212 / 314
211話
しおりを挟む首を傾げている料理長に
「料理長ってお付き合いしている人はいますの?」
と率直に聞いてみましたわ。
急に私がそんな質問をしたものですから、料理長の近くにいたユリは驚いた顔をしていますが、なんだか興味津々ですわね。
その様子では、まだ料理長に聞いていなかったんですのね。
なんて思いながら料理長を見ると丁度、オーブンで焼いていたお菓子が焼きあがって鉄板を持っていたんですが
「えっ!?えぇ!?」
と驚いていますわ。
がっしりとした筋肉のおかげで鉄板を落とすことはありませんでしたが、明らかに戸惑っていますわね。
顔を真っ赤にして、早く置いた方が良いのに鉄板を持ったまま固まってしまいましたわ。
そんな料理長が、なんだか面白くて
「あら?その様子ではいませんのね?」
そう言ってニッコリと微笑むと、料理長は赤かった顔をさらに耳まで真っ赤に染めて
「こ、皇妃様もそんな話をするんですね」
なんて言いながら、やっとのことで鉄板を台の上に置いていますが.........なんだか思っていた反応と違いますわ。
料理長のことだから、お付き合いしている人が居なかったら
「こんなおじさんを好きになる物好きなんて居ませんよ」
という返事がきて、居たら
「いやぁ......実はいるんですよね」
くらいの軽い返事が来ると思っていたんですけどね。
なんて思いながらチラッと横を見ると、私を大声で呼んだメイドも、料理長の彼女さん、というのは興味津々のようで持っているシーツをそのままに、調理場の入り口のところで固まってしまっていますわ。
皆から注目されている料理長は少し気まずそうにしているので、それは申し訳ないと思いますけど。
なんて思っていると、料理長は赤い頬をポリポリと掻きながら
「付き合っている、って人はいないんですけどね。気になっている人は......まぁ.......」
と言ったかと思うと、
「これで勘弁してください!」
そう言って鉄板に乗っているお菓子の盛り付けに入ってしまいましたわ。
あら、焼いていたのはマドレーヌでしたのね。
ユリの好きなものですが......知っていて作ったんでしょうか?
そう思ってチラッとユリを見ると、私の視線に気付いたのか、一瞬目が合うとすぐに逸らされてしまいましたわ。
うーん......この2人、明らかにお互いを意識しまくっている、と私は思うんですけど。
そう思いながら2人を眺めていると、私の横にいたメイドも
「うーん.......この2人、もう付き合ったらいいのに」
ポツリとそう呟いたのが聞こえてきたので、パッとメイドの顔を見るといたずらが成功した子供のような笑みをして、その場を後にしましたわ。
それに続いて私も
「一旦部屋に戻りますわね。ユリ、出来上がったら持ってきてくれるかしら?」
ユリにそう声をかけると
「わ、わかりました!」
と返事をしてくれましたが、戸惑いを隠しきれていませんわね。
本当に.....もう付き合ったらいいのに、というのが私の感想ですわ。
15
あなたにおすすめの小説
王子様への置き手紙
あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる