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10話
しおりを挟む執務室から出た私は、なんとなくディーヴァンの顔が見たくなって屋根裏へと移動しましたわ。
というのも、ディーヴァン専用の小屋があるんだけど寝る時間が短いから、夜遅くまで空を飛んでいるのがほとんどなのよね。
前に聞いた時に2時間もあれば体力が回復する......とか言っていた記憶があるわ。
そんなことを思いながら屋根裏の窓を開けてディーヴァンの姿を探すと、少し離れたところを飛んでいたけどすぐに私に気付いて窓の近くに来てくれましたわね。
私も空を飛べたらディーヴァンの近くまで移動できるのに......なんて思いながらディーヴァンの背中に乗ると
[適当に飛んでもいいんだよな?]
と聞いてきたので、小さく頷くとゆっくり窓から離れて空へと飛び出しましたわ。
ディーヴァンの背中に乗って2分くらい経ったでしょうか?
久しぶりにこんな時間に飛んでいるので、普段とは少し違った景色を見ながら
「はぁ.....なんだか久しぶりに王都に行ったのに最悪だったわ」
とディーヴァンに声をかけましたわ。
すると、私の言葉を聞いたディーヴァンは
[なんであんなのと婚約していたんだ?]
不思議そうにそう聞いてきましたわね。
まぁ、あのような何も良いところのない王太子と婚約していたのは不思議ですわよね。
しかも、ディーヴァン曰くフレグリッド様のオーラは汚い、とのことですもの。
なんて思いながら
「うーん....そう聞かれると答えに困りますわね。でも、決まってしまったから......かしら?」
と答えると、ふーん、という返事の後に、意外にも
[自分の意思で決めることは出来ないものなのか?]
と質問してきしたわね。
普段なら興味なさそうに、ふーん、で終わってしまうのに、なんだか嬉しいですわ。
嬉しさのあまり思わず緩んだ頬をそのままに、
「出来ないわけではないけど、貴族なのに自分の意思で決まる婚約は珍しいと思うわ」
なるべく冷静さを保ちながらそう言うと
[俺としてはあんな情けない男よりサイラスのような男の方が良いと思うが]
そう言ってきたディーヴァンの声は真剣でしたわね。
サイラスというのは普段遠征に行く時の団長をしてくれている、我が家の兵士の中でも上の立場にいる人のことですわ。
ただ、
「何を言っているのよ。サイラスにはお嫁さんと可愛い娘さんが居るじゃない。一緒に見に行ったのに忘れてしまったの?」
確かにサイラスはフレグリッド様と比べたら男らしくてカッコいいとは思いますが、つい最近子供が生まれたばかりのお父さんなんですの。
なので、元々恋愛という目で見たことがないので、反応に困ってしまいますわよね。
それに、サイラスは平民なので、いくら田舎者と言われている辺境伯でも結婚は難しいですわ。
ということを、ディーヴァンにも伝えると、
[そうだったか........貴族というのは難しいんだな]
とは言っていましたが、結構本気で悔しがっていますわね。
まぁ、ディーヴァンから見てサイラスが良い男だ、ということがわかっただけでも良しとしておきましょう。
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