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13-2 本当のことを知りたいんだよ
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「元に……戻せる?」
優成は確認するように、俺の言葉を繰り返した。
俺は優成の目をまっすぐ見つめて頷く。
「いや、ちょっと待て。
なんでレイチェルは、俺のところじゃなくて世利のところに行ってるんだ?」
「それは……」
その理由は、正確にはわからなかったけど、たぶんレイチェルは優成に不信感を抱いているんだろう。
それに、優成が来ないことを知っていたかのような発言もあった……。
そんなことを今は優成に言えるはずもなく、俺は言葉を濁すことにした。
「俺の家に来た理由はわからないけど、俺は優成も誘ったんだよ」
「もしかして、昨日の話ってこれだったのか」
「うん。優成は仕事だったから、俺ひとりで聞くことにしたんだ」
「……そうだったのか」
優成は眉間にシワを寄せ、悔しそうに呟いた。
俺もはっきりとレイチェルのことを伝えなかったのがいけなかったけど、そんなことはもう後の祭りだ。
「優成、全部話すから聞いて──」
俺は、優成にレイチェルから聞いた魔法や呪いの話を細かく伝えた。
優成は話を聞きながら何度も驚きの声を上げていた。
「魔法や呪いなんて、嘘みたいな話だよな。
でも……実際にそうなってるから、信じるしかないんだよね」
俺は苦笑いを浮かべながら優成を見つめた。
話を聞き終わった優成は、何と言っていいかわからないような困惑した表情だった。
そりゃそうだ、こんな嘘みたいな話を聞けば、そんな顔にもなるだろう。
優成とは対象的に、俺は話ができて少しスッキリした気持ちだった。
「世利は……俺の告白の答えを出せば、もとに戻るのか?」
優成が震えたような声で俺に聞いた。
「そうみたいだよ」
「…………もう、答えは出てるのか?」
優成の弱気な視線が俺に向けられた。
俺はすぐに返事ができずに、ただ優成と見つめ合う。
テーブルの上にあるグラスの水滴が、音もなく一筋落ちていった。
俺は、乾いた喉の奥にある本音を、心臓の音と共に隠していた。
まだ俺の心に、ひっかかっている思いがある。
俺は一つ息を吸った。
「まだ、答えは出してないよ。
優成に、聞かなきゃいけないことがあるから」
「……なに?」
優成の喉仏が上下に動いた。
俺は、今日偶然に聞いた佐々山さんとの会話を、もう一度頭の中で思い出した。
『高藤さん、ずっと恋人を作らないのって、なんででしょう』
このことだけは、俺が直接確認しなければいけないんだ。
俺は暴れる鼓動を落ち着かせるように、胸に手を当ててから、ゆっくりと優成を見つめた。
「優成って、今まで恋人、いたよね?」
「え?」
その瞬間、優成の体が僅かに揺れた。
俺の質問が意外だったのか、それとも他に何か思い当たることがあるのか──
「俺、何人か優成と一緒にいるの見たことあるよ。
それに、優成も『恋人だ』って言ってたよね?」
「うん」
「じゃあ、なんで佐々山さんにはずっと恋人はいないって言ったの?」
「……っ?!」
『佐々山さん』という具体的な名前を出すと、優成が目を見開いて息を呑むのがわかった。
いつも冷静な優成が、あきらかに動揺を隠せなくなっている。
「それは……」
目を泳がせて、何か言葉を探すように優成は口を開いた。
それでもその後の言葉は続かず、口を開いたり閉じたりとしている。
「優成」
俺はできるかぎり優しい声で優成に話しかけた。
「俺は別に優成を追い詰めたいわけじゃないんだ。
ただ、本当のことを知りたいんだよ」
俺が知っている“恋人がいた優成”と、佐々山さんが言っていた“ずっと恋人がいない優成”。
優成は、俺か佐々山さんに嘘をついている。
この真実がわからない限り、俺はこの先、優成を信じることができないと思う。
──優成、答えてくれ
もう完全に下を向いている優成。
その肩が強張っているように見える。
たまに外から聞こえるエンジン音だけが、俺たちに息をする間を与えてくれた。
俺はベッドに座りながら、優成の言葉を待った。
「俺は、最低なやつだから……。
本当のことを知ったら、きっと世利は俺を嫌いになる」
優成が発した言葉は、思ったよりはっきりと俺の耳に届いた。
優成は確認するように、俺の言葉を繰り返した。
俺は優成の目をまっすぐ見つめて頷く。
「いや、ちょっと待て。
なんでレイチェルは、俺のところじゃなくて世利のところに行ってるんだ?」
「それは……」
その理由は、正確にはわからなかったけど、たぶんレイチェルは優成に不信感を抱いているんだろう。
それに、優成が来ないことを知っていたかのような発言もあった……。
そんなことを今は優成に言えるはずもなく、俺は言葉を濁すことにした。
「俺の家に来た理由はわからないけど、俺は優成も誘ったんだよ」
「もしかして、昨日の話ってこれだったのか」
「うん。優成は仕事だったから、俺ひとりで聞くことにしたんだ」
「……そうだったのか」
優成は眉間にシワを寄せ、悔しそうに呟いた。
俺もはっきりとレイチェルのことを伝えなかったのがいけなかったけど、そんなことはもう後の祭りだ。
「優成、全部話すから聞いて──」
俺は、優成にレイチェルから聞いた魔法や呪いの話を細かく伝えた。
優成は話を聞きながら何度も驚きの声を上げていた。
「魔法や呪いなんて、嘘みたいな話だよな。
でも……実際にそうなってるから、信じるしかないんだよね」
俺は苦笑いを浮かべながら優成を見つめた。
話を聞き終わった優成は、何と言っていいかわからないような困惑した表情だった。
そりゃそうだ、こんな嘘みたいな話を聞けば、そんな顔にもなるだろう。
優成とは対象的に、俺は話ができて少しスッキリした気持ちだった。
「世利は……俺の告白の答えを出せば、もとに戻るのか?」
優成が震えたような声で俺に聞いた。
「そうみたいだよ」
「…………もう、答えは出てるのか?」
優成の弱気な視線が俺に向けられた。
俺はすぐに返事ができずに、ただ優成と見つめ合う。
テーブルの上にあるグラスの水滴が、音もなく一筋落ちていった。
俺は、乾いた喉の奥にある本音を、心臓の音と共に隠していた。
まだ俺の心に、ひっかかっている思いがある。
俺は一つ息を吸った。
「まだ、答えは出してないよ。
優成に、聞かなきゃいけないことがあるから」
「……なに?」
優成の喉仏が上下に動いた。
俺は、今日偶然に聞いた佐々山さんとの会話を、もう一度頭の中で思い出した。
『高藤さん、ずっと恋人を作らないのって、なんででしょう』
このことだけは、俺が直接確認しなければいけないんだ。
俺は暴れる鼓動を落ち着かせるように、胸に手を当ててから、ゆっくりと優成を見つめた。
「優成って、今まで恋人、いたよね?」
「え?」
その瞬間、優成の体が僅かに揺れた。
俺の質問が意外だったのか、それとも他に何か思い当たることがあるのか──
「俺、何人か優成と一緒にいるの見たことあるよ。
それに、優成も『恋人だ』って言ってたよね?」
「うん」
「じゃあ、なんで佐々山さんにはずっと恋人はいないって言ったの?」
「……っ?!」
『佐々山さん』という具体的な名前を出すと、優成が目を見開いて息を呑むのがわかった。
いつも冷静な優成が、あきらかに動揺を隠せなくなっている。
「それは……」
目を泳がせて、何か言葉を探すように優成は口を開いた。
それでもその後の言葉は続かず、口を開いたり閉じたりとしている。
「優成」
俺はできるかぎり優しい声で優成に話しかけた。
「俺は別に優成を追い詰めたいわけじゃないんだ。
ただ、本当のことを知りたいんだよ」
俺が知っている“恋人がいた優成”と、佐々山さんが言っていた“ずっと恋人がいない優成”。
優成は、俺か佐々山さんに嘘をついている。
この真実がわからない限り、俺はこの先、優成を信じることができないと思う。
──優成、答えてくれ
もう完全に下を向いている優成。
その肩が強張っているように見える。
たまに外から聞こえるエンジン音だけが、俺たちに息をする間を与えてくれた。
俺はベッドに座りながら、優成の言葉を待った。
「俺は、最低なやつだから……。
本当のことを知ったら、きっと世利は俺を嫌いになる」
優成が発した言葉は、思ったよりはっきりと俺の耳に届いた。
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