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18-3 未来の約束をしよう
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「はあ……???」
優成は完全にフリーズしたまま、俺の顔と、握られた自分の手を交互に見ていた。
──いや、顔怖っ……。
考え事をしているだけなのに、知らない人が見たら本気でキレていると誤解されそうな迫力だ。
「結婚しようよ」
改めて口にした瞬間、優成の体がびくりと揺れた。
「ちょ、待て待て待て……」
ようやく声を絞り出したかと思うと、右手を振って俺を制止する。
「話が……急すぎるだろ……」
「そう?」
俺は首を傾げた。
「俺の中では、ちゃんと予定どおりなんだけどな」
「予定どおり……?俺は今、頭ん中パンクしそうなんだっての!」
裏返った声に、思わず苦笑しそうになる。
それでも俺は、握った手を離さなかった。
「結婚……嫌だった?」
「そういう訳じゃなくて……それ以前の問題だ」
優成は視線を逸らしたまま、言葉を続ける。
「俺はまだ、呪いの代償についてちゃんと理解できてない」
「……十年分の友情がなくなったって部分?」
「いや、それは……なんとなく、わかった」
思わず目を見開いた。
俺にはまるで実感できなかった感情を、優成はほんの少しの説明で理解してしまっている。
「実感、あるの?」
そう聞くと、優成は小さく頷いた。
「俺が抱えてた友情は恋人になった瞬間に消えた。
もう二度と元には戻らない……そういう感情だったのは、間違いない」
はっきり言い切る声とは裏腹に、その表情はどこか寂しそうだった。
「……そっか」
優成が積み重ねてきた十年は、俺には簡単に理解できるものじゃない。
そう、改めて思い知らされる。
でも──きっと、それでいいんだ
俺が違う感情を持っていることこそが、今は意味を持つ。
「逆に、なんでまだ友情が残ってるのかわからない。俺たち……恋人だよな?」
「……え?」
予想していなかった言葉に俺の声が上擦った。
「恋人になると……友情って、なくなるの?」
「違うのか?」
今度は優成が、戸惑った表情を浮かべる。
そのまま、時間が止まったみたいに沈黙が落ちた。
「……恋人って、友達みたいな感情じゃなくなるってこと?」
俺は喉から言葉を絞り出す。
「俺は、スパッと切り替わった気がしてる。 ……世利は、違うんだな」
「うん、俺は……」
指先が、少しだけ冷たかった。
それを誤魔化すように、重ねた右手に力を込める。
「俺は、ずっと気持ちが続いてる。
出会ったときから今までが、一本の線で繋がってるみたいに」
気づけば、必死だった。
「恋人になったからって、そこで途切れるわけじゃなくて。
むしろ“恋人”って関係が、その線を太くしていく感じで……!」
拙い言葉でも、優成は遮らず、静かに聞いてくれていた。
「関係は変わってもさ。これからもずっと、優成の一番近くで笑ってたいんだ」
俺は大きく息を吸い、少し間を置いて続けた。
「……優成にも安心して隣で笑っててほしい」
「嫌われたくないとか、失いたくないとか。 そんな不安、感じなくていいくらいの安心感をあげたい」
「それが……俺なりの、友情を失った優成への答えなんだ」
「世利……俺は──」
「それとだな!」
「……まだあんのかよ」
「優成さ、俺に嫌われたくないって言うけどさ……」
一気に息を吸って──
「俺だって同じだからな!! なんなら俺の方が、お前がいなくなったら生きていけないからな!!!」
「…………」
「…………」
「……ぶっ……ぶはっ!」
突然、優成が吹き出した。
「っな?!笑うなよ、俺本気だぞ!!」
「ハハ、ごめん。お前が必死に伝えてくれるのが嬉しくて……嬉しくて……っ……」
目に涙を溜めながら微笑む優成。
「優成……」
静かに肩を震わせる優成に、俺は戸惑ってしまった。
──優成が泣くところ、初めて見た……
俺は左手で、優成の頬に流れる一筋の涙を拭いた。
そして、目をまっすぐ見つめ、優しく語りかけた。
「なぁ、優成。俺と未来の約束をしよう」
「っ……約束?」
「うん、呪いの代償に打ち勝てるくらいの、強い約束を俺と結ぼう」
一瞬、音が消えたみたいに静かになった。
エアコンの風の音だけが、やけに遠くで鳴っている。
「……」
優成は何か言おうとして、口を開きかけて──
でも、言葉が出てこないみたいだった。
自分の手の甲でまぶたを擦り、小さく息を吐いた。
「……馬鹿だな、お前」
そして、ゆっくりと顔を上げたときには、もういつもの優成に戻っていた。
俺を見下ろしながら、口角を僅かに上げた。
「俺が世利から離れるわけないだろ」
「結婚上等だ。逃げ場なんて、もういらねーよ」
優成の言葉を聞いた瞬間、俺の胸の奥がギュウッと締め付けられた。
気づいたら、目からボロボロと涙が溢れていた。
「うっ……うぅ……ゆうせぇ……。
おれ、おれぇ……しあわぜにするがらぁ……!」
「ぶっ……お前、泣きすぎだろ。鼻水まで出てるぞ」
優成はティッシュを一枚取って、俺の鼻水を拭いてくれた。
いつの間にか、繋がれていた手は離れていたけど、さっきよりも心の距離が近くなった気がする。
「世利、ありがとな。
俺の方こそ、お前を幸せにしたい」
「ゔんっ!」
「ぐふっ……締まらねぇな、お前の顔」
しばらく俺の顔を見て笑っていた優成は、少しだけ神妙な表情になり口を開いた。
「まぁ結婚って言っても、俺たちは同性だからパートナーってやつになるのか?」
真面目な話に、俺も鼻水をチーンとかんでから答えた。
「そのことだけど、実は役所に行って話を聞いてきたんだ」
「え?世利、一人で?」
「まずは話だけ聞いておこうと思ってさ。
詳しく書いてある書類貰ってきたから、優成も見てよ」
俺はすぐに立ち上がり、壁の隅に置いてある封筒を取ろうとした。
「うわっ……」
その時だった、慌てていた俺は手前にある紙袋を蹴ってしまった。
すると、袋の中身がゴロゴロと飛び出した。
「あーーーっ!」
俺は急いで腕の中に隠してたけど、時すでに遅かった。
「おまっ……それ……」
「あ、あはは……見ちゃった?」
「な、なんだその……」
優成が震える指先を俺に向けた。
「大量のアダルトグッズは!?」
俺の腕の中には、多種多様なお尻開発グッズが抱えられていた。
優成は完全にフリーズしたまま、俺の顔と、握られた自分の手を交互に見ていた。
──いや、顔怖っ……。
考え事をしているだけなのに、知らない人が見たら本気でキレていると誤解されそうな迫力だ。
「結婚しようよ」
改めて口にした瞬間、優成の体がびくりと揺れた。
「ちょ、待て待て待て……」
ようやく声を絞り出したかと思うと、右手を振って俺を制止する。
「話が……急すぎるだろ……」
「そう?」
俺は首を傾げた。
「俺の中では、ちゃんと予定どおりなんだけどな」
「予定どおり……?俺は今、頭ん中パンクしそうなんだっての!」
裏返った声に、思わず苦笑しそうになる。
それでも俺は、握った手を離さなかった。
「結婚……嫌だった?」
「そういう訳じゃなくて……それ以前の問題だ」
優成は視線を逸らしたまま、言葉を続ける。
「俺はまだ、呪いの代償についてちゃんと理解できてない」
「……十年分の友情がなくなったって部分?」
「いや、それは……なんとなく、わかった」
思わず目を見開いた。
俺にはまるで実感できなかった感情を、優成はほんの少しの説明で理解してしまっている。
「実感、あるの?」
そう聞くと、優成は小さく頷いた。
「俺が抱えてた友情は恋人になった瞬間に消えた。
もう二度と元には戻らない……そういう感情だったのは、間違いない」
はっきり言い切る声とは裏腹に、その表情はどこか寂しそうだった。
「……そっか」
優成が積み重ねてきた十年は、俺には簡単に理解できるものじゃない。
そう、改めて思い知らされる。
でも──きっと、それでいいんだ
俺が違う感情を持っていることこそが、今は意味を持つ。
「逆に、なんでまだ友情が残ってるのかわからない。俺たち……恋人だよな?」
「……え?」
予想していなかった言葉に俺の声が上擦った。
「恋人になると……友情って、なくなるの?」
「違うのか?」
今度は優成が、戸惑った表情を浮かべる。
そのまま、時間が止まったみたいに沈黙が落ちた。
「……恋人って、友達みたいな感情じゃなくなるってこと?」
俺は喉から言葉を絞り出す。
「俺は、スパッと切り替わった気がしてる。 ……世利は、違うんだな」
「うん、俺は……」
指先が、少しだけ冷たかった。
それを誤魔化すように、重ねた右手に力を込める。
「俺は、ずっと気持ちが続いてる。
出会ったときから今までが、一本の線で繋がってるみたいに」
気づけば、必死だった。
「恋人になったからって、そこで途切れるわけじゃなくて。
むしろ“恋人”って関係が、その線を太くしていく感じで……!」
拙い言葉でも、優成は遮らず、静かに聞いてくれていた。
「関係は変わってもさ。これからもずっと、優成の一番近くで笑ってたいんだ」
俺は大きく息を吸い、少し間を置いて続けた。
「……優成にも安心して隣で笑っててほしい」
「嫌われたくないとか、失いたくないとか。 そんな不安、感じなくていいくらいの安心感をあげたい」
「それが……俺なりの、友情を失った優成への答えなんだ」
「世利……俺は──」
「それとだな!」
「……まだあんのかよ」
「優成さ、俺に嫌われたくないって言うけどさ……」
一気に息を吸って──
「俺だって同じだからな!! なんなら俺の方が、お前がいなくなったら生きていけないからな!!!」
「…………」
「…………」
「……ぶっ……ぶはっ!」
突然、優成が吹き出した。
「っな?!笑うなよ、俺本気だぞ!!」
「ハハ、ごめん。お前が必死に伝えてくれるのが嬉しくて……嬉しくて……っ……」
目に涙を溜めながら微笑む優成。
「優成……」
静かに肩を震わせる優成に、俺は戸惑ってしまった。
──優成が泣くところ、初めて見た……
俺は左手で、優成の頬に流れる一筋の涙を拭いた。
そして、目をまっすぐ見つめ、優しく語りかけた。
「なぁ、優成。俺と未来の約束をしよう」
「っ……約束?」
「うん、呪いの代償に打ち勝てるくらいの、強い約束を俺と結ぼう」
一瞬、音が消えたみたいに静かになった。
エアコンの風の音だけが、やけに遠くで鳴っている。
「……」
優成は何か言おうとして、口を開きかけて──
でも、言葉が出てこないみたいだった。
自分の手の甲でまぶたを擦り、小さく息を吐いた。
「……馬鹿だな、お前」
そして、ゆっくりと顔を上げたときには、もういつもの優成に戻っていた。
俺を見下ろしながら、口角を僅かに上げた。
「俺が世利から離れるわけないだろ」
「結婚上等だ。逃げ場なんて、もういらねーよ」
優成の言葉を聞いた瞬間、俺の胸の奥がギュウッと締め付けられた。
気づいたら、目からボロボロと涙が溢れていた。
「うっ……うぅ……ゆうせぇ……。
おれ、おれぇ……しあわぜにするがらぁ……!」
「ぶっ……お前、泣きすぎだろ。鼻水まで出てるぞ」
優成はティッシュを一枚取って、俺の鼻水を拭いてくれた。
いつの間にか、繋がれていた手は離れていたけど、さっきよりも心の距離が近くなった気がする。
「世利、ありがとな。
俺の方こそ、お前を幸せにしたい」
「ゔんっ!」
「ぐふっ……締まらねぇな、お前の顔」
しばらく俺の顔を見て笑っていた優成は、少しだけ神妙な表情になり口を開いた。
「まぁ結婚って言っても、俺たちは同性だからパートナーってやつになるのか?」
真面目な話に、俺も鼻水をチーンとかんでから答えた。
「そのことだけど、実は役所に行って話を聞いてきたんだ」
「え?世利、一人で?」
「まずは話だけ聞いておこうと思ってさ。
詳しく書いてある書類貰ってきたから、優成も見てよ」
俺はすぐに立ち上がり、壁の隅に置いてある封筒を取ろうとした。
「うわっ……」
その時だった、慌てていた俺は手前にある紙袋を蹴ってしまった。
すると、袋の中身がゴロゴロと飛び出した。
「あーーーっ!」
俺は急いで腕の中に隠してたけど、時すでに遅かった。
「おまっ……それ……」
「あ、あはは……見ちゃった?」
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