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第1章 異世界転生と魔の森

1-9  森の中は危険がいっぱい

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~Side エルメス~

「それじゃ今から突撃するっす。斥候班、くれぐれも慎重に」
「「「「了解!」」」」
「よし!んじゃ早速行こう!エルメス頼む!」

「【隠密結界】」

 セレーネ大将の声掛けで、俺は結界を全員に貼るっす。
 俺の固有能力は【結界術】。様々な用途の結界を大きさ色々で貼れるっす。
 今回の【隠密結界】はその名の通り、隠密活動向けの認識阻害や消音、消臭といった暗殺者顔負けの結界っす。もちろん防御力も売りの一つで、強力な一撃を貰わない限りは崩されないっす。

 森の魔物に対しては基本的に何もさせずにスムーズに倒していくつもりっす。まあ下手に妙手うたれたりしたらだるいっすからね。うちの部隊が新型のスナイパーライフルで静かに倒していくっす。
 このスナイパーライフルは大将とカエデが悪乗りして作り始めたのがきっかけだったっす。弾丸は魔力による補充で、光魔法を駆使したスコープに風魔法による消音も完備。隠密が得意なうちの部隊にはピッタリの武器っすね。
 魔力を打ち出すってことで、一応強さに個人差も多少は出るっす。大将は前に山を打ち抜いてめちゃくちゃ焦ってたっすね。弾丸状に凝縮されることで、貫通力がすさまじいことになるっす。


(10時方向、敵数5。猪型の魔物を発見)
(了解。すみやかに対処するっす)
(了解)

 俺たち精霊は、大将との契約によって互いにパスができてるっす。なので全員と念話が可能っす。
 大将曰く、恐らく魔法による連絡よりも傍受される可能性は低いらしいっす。マジでありがたい機能っすね。

(射撃の命中を確認。討伐も確認しました)
(了解っす)

 どうやら上手くいったみたいっすね。

「漆葉の姐さん、魔物の回収頼めるっすか?」
「承知しました」
「気をつけてな~!索敵おろそかにするなよ~!」
「はいッッ……!!」

 本当に漆葉の姐さんは大将に忠実っす。大将は彼女の将来が心配だって言ってたっすね。

 魔物の死体は、漆葉の姐さんの【闇魔法】によって収納、回収された後に解剖や実験を行い、森に潜む魔物を明らかにしていくらしいっす。
 収納魔法については大将達が改良中らしいっすね。魔力の消費を抑えて、精霊達全員が使えるものにするらしいっす。

ところで姐さんのあの魔法は本当に恐ろしいと思うっす。漆葉の姐さんはあまり使わないっすけど、洗脳魔法とかも強力っすね。


(こちらα班、蜘蛛型の魔物、数3。対処しました。魔物の特徴は色が黒、サイズはピンキリですが最大7、8mほど。攻撃方法は未だ確認取れていません)
(こちらβ班、同じく蜘蛛型を数4,対処です。おそらくα班と同種類のものかと。回収頼みます)
(こちらγ班、狼型の魔物の集団、数28。対処に入ります。特徴は色が黒ベースに赤い毛が一部混ざっています。魔 力の大きさから魔法を使う可能性が示唆されます。各々警戒してください)

 蜘蛛型は巣かコロニーかなんかありそうっすね。

 狼も群れっすか、本当に野生って感じっす。


(こちらα班。蜘蛛型の集団を発見。数およそ250)

 うわっ、ビンゴっすね

(殲滅で)
(了解。30秒後一斉射撃に入ります)

「やっぱりコロニーとかはあるよな。虫なんて1匹いたら100匹いると思えって常識だしな」
「そうっすね。虫型なんて集団で狩りするのが一番強い形っすからね。
 超巨大蚊取り線香でも置けば無双できるかもしれないっすね」
「それ面白いね!!さっそく考えてみるよ!」
「うわ。エルメス自爆してら」
「攻めるならカエデを攻めてくださいっす!」

「ん?あと狼型も見つけたんだよな?」
「そうっすね。群れでいたみたいっす」
「狼といったら群れって感じするもんな。こういう探索は隠密行動に限るわ。
 正面からいちいち相手するなんてやってられん」

 本当にそう思うっす。俺tueee系の主人公なんて正面から大群に突入するっすけど、寝てる間に首切られたらアウトっすからね。暗殺が最強っす。

 おっとそろそろコロニーの報告がくるっすね。

(こちらα班。蜘蛛型コロニーの殲滅が完了しました……。カエデ副隊長が)

 え?っていつのまに横からいなくなってんすか!?マジで気づかなかったっす!

(こちらエルメス。カエデ~?後で説教っすよ~?)
(えっっ!?別にいいじゃないか!新兵器のサイレントボマーを試しただけなんだ!隠密向けの爆弾とかロマンあるだろう!?)
(それとこれとは話が別っす。今日の報告書半分受け持つっす)
(なんでなんだぁぁぁぁ!!!)

 これだから暴走マッドは。

「大将も何かいってやってくださいっす」
「大丈夫だ。明日からカエデは2泊3日、セレーネ式ブートキャンプの特別会員メニュー行が決定したからな。筋肉が悲鳴をあげるプレミアムな喜びを感じてもらおうか」

 あ、それは本当にドンマイっす。骨は拾うっすよ。


(こちらγ班、クマ型1、トラ型1それぞれ処理しました)

(こちらα班、植物系の魔物が多めのエリア突入。各々警戒すべし)

「クマとトラは喧嘩でもしていたのかね」
「タイマン中に横から狙撃とか、容赦ないっすね」
「そして……、植物系もいるよなあ。かなり厄介だ。
 まあ森での探索ではかなり慎重に対処すべきだな。毒とか絶対持ってるだろうし」

 本当に厄介っすね。集団の脚を止めるならピッタリの魔物っす。
 食虫とかもいるんすかね?でっかいウツボカズラとか。


 そして数時間後…。


(こちらε班、ドラゴン型の魔物、数18発見しました。あとは、死にかけのドラゴンが1ですね)

 マジっすか!?ビバ異世界!って感じっすね。

「いや、異世界人は俺だけだから」

 心の声が聞かれてたっす。

「ドラゴン!って興奮したいのは山々だが、ちと数が多くない?あんまり群れないってイメージを勝手に持っていたわ
 というか弱ってるのも1体いるってどんなシチュエーションなんだか」
「喧嘩っすかね?」
「喧嘩にしては集団できてる奴らのプライドがなさすぎじゃない?
 ここはタイマンでしょう。ハンマーで壁に穴を開けようか。」
「いや、ヤンキー漫画じゃないんすから。
 どうするっすか?殲滅の指令出すっすか?」
「うーん。どんくらいの強さなのかはわからないけど、恐らく隠密射撃で殲滅できるよな」
「行けると思うっすよ。今のところほとんどの魔物がヘッドショットで一発らしいっす。
 ちなみに、スナイプ外した数だけフットワーク練を増やすことになってるっす」
「素晴らしい罰ゲームだな。
 そうだ。いずれみんなで、この森を使って氷オニでもしよう」
「え、止まっている間に魔物くるじゃないっすか」
「……耐えろ」
「マジで言ってるっすか!?」


(こちらβ班、弱っているドラゴンの所に別の魔力反応を感知しました)

「なんすかそれ。子供でもお腹にはいってるんすかね」
「いや待て、俺の索敵にも入ったが……」
『セレーネ、この子の魔力量かなり大きいよ!セレーネまでには及ばないけど、漆葉よりは大きいね』
「よし!ちょっと俺が行ってくるわ!漆葉もついてこい!」
「かしこまりました!」
「了解っす。班には連絡いれとくっすよ」

 さて、鬼が出るか蛇が出るか。楽しみっすね。
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