婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

84話

アンナ様の話の後は、特に普段と変わらない、他愛のない話をして食事が終わりましたわ。

明日は普通に登校しないといけないので、こんなことがあった後でもしっかりと予習しないといけないのが億劫ですわね。

私の婚約もどうなるのかわかりませんし、お母様も何も言ってこなかったですしね。

お母様は一体何を考えているんでしょう？

そう思いながら部屋に戻るため、廊下を歩いていると後ろから

「シャル」

と声をかけられましたわ。

さっきも話したばかりなので、少し驚きましたが、

「どうしましたの？」

と振り返ると、そこにはお兄様が立っていて、なんだか真剣な顔をしていますわ。

どうしたんでしょう？

メイドに謝ってきた、とかそんな話でしょうか？

なんて思っていると

「さっき部屋に行ったときに話せなかったから.....今少し良いかな？」

と言って、温室の方をチラッと見ましたわ。

つまり、温室で話がしたい、ということですわね。

正直、ここ最近はアンナ様が毎回温室を使っていたので庭園にして欲しかったですが、夜は冷えますし仕方ありませんわね。

なんて思いながら

「えぇ、大丈夫ですわ」

と言って2人で温室へと移動しました。

本当にどうしたんでしょう？

お兄様と話をしていなかったとはいえ、ずっと無言ですし、なんだかこっちまで真剣な顔になってしまいますわ。

そう思いながら正面に座るお兄様を見ると、真剣な顔をしている後ろでは、庭師が丁寧に仕事をしてくれたおかげで綺麗に咲いている薔薇たちが見えますわ。

そのおかげで、なんだかお兄様もいつも以上にカッコよく見えるという現象が.......い、いや、そんなことを考えてはいけませんわ。

きっとお兄様は今から真剣な話をすると思いますし。

そう思って、フワフワとした気持ちをなんとか静めて

「それで、話と言うのはなんですの？」

とお兄様に尋ねると、悩んでいるのか少しの間の後に

「あのさ.......」

と話し始めましたわ。

お兄様は真剣な表情を崩さないまま、

「これはアンナ嬢との婚約がなくなったから、とか、そういうことで言う訳じゃないから。俺の意思で言っているからそこだけは頭に入れて聞いてね？」

と前置きをしてきたので、不思議に思いながらも

「わかりましたわ」

と頷きましたが、何を言うつもりなんでしょう？

婚約がなくなったから......ということは、実はアンナ嬢のことなんて好きじゃなかった、とかそういう愚痴でしょうか？

いや、でもお兄様は終わったことをネチネチと人に行ってくるような人ではありませんわね。

だったら何を話すんでしょう？

見当もつかないんですが........。

そう思いながら、お兄様の言葉を待っていると

「今まで散々シャルの気持ちを蔑ろにしていたのに、今更何だって思うかもしれない」

と言った後に、お兄様は急に椅子から立ち上がって私の前に膝をつきましたわ。

あまりにも急な展開で頭が付いてこないんですが......何が起こっていますの！？

膝をついたお兄様は、戸惑っている私の手をゆっくりと取ると

「俺と結婚してください」

そう言って真剣な表情で私を見つめました。