波のように生きてきた私へ ―仮死状態で生まれた命の記録―

cocohera

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第4章 母の背中――やさしさの源 ②

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小節2:背中の記憶――母の姿を追いかけて

母の背中は、私の記憶の中でいつも少し遠くにある。  
台所で立ち働く姿。  
洗濯物を抱えてベランダに向かう姿。  
誰かの話に耳を傾けながら、静かにうなずく姿。  
その背中は、言葉よりも多くのことを語っていた。

私は、母の背中を見て育った。  
何かを教えられたというより、何かを感じ取っていた。  
母が誰かにやさしくするとき、  
母が誰かの痛みに寄り添うとき、  
その姿勢が、私の中に静かに染み込んでいった。

母は、いつも忙しかった。  
でも、忙しさの中に「余白」があった。  
誰かのために立ち止まる余白。  
誰かの声に耳を傾ける余白。  
その余白が、私にはとても美しく見えた。

私は、母の背中を追いかけていた。  
同じように誰かにやさしくしたいと思った。  
同じように誰かの気持ちに気づける人になりたいと思った。  
その思いが、私の行動の根っこになっていった。

時には、母の背中が遠く感じることもあった。  
忙しさに追われて、話す時間が少ない日もあった。  
でも、母の背中は、いつも「私を見ている背中」だった。  
振り返らなくても、そこにある安心。  
それが、私の心を支えてくれていた。

今でも、誰かの背中を見ると、母を思い出す。  
誰かが黙って何かをしている姿に、私は心を動かされる。  
その静かな働きかけに、私は「やさしさの本質」を感じる。  
それは、母の背中が教えてくれたことだった。

母の背中は、私にとって「やさしさのかたち」だった。  
言葉ではなく、姿勢で伝えること。  
声ではなく、沈黙で寄り添うこと。  
そのすべてが、私の中に静かに根を張っている。
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