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告白と真実
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「マリー、け…結婚」
殿下はどうなさったのでしょう?血痕…私、どこか怪我したかしら?
首を傾げると、私が分かっていないのが分かったのか、少し考え込む。
「ちょっと、中庭に出ないか?」
庭園には、四季咲きの薔薇が植えられていて、年間を通して楽しめるようになっている。早春の今は、薄いピンクの薔薇が楽しめる。
「こんなに寒いのに、強い花ですね…色合いもかわいらしい」
「そうだな。可愛いくて芯が強い…まるでマリーのような花だ」
「私…強くはありませんよ?剣なんて、恐らく持った事もないでしょうし」
「そういうんじゃない。厳しい環境でも可憐に咲き誇る花のようだ…そんな君に、俺は惚れてしまったらしい」
「…!そ…れは…ダメです!どこの誰とも知らない私にそんな事を言っては!」
「それについては…場所を移そうか。ここは寒い」
私の身元が分かったのでしょうか?その割には殿下の表情が暗いようですが。
人払いのされた応接室で、紅茶を頂きます。あ、でもグレン様はいらっしゃいますが。
「ジンジャーティーですのね。温まります」
「もしかしたら、聞かない方がマリーにとっては幸せかもしれない…それでも聞くか?」
そう切り出され、姿勢を正してしっかりと頷きます。
「お願いいたします…自分が分からないというのは、とても不安なのです」
「そうか…君の名は、マルローネ エストファイム。侯爵令嬢だ」
思い出しかけて、軽く頭が痛みます。
「侯爵…私、は…侯爵を継ぐ為に…!」
酷い頭痛。けれど、殿下がしっかりと支えて下さいます。
「医師を呼びましょうか?」
「いいえ…もう、大丈夫です。…!あの、お祖父様は!倒れたと聞いて私は…!」
「レオニダス殿ならご健勝だよ…それは、君を屋敷の外に出す為の策略で…」
「やはり、そうですか…アレク様とエルシーナお姉様は本当に仲がよろしいですものね…ならきちんと、そう言って頂だければ…あんな事をせずとも、アレク様の事は諦めましたのに」
「それは、エルシーナ嬢が欲しがったのが彼だけではなく、次期当主の座も欲していたからだ」
「確かにそれは、私が邪魔になってもおかしくはありませんね…けれどお姉様では」
「大変な浪費家のようだね?あれでは領地経営なんて無理だろう」
「ええ…それに姉は、経営についてもきちんと学んではいません…お祖父様には教師から報告が行っていたのでしょう。大変ですわ!今、領地経営は」
「家令のグストが上手く回している。手を出そうとするエルシーナ嬢を止めているのも彼だ…とても優秀な家令だ」
「グストはお祖父様の命令しか聞きませんから。私も、お手伝い程度しか出来ませんでしたもの」
紅茶は冷めてしまいましたが、僅かな苦味もぐっと飲み干しました。
「ジークハルト殿下、本当にありがとうございました。私…」
「待ってくれ!マルローネ…これからも、側にいてほしい」
「けれど、姉はアレク様と共謀して私を消そうとまでしたのです。そのような者に領地を任せる訳には…領民を犠牲にする訳には参りません!」
「俺には…マリーしかいない」
「殿下…」
「悪い。一度に色々言われたら、混乱するよな…」
「大丈夫です…あの、我が儘を申してもよろしいでしょうか?…お祖父様に、会いたいのです」
「…分かった。でも、一緒に行ってもいいだろうか?」
「あの…でも」
「悪い。1人で行かせてしまったら、もう会えない気がしてな」
殿下の想いを知る前なら迷わずそうしたとは思いますが…思い当たる節もありますし、むしろ何故今まで気が付かなかったのでしょう?
今まで受けた恩を返さないつもりはありませんが…
ならばこれからはエストファイムの領主として、隣国と仲良くしていけば…
そうするのが一番だと考えなくても分かるのに、いつの間にか私も殿下と離れがたく思ってしまう…
殿下はどうなさったのでしょう?血痕…私、どこか怪我したかしら?
首を傾げると、私が分かっていないのが分かったのか、少し考え込む。
「ちょっと、中庭に出ないか?」
庭園には、四季咲きの薔薇が植えられていて、年間を通して楽しめるようになっている。早春の今は、薄いピンクの薔薇が楽しめる。
「こんなに寒いのに、強い花ですね…色合いもかわいらしい」
「そうだな。可愛いくて芯が強い…まるでマリーのような花だ」
「私…強くはありませんよ?剣なんて、恐らく持った事もないでしょうし」
「そういうんじゃない。厳しい環境でも可憐に咲き誇る花のようだ…そんな君に、俺は惚れてしまったらしい」
「…!そ…れは…ダメです!どこの誰とも知らない私にそんな事を言っては!」
「それについては…場所を移そうか。ここは寒い」
私の身元が分かったのでしょうか?その割には殿下の表情が暗いようですが。
人払いのされた応接室で、紅茶を頂きます。あ、でもグレン様はいらっしゃいますが。
「ジンジャーティーですのね。温まります」
「もしかしたら、聞かない方がマリーにとっては幸せかもしれない…それでも聞くか?」
そう切り出され、姿勢を正してしっかりと頷きます。
「お願いいたします…自分が分からないというのは、とても不安なのです」
「そうか…君の名は、マルローネ エストファイム。侯爵令嬢だ」
思い出しかけて、軽く頭が痛みます。
「侯爵…私、は…侯爵を継ぐ為に…!」
酷い頭痛。けれど、殿下がしっかりと支えて下さいます。
「医師を呼びましょうか?」
「いいえ…もう、大丈夫です。…!あの、お祖父様は!倒れたと聞いて私は…!」
「レオニダス殿ならご健勝だよ…それは、君を屋敷の外に出す為の策略で…」
「やはり、そうですか…アレク様とエルシーナお姉様は本当に仲がよろしいですものね…ならきちんと、そう言って頂だければ…あんな事をせずとも、アレク様の事は諦めましたのに」
「それは、エルシーナ嬢が欲しがったのが彼だけではなく、次期当主の座も欲していたからだ」
「確かにそれは、私が邪魔になってもおかしくはありませんね…けれどお姉様では」
「大変な浪費家のようだね?あれでは領地経営なんて無理だろう」
「ええ…それに姉は、経営についてもきちんと学んではいません…お祖父様には教師から報告が行っていたのでしょう。大変ですわ!今、領地経営は」
「家令のグストが上手く回している。手を出そうとするエルシーナ嬢を止めているのも彼だ…とても優秀な家令だ」
「グストはお祖父様の命令しか聞きませんから。私も、お手伝い程度しか出来ませんでしたもの」
紅茶は冷めてしまいましたが、僅かな苦味もぐっと飲み干しました。
「ジークハルト殿下、本当にありがとうございました。私…」
「待ってくれ!マルローネ…これからも、側にいてほしい」
「けれど、姉はアレク様と共謀して私を消そうとまでしたのです。そのような者に領地を任せる訳には…領民を犠牲にする訳には参りません!」
「俺には…マリーしかいない」
「殿下…」
「悪い。一度に色々言われたら、混乱するよな…」
「大丈夫です…あの、我が儘を申してもよろしいでしょうか?…お祖父様に、会いたいのです」
「…分かった。でも、一緒に行ってもいいだろうか?」
「あの…でも」
「悪い。1人で行かせてしまったら、もう会えない気がしてな」
殿下の想いを知る前なら迷わずそうしたとは思いますが…思い当たる節もありますし、むしろ何故今まで気が付かなかったのでしょう?
今まで受けた恩を返さないつもりはありませんが…
ならばこれからはエストファイムの領主として、隣国と仲良くしていけば…
そうするのが一番だと考えなくても分かるのに、いつの間にか私も殿下と離れがたく思ってしまう…
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