新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~

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EP04 鉄槌

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「って、話には聞いてたけど、本当に心の中からひとりでに名前が浮かんでくるんだ」

 私は今、マーシー・リブラと名乗った?それが私の魔法少女としての名前なんだ。そういう機能が術式にあって、変身の時に勝手に名乗りたくなると聞いていたが本当だったとは。何でも魔法として成立させるための儀式の一環という話だったか。

「グゥゥゥ」

 変身時のエネルギーフィールドのパワーが、敵を痺れさせて時間を稼いでくれている。その隙を見て、私は変身に成功したことを確認するため、身体を見回してみる。シンセリーのそれと雰囲気は似ている。スカートの広がったワンピースドレスだ。白を基調とした精緻ながらもさわやかな雰囲気がする。差し色はピンクになっていたり、肩が出ていたり、細かい違いはあるが、背中から二本の太めの帯が伸びていることは共通しているようだ。黒髪だった頭髪もピンクに変わっている。変身した先輩の黄色い髪は可愛いと思ったが私はどう見えるのか、後で確認しておこうと決める。魔法少女の戦闘に見た目はあまり影響しないが、可愛いに越したことはない。話の通り見た目は派手だけどちゃんと動きやすい。
 一番の変化はさっきとは比べ物にならないほどみなぎっている魔力だ。私の方は問題なく変身できているようだ。
 私のコンディションは確認できた。次は……。

「ノクスの方は大丈夫?」

黒いフード付きのマントに包まれたノクスの様子は判然としないが大丈夫だろうか?隙間からのぞく白と黒の装甲は影光勇者の二つ名にふさわしい感じだ。

「ああ、不思議な気分だ。さっきとは何もかも変わってるのに、それがスゲーしっくり来てる。これが俺の本当の姿なんだろうなって感じだ」

 さっき彼は、影光勇者ノクストスと名乗っていた、それが彼の勇者としての名前なのだろう。私がさっき付けたノクスの名前が入っているのはなぜだろう。少し気になるが今は置いておこう。

「動けそう?」

ノクストスからも、さっきとは比べ物にならないほどの高出力の魔力を感じている。彼が動けるなら、頼もしい味方になってくれそうだ。

「ああ、いける。戦えるイメージがスゲー湧いてくる」

 ノクストスは相手を見据えながら、そう答えてくれた。

「よし、まずは遮断フィールドを張ろう!」

「え?何それ?さすがに分からない」

フードの奥からのぞくツインアイの光がこちらを向く。

「さっきから感じるこの気持ちの悪い空間を取り払うための力だよ。あなたが、勇者ならたぶんできると思う」

 勇者の基礎機能として魔法の術式に組み込まれているらしい、反有機生命圏遮断フィールド。ここまで勇者っぽい彼が、やってできないはずはない。
 
「私があなたとリンクして、サポートする!イメージして!この気持ちの悪い周りのもやもやを振り払うイメージを!」

私は彼にステッキをかざして、学校で習ったとおりに精神のリンクを強めて自分の考えていること言いたいことをダイレクトに相手に伝えようとする。

「……!?……ああ、分かったやってみる!」

うまくいった。精神がリンクしていることまでしっかり理解してくれた彼は、私が授業で聞いていたことを実践してくれる。苦しくても、しっかり勉強していて本当によかった。

「自分の纏う空気を広げる」

 私もリンクを介して、彼の持つべきイメージを正解のものに近づける手伝いをする。

“ブオンッ”

「これか!この感覚か!」

なにかが震えるような音とともに彼がそう叫ぶ。すると彼を中心にドーム構造が広がるように、世界の彩度が元に戻っていった。

「ギガアァ!」

敵も自分にとって有利な環境をかき消され動揺しているようだ。

『皆さん!鋼魔との戦闘が始まっています!急ぎシェルターへの避難を!』

力場が消え、都市機能が復活したことで放送が再開される。これで、周囲の人も動けるようになって、安心して戦える。勇者は魔法少女とリンクしていなければ、遮断フィールドを広げられない。だから、アルニギアスだけでも回してもらうというやり方ができない。でも、勇者と魔法少女がここにそろったのなら、きっと勝てる。
 教官をはじめとした『組織』の人はどう私を見るだろうか、罰則だけでは済まなそうだが、もうここまで来たらやるしかない。

「ノクス……あの怪物の中には取り込まれてしまった人がいる!なるだけ私の魔法でダメージを与えたい」

「俺は攻撃するにしても外側の方の武器とかにしろってことか」

理解が早くて本当に助かる。魔法少女の使う魔法攻撃には、取り込まれた人の分離を促す力がある。人間側への負荷も避けられるので胴体部分への攻撃は魔法攻撃だけにしたい。

「俺が前に出て盾になる、ヒトミは本命の強烈なヤツを頼む」

「はい!」

奇しくもそれは教科書にあるような典型的な戦術だった。

「こっちからいく!」

ノクスはノコイタチに跳びかかっていく、ノコギリが危ないと思ったが彼は、器用に手を滑り込ませ両手首をつかんで見せた。

「ギガァ!?」

「すごっ!」

「今だ!ヒトミ!」

ノクスは私が攻撃しやすいように鋼魔獣を抑えてくれている。しかし……

「ギヤァ!!」

“ギャリギャリギャリギャリ!!”

鋼魔獣はノコギリの付け根をスライムのように伸ばす形で、高速回転する刃をノクスの両脇に押し付けている。聞き心地の悪い音が鳴り火花が散る。

「ノクスあぶな……」

「大丈夫だ……」

“ギュララララ……”

「ギュアァ!?」

刃こぼれしている……ノコギリの方が……ノクスには傷一つついていないのに。心なしか鋼魔獣の声も驚いて聞こえる。

「文字通り、歯が立たないってことか……はは、俺は案外頑丈らしい……」

揺らがぬ盾、私の勇者は何と頼もしいことか。

「よっ!」

ノクスは鋼魔獣ごと前後を入れ替え、鋼魔獣の背をこちらに向けさせてくれる。

「ふーっ……」

私は息を吐き、落ち着いて確実に狙う。奴の胎内で半ば流体化した人々を分離させるために、ステッキの先で魔力の刃を研ぎ澄ます。鋼魔獣の中に残る別の命を魔力を通して感じ、それを切り離すため……意識すべきは切る位置でなく、救い上げる命を意識で捉えること。私はなけなしの集中力をフル稼働させ……

「でえぇぇぇい!」

横一文字に振り抜く。ノコイタチは上下に両断され下半身は溶けて崩れ落ちていった。

“ボドボドボド!”

 地面に落ちた流体は人々の形に再形成される。

「よし!はあ!」

私は、もう一度魔力障壁を形成し、ノコイタチにタックルを仕掛ける。

「今度は、私が抑える!ノクスはその人たちを!」

「分かった!」

ノクスはいったん離脱し、救出した人々を抱えてシェルターの方へジャンプしていった。

“ギギギギッ!”

さっきの壁とは出力が違う。ピンクに変わった今度の壁にはヒビすら入らず、前に押し出すことすら可能になっている。私はビルの壁にノコイタチを押し付け挟む形で拘束する。

「ギィ!キェアーーー!」

動けない状況が続き、フラストレーションが爆発したのか、甲高い叫びをあげ竜巻を纏い、上方向へ逃げられる。

「今度はなにっ!?」

 ノコイタチは頭上をでたらめな軌道で、跳ね回わる。ビルの壁を衝突するたびに風の刃で抉るように損傷させていく。
 どこにそんな力があったのか。人を分離させ、感じる魔力も小さくなったというのに。むしろ重さが減ってスピードが増したとでもいうのか。

「ゴァアアアーーー!!!」

 周りに響く音が風の轟音が、ノコイタチの鳴き声かもうわからなくなってくる。今度は逆に私を風の壁で拘束しようとしているようだ。
 マズイ、磨り潰される。そう思った私は自分を囲むバリアを張る。瞬間、ノコイタチは私を中心にしたピンボールを始める。様々な方向からバリアに衝撃が走る。すぐに突破されることはないだろうが、このままでは時間の問題だ。
 
「ヒトミ!」

 名前を呼ばれ上を見る。ノクスがビルの上から飛び降りてくる。

「このぉ!」

そして彼はそのまま、ノコイタチに取り付いて見せる。

「ゴガァァァ!」

「マジかよ!……うぐっ!」

ノコイタチはまとわりつくノクスを気にも留めず、ピンボールを続ける。いやむしろ続けることで壁にノクスをぶつけて排除しようとしているのか。ノクスはぶつけられても離していないがいつまで持つか……。
打開しなければいけないこの状況を、何か強力な一手で。魔力弾はダメだ。私の腕ではあの速度で動き回るものには当てられない。魔力の剣もダメだ、敵だけを斬るような技量はとてもじゃないが私にはない。じゃあ、どうする?
 私の脳裏に一つのアイデアが浮かぶ。それは固有魔法だ。魔法少女の必殺技、私が養成学校でついに使えなかった力。私の体を調べた医者によると、私には固有魔法が存在しないのではなく、燃費が悪すぎて候補生レベルの魔力ではろくには発動できないという話だった。他の候補生は皆出来ていて……色んな要素が残念な私でも魔力量だけはそこそこある方と言われたにもかかわらずだ。
 でも契約を果たして、すごく増えた今の魔力なら?私の固有魔法はあまりに燃費が悪いらしく正直契約しても発動できるか怪しいという見解も聞いた。でもノクスと繋がって出せるようになった魔力は想像していたよりずっと大きい。
 もしかすると、もしかするかもしれない。どうせほかに手段はないし、賭けてみよう。私が意識を集中するとステッキが固有魔法を使用するための形態に変化する。ここまではできる。しかし、今まで私の手の中にあるのはただの【ピコピコハンマー】だった。このなんともファンシーな見た目のせいで馬鹿にされたりもした。星原さんのような勇ましいものとは違う。これで、何ができるかすらも分からない。でも今はこれが私のすべてだ。覚悟を決めよう。

「ノクス!切り札を使ってみる!一瞬だけでいいの、私の正面に誘導できる?」

「……うぐっ、やってみる!」

 ノクスの声は私を信じ切っていた。応えたい、この人の信頼に。それが今、私のなりたい私なんだ。

「はーっ!」

私は、あらん限りの魔力をハンマーに込め、両手で持って身体の後方で構える。

「いくぞっ!ヒトミィ!」

ノクスの声と同時に障壁を解除する。ノクスは身をよじって壁を蹴り、ノコイタチを持ってくる。後は私の仕事だ。

「うおぉぉぉぉ!」

 ノコイタチとすれ違う一瞬、私は叫びとともにハンマーを救い上げるように振り抜いて、その頭を打ち据える。

“ピコン♪”

 本当に自分でもバカみたいだと思うような音が鳴る。その衝突で敵の頭がつぶれるようなこともなかった。やはりだめか、そう諦めかけた時……。

“ズガンッ!!!”

 私の背後に跳んでいくと思ったノコイタチが、両者の重量からは考えられないほどの大きな音と振動を起こしながら慣性を無視して真下に堕ちる。

「うおっ!?なんだ?」

地面に激突する直前にノクスは飛び退く。さっきからすごい身のこなしだ。見た目的にも忍者だったりするの?

「グゲッ!」

まさにカエルを潰したようなうめき声を出して、ノコイタチは地面に押し付けられている。それどころか地面にめり込んでいるようだ。
 重くなっている?もしかして重力でも操っているのだろうか。

「ヒトミ!止めをっ!」

「はっ!うん!」

私はノクスの呼びかけで我に返り、ハンマーをステッキに戻して構える。どんな作用が働いているにしろ、相手は動けないのだからこのチャンスを逃してはいけない。

「吹き飛んで!」

 私は最大火力の魔力弾を、ゼロ距離で放つ。

「うおっ!?」

 鼓膜が破れるかと思うほどの爆音が鳴り、煙が視界を塞ぐ。ノクスがたじろぐ隣で私はステッキを向けたまま煙が晴れるのを待つ。

「……!」

視界が晴れるとそこにはむき出しになった核の玉があった。

「やったか?」

「ううん、まだ……」

まだゼロ化が残っている。私は残った仕事を果たそうと足を踏み出す。しかし、そこで視界が急速に暗くなる。

―あれ?―

そう疑問に思う暇もなく。私の意識は途切れた。
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