毎朝俺の悲鳴から始まる!世話焼き幼馴染の溺愛治療

えなが つぐみ

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7-3 今からお前んち行ってもいい?

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8月の終わり。
昼間はまだ蒸し暑いけど、夜風はすっかり涼しくなっていた。
会社帰りの俺と優成は、並んでアパートへの道を歩いていた。
さっきコンビニで買ったビールが、袋の中でカチャカチャと音を立てている。


「そういや、塩野さん、なかなか仕事できる感じだな」
優成が歩きながら話を振ってきた。

「そうだね。
ちょっと軽いヤツだけど、気が利くし、要点つかむのも上手いよ」

「いい後輩じゃん」

「まーね」
俺は、フフンと鼻を鳴らした。
自分の後輩が褒められるって、案外嬉しいものなんだな。

「でも、お前も仕事してるとき格好良かったぞ」

「はえっ?」
優成の何気ない褒め言葉に一瞬変な声が出た。
ゴホンッ、と咳払いをして気を取り直すが、隣の優成は肩を揺らしていた。

「な、なんだよ。
格好いいなんて普段言われないから、ちょっと驚いただけだろ!」

「アハハ、ごめんごめん。
いや、世利の働いてる姿は格好いいよ」

「ほんとかよ……」
俺は口を尖らせて言い返した。
けど、まっすぐ褒められて胸がむず痒い感じだ。
街灯に照らされた優成の横顔が、いつもより色っぽく見えて落ち着かない。

優成は俺の顔を見ながらクスッと笑った。
「でも正直、意外だった。ちゃんと相手の話聞いて、段取りも押さえて……。
思った以上に頼りになるんだな」

「う……」
面と向かって言われると、嬉しいけど恥ずかしい。
俺はつい目を逸らしてしまった。
そして、反論してやろうという気持ちで優成に言い返した。

「べ、別に優成だって……!スーツ姿、カッコよかったし!」
自分で言ってから恥ずかしさに押しつぶされそうになる。

「……マジで?」
優成の低い声が胸に落ちる。

「ほ、ほら。いつものボサボサ頭とかジャージ姿でもないし」
恥ずかしさに負けて、俺は少しとぼけてみた。

「それはそうだろ、仕事なんだから。
お前だって素っ裸でパンティ被ってなかったじゃん」

「ぐっ……それは言わないで……」
朝の痴態を持ち出され、思わずうずくまりそうになった。

「忘れたくても忘れらんねぇ光景だからな」
優成はわざとらしくため息をつきながらも、口元は緩んでいる。

「くそ、一生の不覚……」

「アハハ!」


俺と優成は他愛ない話をしながら夜の道を歩き、いつの間にかアパートに帰ってきていた。

すると、エントランスのエレベーターの前で、優成が俺の腕を掴んできた。
俺は少し驚いて優成を振り返った。

「どうしたの?」

「今からお前の家行ってもいい?」
唐突な言葉に俺は目をぱちくりとさせた。

車のヘッドライトが、一瞬だけ俺たちの姿を照らして通り過ぎる。


「な、なんで……?」

「……ダメ?」
優成は俺の質問には答えなかったけど、ギラつきを隠しきれない目で俺を見つめてきた。

「うっ…………い、いいけど……」
心臓がドラムみたいに暴れているのに、俺は断ることができなかった。


エレベーターの扉が開く。
俺と優成は無言のまま乗り込み、ゆっくりと閉じていく扉を背にした。

「……な、なんで急に俺んち?」
俺は気まずさを誤魔化すように口を尖らせた。

「理由が欲しい?」
優成の返事は短い。
目線はまっすぐ俺に刺さって、冗談を言う余裕はどこにもなかった。

──ギュッ。
自然と、ビニール袋を握る手に力が入る。

「……お前んちで飲んでもいいじゃん」

「いや。……世利んちがいい」
低くて真剣な声に、心臓が跳ねた。

「ゔっ……」
思わず変な声が漏れる。


エレベーターが上に登るたびに、俺の心拍数も上がっていく。
アパートの四階に着く頃には、もうビールの缶より俺の手の方が冷えてた。

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