波のように生きてきた私へ ―仮死状態で生まれた命の記録―

cocohera

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第4章 母の背中――やさしさの源 ③

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小節3:母の声――言葉の奥にあるもの

母の声は、私の世界の背景音だった。  
朝の「起きていいよ」から、夜の「おやすみ」まで。  
その声があるだけで、私は安心して一日を始め、終えることができた。  
母の声は、大きくなく、静かで、でも芯があった。  
その響きが、私の心を整えてくれた。

怒るときも、母は叫ばなかった。  
低い声で、ゆっくりと話した。  
その語り口が、私には「信じているよ」というメッセージに聞こえた。  
だから私は、母に叱られるとき、悲しさよりも「まっすぐになりたい」という気持ちが湧いた。

母の声には、余白があった。  
言葉の間に、沈黙があった。  
その沈黙が、私の心に語りかけてきた。  
「どう思う?」と聞かれたとき、私は自分の気持ちを探すことができた。  
母の声は、私に「考える時間」をくれた。

時には、母の鼻歌が聞こえてきた。  
台所から、洗濯物を干すベランダから、夕暮れの部屋から。  
その歌声は、言葉にならない感情を運んでいた。  
私は、その音に耳を澄ませながら、母の気持ちを想像していた。  
その時間が、私の「人を感じる力」を育ててくれた。

母の声は、私の中に残っている。  
誰かに話しかけるとき、私は母の語り口をなぞっている。  
誰かの話を聞くとき、私は母の沈黙を思い出している。  
その記憶が、私の言葉をやさしくしてくれている。

今でも、母の声を思い出すと、心が静かになる。  
それは、私の中にある「やさしさの音源」なのだと思う。  
言葉の奥にあるもの。  
声の響きに宿るもの。  
それらが、私の命の深いところで、静かに息づいている。
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