幼馴染で婚約者の私より、貴方は運命の相手の方が大事ですのね

榎夜

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1話

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私とジオルグ様は、リーア様が来るまで周りからも仲が良いと評判の婚約者同士でしたわ。

それぞれの家の用事がない限りは常に一緒、ここまで仲が良いと羨ましくなる、と言われていたくらいです。

それなのに、後1年で結婚、というときに唐突にリーア様が現れました。

本当に急な出来事でしたわ。

だって、後1年で学園を卒業、というところで男爵の隠し子だ、と学園に入学してきたんですもの。

なので、今まで平民として暮らしていたみたいなんですの。

私も噂として聞いただけなので、どこまで本当なのかわかりませんが、リーア様の母親が去年亡くなってしまった、という話を聞いた男爵が夫人に頭を下げて迎えに行ったみたいですわ。

リーア様は男爵の愛人である母親ににそっくりならしく、男爵は夫人との間の子供達よりもリーア様を贔屓しているらしい、と聞いています。

まぁ、その愛人が娼婦だった、ということもあって、リーア様は学園の中で少し浮いた存在となっていたのは確かですわ。

シュンとした表情で、なかなか令嬢たちに馴染めなかったリーア様でしたが、それを気にしたジオルグ様をはじめとする子息達がリーア様を気にかけるようになって、そこから一気にリーア様の評判は下がっていってしまいましたのよね。

だって、リーア様の周りにいる子息達は、全員婚約者のいる人達なんですもの。

令嬢たちはリーア様が娼婦の娘だ、という噂もあったせいで自分の婚約者を誑かした、と思っているみたいですわ。

私としては、リーア様が自分からジオルグ様に声をかけている姿は見たことがありませんし、話をするときも変に可愛い子ぶっている姿も見たことがないので、誑かした、というわけではなさそうと思っていますけど。

きっと、ジオルグ様の変な正義感のせいで、毎日のようにシュンとした暗い表情をして過ごしているリーア様を放っておけなかったんでしょうね。





.........とまぁ、ここまでが今までの出来事ですわ。

そんな回想をしているうちに、私が近付いてきているのに気付いたジオルグ様は

「ジュリエッタか、一体どうしたんだ?」

と不思議そうに首を傾げています。

リーア様は、普段から令嬢たちに睨まれているので、私も何か嫌味を言ってくるのか、と警戒しているみたいですわね。

表情に出ていますわ。

まぁ、私はリーア様に怒っているわけではありませんわよ。

だって、まだ貴族になって1年も経っていないんですから常識がわかると思っていませんもの。

2人にニッコリと微笑んで

「2人ともごきげんよう。それからジオルグ様、少し話がありますの」

と声を掛けましたわ。

リーア様は自分に用事があると思っていたみたいで、キョトンとした顔をしていますわ。

一方ジオルグ様は

「なんだ?ここで話したらいいじゃないか」

と眉をひそめていますわ。

そんなジオルグ様に、

「皆に聞かれたら困ると思っているんですが...........」

そう言って、今から行こうとしているテラスに視線を送りましたわ。

パーティーでのテラスを使う意味は休憩だったり、重要な話をする為だったり、と色々な目的でつかわれるので、2人きりで話をすることが出来る、一番いいところですの。

ただ、婚約者以外の異性と一緒にいたら勘違いをされる場所でもあるので、使い方はしっかりと頭に入れておいた方が良い場所ですわ。

今の私の行動が、テラスで話しましょう、という意味だということくらいジオルグ様でもわかったみたいですが、

「リーアから離れてしまったら令嬢たちに喧嘩を売られてしまうだろう!」

と言って動く気配がありませんわね。

しかも、令嬢に虐められる、みたいなことを言いましたが、ジオルグ様の発言のせいで余計にその可能性が高くなったのをわかっているんでしょうか?

周りで聞いていた令嬢たちは明らかにジオルグ様のことを睨んでいますわよ?

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