」
カリダは声にならない叫び声を上げ、極めて優雅に地団太を踏んだ。
巫女の呼ばわる声が遠くから聞こえて、裾を払ったカリダが立ち上がる。
「三日後にこの身がどうなるか分からないけれど、今日はお話できて良かったわ」
あっという間に元の無表情に戻ってしまったが、どことなく声が明るい。
「俺は、それが心配なんだ。何か起るか分からない」
声を曇らせて紙袋を弄ぶリセルに、カリダが不思議そうに視線を落とす。
「どういうこと?」
「そのままだよ。皇帝がジュノのわがままを、素直に聞くとは思えない」
突然「妾になれ」と命じられた夜を思い出す。聞き流してくれればいいが、逆鱗に触れる可能性だってある。
「警備計画を見たら、聖堂の中は皇帝直属の騎士団しか入れないんだ。外には俺の仲間もジュノの兵もいるから、何かあったら踏み込めばいいんだけど、肝心の中の様子が分からないんじゃ意味ないし」
「あなたが中に入ればいいじゃない」
「それは考えたさ。でも当日朝に総点検されるから潜んでおくのも危険だし、お互い顔見知りの出席者に紛れるのは無理がある。……入口さえ突破できれば何とかなるんだけどな……」
ぎゅっと眉を寄せて腕を組んだリセルに、カリダは軽く首を傾げる。
見慣れるとかなり表情豊かだ。瞳の奥に好奇心と冒険心が光っている。
「あれなら、あなたにぴったりじゃなくて?」
カリダが指さした先には、木立をかき分け息をきらして駆けて来る、聖堂巫女の姿があった。
髪を結い上げて半分ほどをベールで覆い、額には銀細工の大きな飾りが揺れている。人の良さそうな若い巫女はカリダの顔を見るなり、半べそで眉を下げた。
「妃殿下……もう、お探し申し上げましたよ……!」
リセルは大喜びして、巫女の手を強く握る。
「ありがとう! 髪を切らずにいて良かったよ!」
額飾りを揺らした巫女は何のことやらさっぱり分からず、「ひっ」と息を飲んで顔を真っ赤に染めた。
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葉咲透織
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義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。
※個人ブログにも投稿済みです。
呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない
波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。
異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。
強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。
彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。
しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。
「俺に触れられるのは、お前だけだ」
呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。
となります。
【完結】最初で最後の恋をしましょう
関鷹親
BL
家族に搾取され続けたフェリチアーノはある日、搾取される事に疲れはて、ついに家族を捨てる決意をする。
そんな中訪れた夜会で、第四王子であるテオドールに出会い意気投合。
恋愛を知らない二人は、利害の一致から期間限定で恋人同士のふりをすることに。
交流をしていく中で、二人は本当の恋に落ちていく。
《ワンコ系王子×幸薄美人》
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。
村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました!
ありがとうございました!!
いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い
<あらすじ>
魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。
見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。
いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。
ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。
親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。
※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。
└性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
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※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
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