最低ランクの冒険者〜胃痛案件は何度目ですぞ!?〜

恋音

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ダクア編

第28話 討伐というより殺害感

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「俺の監修の下、ゴブリン退治と行こうぜェ?」

 そう言うギルドマスターに連れられ、西の森にやってきていた。
 西の森は最初に来た時に比べて荒れ果てている。地面はボコボコだし、木がなぎ倒されていた。完全にスタンピードが原因ですね。

「ギルマス、そんなに俺らランク上げする必要あるか?」
「ん? あぁもちろん。Fランクは基本的に身分証ってだけで、戦闘を可能とする冒険者見習いみたいなもんだろ。流石に威厳がなァー」

 そういえばそうだ。
 リリーフィアさんに最初説明してもらった時、思っていた。Eランクになってこそ、冒険をメイン活動に置く者になるんだろう。

 うーん。

「ゴブリンは降って湧いてくるからな」
「そうはなんねぇだろ」
「盗賊退治出来るなら大丈夫だろう。流石にギルマス権限でホイホイランクを上げるわけにはいかないからな、1人10匹は倒してもらうぞ」

 1人10匹。
 ランク功績。

「リィン、どうした。緊張でもしてんのか? ……というかなんで箒なんだ」
「月組だってよ」
「嗚呼………………」


『冒険者ランクは依頼達成に依存します、最初はFランクから始まります。依頼達成頻度と依頼達成数。成功率。それらを吟味します』

 リリーフィアさんの言葉が蘇る。初めて訪れたギルドでそう説明された。
 確か……。

『FランクからEランクに上げる場合ギルドを経由した討伐依頼10個達成とギルドマスターとの面接です』

 そうだ。
 ・ギルドを経由した討伐依頼×10
 ・ギルマスとの面接

 たったこれだけだ。こうやって強制イベントみたいにお膳立てされなくても普通に達成出来る。

 ギルドを経由したって事は前回の盗賊退治で言う様な、獣人娘がギルドを通した依頼、もカウントされるんだろうか。……どっちみちランク功績になる討伐依頼は自分の前後のランクのみ。Cランクだったらランク上げに必要な要素になり得ないけど。

 それに確か討伐依頼としてあったな。
 ゴブリン退治。
 なるほど、それで10匹。討伐依頼を10個

 今回の引率で、依頼と面接の両方を達成することが出来るわけか。



 ……。

 …………。

 なんだろう、そこはかとなく嫌な予感がする。

「リィン?」

 ギルマスが不思議そうに顔を覗き込む。
 思考の海に飛び込んでいた私が現実に引き戻された瞬間だ。

「なんだよ、お前朝の魔力回復してねェのか?」

 揶揄う様にライアーがポンポンと頭をドリブルする。


「……あっ、何事か忘れるしてたと思考したですけど、魔力!」
「はぁ? 一体どういうことだライアー」
「こいつ昼あたりで既に魔力切れになってるらしいんだよ。なァ、小娘」
「えへっ、実は」

 てへぺろ、と私が舌を出すと焦った顔色を見せるギルマス。

「どうする……これじゃランク上げが……リリィに今日中につって……早くEラン………」

 ブツブツとなにか悩みを抱えているのか呟いていた。

 その傍らでライアーが私の肩に手を回し、重心を寄せて顔を近づけた。

「感謝しろよ」
「いや、まぁ低ランク依頼ですたら多分ライアーの剣借りると思うしてたのですが」
「おい。……んじゃ、さっきっから上の空なのはなんでだよ」
「いえ……。ギルドがこうも下準備ぞするですかね」

 どういうことだ、と言いたげに片眉が吊り上げられる。
 私は顎に手を置いて思考を開示する。

「ギルドが、ろくな理由も無くEランクに上げる事ぞ望むと思うですか?」
「あー。威厳がどうとかって言ってたな。ま、威厳自体は事実だろ」
「ですけど、こんな小娘ですぞ? 盗賊依頼はライアーがほぼやるした、と言うすれば」
「……こんな小娘だけじゃねぇからだろ」
「えっ」

 ちょっと待って。
 え、ちょっと待って。

 私は思わず横を見ると、私から体重を外し明後日の方向を見るライアーが……──端的に言うと目を逸らしてるおっさんがいた。

「はぁあああ!? おっさんFランク!? 冒険者生活どれだけぞあると!?」
「あーあーうっせぇな! キンキン甲高い声でうるせぇんだよ! Fランクでも不都合はねぇし、そもそも討伐とか剣が錆びることしたくねェし!」
「剣は錆びぬかもしれませぬが腕は錆びるですよね!」
「ぶん殴るぞお前」

 何上手いこと言ってんだ言語不自由の癖に、って完全に八つ当たりで頭を上からグリグリと攻撃される。

 いたたたたた、下痢ツボが!

「こらお前らぁ! 早速ゴブリンのお出ましだぞ!」

 ギルマスがナックルを装備した状態で叫ぶ。

「森の中で遊ぶな!」
「遊んでないッ!」
「遊ぶ否定ッ!」

 声を揃えても2匹ゴブリンが来ていることには変わらない。
 油断はできないし、あんまり戦いたくない。

 ゴブリンは緑の肌を持つエルフのような尖った耳を持った鼻のでかい子供みたいなブサイクだった。

 うーん。汚らしいというのが正直な感想。

「とりあえず1匹貰う」

 ライアーが剣を引き抜いて走っていく。ドロップキックみたいな体勢でゴブリン1匹を蹴った後、その衝撃でもう1匹に体の向きを変えて飛びかかり、切り込んだ。

「グギャア!?」

 普通ゴブリンを踏み込み台に使う?

「よし、1匹。──ほら、貸してやるよ」

 私の方向に剣を投げた後、ライアーは樹の上に飛び乗った。装備が軽いから出来る技だろうな。騎士団とかタンクとか、盾や甲冑や鎧を着込んだ人間には出来ない芸当だ。

 私は地面に転がった剣を持ち上げる。

 あっ、重っ。
 剣としては軽い方だけど箒より重いもの持ったことがない淑女としてはちょっと……。

 私は剣を捨てた。よし、無理。

「あっお前っ」
「推定可能……」

 私は剣のかわりに箒を構える。今回敵に向けるのはブワァッってなってる穂先じゃなくて、柄の方。
 槍というよりは棍棒だけど、そちらをゴブリンに向けた。

 人間・・の形をしているなら、多分弱点は一緒。

「ちなみにライアー、ゴブリンの魔石はいずこに存在するぞ!」
「頭蓋骨の中」
「チィッ」

 魔石を破壊して殺すことは不可能か。

「躊躇なく1番高い部位を破壊していくよなお前……」

 なんのことでしょう。
 手っ取り早いんだから仕方ないよね。明確な弱点あるんだし。

 ゴブリンが石を投げてきたので野球の様に柄ではじき飛ばす。その石は偶然にもおっさんの方へ飛んで行った。

「あでっ」
「よっこいしょ!」

 森であるが故に出来るのだが、私は穂先で地面を掃く。すると土埃というか最早砂利がゴブリンにぶつかった。お返し。

 そのまま箒をグルンと1周させ、柄をまたゴブリンに向けると。

「そいやぁ!」

 喉に向けて思いっきり刺突した。

「うわ」
「うげ……」

 それは苦しいと言いたげに大人がドン引きの声を上げる。

 私は数歩離れて抱えられるサイズの石を拾った。

「おい……ちょっと待て……」

 ライアーが慌てて樹から降りてくる。
 のを後目に、私は脳天目掛けてぶん投げた。

「ゴァ!?」

 ゴンッッ、という鈍い音と共に命中した石は拳よりも少し大きいサイズだ。
 だけど、……──脳みそかち割れば死ぬよね?


 完全勝利のガッツポーズの先に、ミステリーとかでよくある感じに死体が転がっていた。分かりました、犯人は私ですね。


「頼むからまともに戦ってくれ……」

 至極まともに魔力切れの魔法職が無傷で終わらせたって言うのに、ギルマスの顔は不満タラタラだった。げせぬ。
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