毎朝俺の悲鳴から始まる!世話焼き幼馴染の溺愛治療

えなが つぐみ

文字の大きさ
49 / 50

18-3 未来の約束をしよう

しおりを挟む
「はあ……???」
優成は完全にフリーズしたまま、俺の顔と、握られた自分の手を交互に見ていた。

──いや、顔怖っ……。
考え事をしているだけなのに、知らない人が見たら本気でキレていると誤解されそうな迫力だ。


「結婚しようよ」
改めて口にした瞬間、優成の体がびくりと揺れた。

「ちょ、待て待て待て……」
ようやく声を絞り出したかと思うと、右手を振って俺を制止する。
「話が……急すぎるだろ……」

「そう?」
俺は首を傾げた。
「俺の中では、ちゃんと予定どおりなんだけどな」

「予定どおり……?俺は今、頭ん中パンクしそうなんだっての!」
裏返った声に、思わず苦笑しそうになる。
それでも俺は、握った手を離さなかった。

「結婚……嫌だった?」

「そういう訳じゃなくて……それ以前の問題だ」
優成は視線を逸らしたまま、言葉を続ける。
「俺はまだ、呪いの代償についてちゃんと理解できてない」

「……十年分の友情がなくなったって部分?」

「いや、それは……なんとなく、わかった」
思わず目を見開いた。
俺にはまるで実感できなかった感情を、優成はほんの少しの説明で理解してしまっている。

「実感、あるの?」
そう聞くと、優成は小さく頷いた。

「俺が抱えてた友情は恋人になった瞬間に消えた。
もう二度と元には戻らない……そういう感情だったのは、間違いない」
はっきり言い切る声とは裏腹に、その表情はどこか寂しそうだった。

「……そっか」
優成が積み重ねてきた十年は、俺には簡単に理解できるものじゃない。
そう、改めて思い知らされる。

でも──きっと、それでいいんだ

俺が違う感情を持っていることこそが、今は意味を持つ。


「逆に、なんでまだ友情が残ってるのかわからない。俺たち……恋人だよな?」

「……え?」
予想していなかった言葉に俺の声が上擦った。
「恋人になると……友情って、なくなるの?」

「違うのか?」
今度は優成が、戸惑った表情を浮かべる。

そのまま、時間が止まったみたいに沈黙が落ちた。

「……恋人って、友達みたいな感情じゃなくなるってこと?」
俺は喉から言葉を絞り出す。

「俺は、スパッと切り替わった気がしてる。 ……世利は、違うんだな」

「うん、俺は……」
指先が、少しだけ冷たかった。
それを誤魔化すように、重ねた右手に力を込める。
「俺は、ずっと気持ちが続いてる。 
出会ったときから今までが、一本の線で繋がってるみたいに」

気づけば、必死だった。

「恋人になったからって、そこで途切れるわけじゃなくて。 
むしろ“恋人”って関係が、その線を太くしていく感じで……!」
拙い言葉でも、優成は遮らず、静かに聞いてくれていた。

「関係は変わってもさ。これからもずっと、優成の一番近くで笑ってたいんだ」
俺は大きく息を吸い、少し間を置いて続けた。

「……優成にも安心して隣で笑っててほしい」
「嫌われたくないとか、失いたくないとか。 そんな不安、感じなくていいくらいの安心感をあげたい」
「それが……俺なりの、友情を失った優成への答えなんだ」

「世利……俺は──」

「それとだな!」

「……まだあんのかよ」

「優成さ、俺に嫌われたくないって言うけどさ……」

一気に息を吸って──

「俺だって同じだからな!! なんなら俺の方が、お前がいなくなったら生きていけないからな!!!」

「…………」

「…………」

「……ぶっ……ぶはっ!」
突然、優成が吹き出した。

「っな?!笑うなよ、俺本気だぞ!!」

「ハハ、ごめん。お前が必死に伝えてくれるのが嬉しくて……嬉しくて……っ……」
目に涙を溜めながら微笑む優成。

「優成……」
静かに肩を震わせる優成に、俺は戸惑ってしまった。
──優成が泣くところ、初めて見た……

俺は左手で、優成の頬に流れる一筋の涙を拭いた。
そして、目をまっすぐ見つめ、優しく語りかけた。

「なぁ、優成。俺と未来の約束をしよう」

「っ……約束?」

「うん、呪いの代償に打ち勝てるくらいの、強い約束を俺と結ぼう」

一瞬、音が消えたみたいに静かになった。
エアコンの風の音だけが、やけに遠くで鳴っている。

「……」
優成は何か言おうとして、口を開きかけて──
でも、言葉が出てこないみたいだった。
自分の手の甲でまぶたを擦り、小さく息を吐いた。

「……馬鹿だな、お前」
そして、ゆっくりと顔を上げたときには、もういつもの優成に戻っていた。
俺を見下ろしながら、口角を僅かに上げた。

「俺が世利から離れるわけないだろ」
「結婚上等だ。逃げ場なんて、もういらねーよ」

優成の言葉を聞いた瞬間、俺の胸の奥がギュウッと締め付けられた。
気づいたら、目からボロボロと涙が溢れていた。
「うっ……うぅ……ゆうせぇ……。
おれ、おれぇ……しあわぜにするがらぁ……!」

「ぶっ……お前、泣きすぎだろ。鼻水まで出てるぞ」
優成はティッシュを一枚取って、俺の鼻水を拭いてくれた。

いつの間にか、繋がれていた手は離れていたけど、さっきよりも心の距離が近くなった気がする。

「世利、ありがとな。
俺の方こそ、お前を幸せにしたい」

「ゔんっ!」

「ぐふっ……締まらねぇな、お前の顔」


しばらく俺の顔を見て笑っていた優成は、少しだけ神妙な表情になり口を開いた。
「まぁ結婚って言っても、俺たちは同性だからパートナーってやつになるのか?」

真面目な話に、俺も鼻水をチーンとかんでから答えた。
「そのことだけど、実は役所に行って話を聞いてきたんだ」

「え?世利、一人で?」

「まずは話だけ聞いておこうと思ってさ。
詳しく書いてある書類貰ってきたから、優成も見てよ」

俺はすぐに立ち上がり、壁の隅に置いてある封筒を取ろうとした。

「うわっ……」
その時だった、慌てていた俺は手前にある紙袋を蹴ってしまった。
すると、袋の中身がゴロゴロと飛び出した。

「あーーーっ!」
俺は急いで腕の中に隠してたけど、時すでに遅かった。

「おまっ……それ……」

「あ、あはは……見ちゃった?」

「な、なんだその……」
優成が震える指先を俺に向けた。
「大量のアダルトグッズは!?」
俺の腕の中には、多種多様なお尻開発グッズが抱えられていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

ばぶばぶ保育園 連載版

雫@不定期更新
BL
性癖全開注意で書いていたばぶばぶ保育園を連載で書くことにしました。内容としては子供から大人までが集まるばぶばぶ保育園。この園ではみんなが赤ちゃんになれる不思議な場所。赤ちゃん時代に戻ろう。

先輩、可愛がってください

ゆもたに
BL
棒アイスを頬張ってる先輩を見て、「あー……ち◯ぽぶち込みてぇ」とつい言ってしまった天然な後輩の話

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

処理中です...