婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜

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85話

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えーっと.......?

一体何が起こっているんでしょう?

お兄様は私の目の前で膝をついていて........それで結婚して欲しいと.......。

い、いや、でもそんなのはありえませんわ。

だってお兄様が私に結婚を申し込むなんて.......。

きっと、私がそうであって欲しい、と妄想してしまっただけですわよね。

そう思ってお兄様を見ると

「急にこんなことを言ってもシャルを困らせるだけだよね」

とお兄様は悲しそうに苦笑しましたわ。

そこで、やっとこれは現実なんだ、と理解できたんですが

「え....えぇ!?」

咄嗟そんな声が出てしまいましたが、思った以上に間抜けな声で、なんだか自分でも笑ってしまいそうになりましたよ。

恥ずかしいですわ..........。

なんて思いながら、苦笑しているお兄様に

「そんなの、お父様もお母様も反対するに決まっていますわよ!」

そう言って、お兄様に握られた手を解こうととしたんですが、お兄様は

「その2人は大丈夫だよ」

というだけで、なかなか手を離してくれませんわ。

しかも、その2人は大丈夫、ってどういう意味ですの?

お父様はあんなにも私とお兄様が結婚することに関して反対、と言いますか何も興味を示さなかったじゃないですか。

それに、お母様だって私に婚約を勧める様なことを言っていましたし。

色んなことが頭の中を過るなか、お兄様は

「俺はシャルの意思を知りたいんだ」

と言って、握っていた手に少し力を込めました。

「私の.........」

つ呟いた時に手に意識を集中させると、なんだかお兄様の手が震えているのに気付きましたわ。

お兄様だって、こんな大事な話をしているんですから緊張しないわけがありませんわよね。

でも、そんな中でもお兄様は私の意思を尊重しようと思ってくれているのが伝わってきますわ。

お兄様と結婚する私の夢でもありますし、今でも出来ることならしたい、と思っています。

その気持ちは婚約者が出来ても出来なくても変わったことはありませんでしたわ。

ですが

「その......お兄様は良いんですの?私と結婚することになって..........」

急にこんな話をしてくる、ということはお兄様の意思はどうなんだ、と気になりますわ。

だって、今まで私の気持ちを全面的に出して伝えていたのに、思いっきり無視されていましたもの。

お兄様が私のことを好きではないけど、相手がいないから仕方なく、ということだったら悲しいですわ。

そう思いながら恐る恐る聞いたんですが、お兄様は考える素振りも見せず

「もちろん」

と即答して微笑んでくれました。

その微笑みは、アンナ様の前で見せていたような笑みではなく、とても優しくて私の大好きなお兄様の笑みですわ。

だったら、悩むことなんてありませんわよね。

そう思った私は

「よろしくお願いしますわ」

と言って、お兄様に思いっきり抱き着きました。

膝をついていたせいもあって、お兄様はバランスを崩してしまっていたんですが、今まで私の告白をとことん無視し続けたんです。

怒らないでくださいね。
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