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第九話 別れと
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「王弟殿下、お迎えに上がりました」
「ああ……」
しばらくして、兄から指示された国事騎士団の送迎・護衛任務を担う第二隊が迎えに来た。
束の間の休息の終わり。
しかし、王宮に戻っても私は生き抜いてみせる。
決意の表情で空を見上げる。すると、心配したのか、エリシャが私の手を握ってくれた。
「エリシャ……」
「帰るの?」
「ああ」
「ずっとここにいてもいいのよ?」
「私はね、楽しい未来を想像することができるようになったんだ」
「楽しい?」
「そう。エリシャのおかげでね。だからまた……、自由の身になったらまた、ここにきていいか?」
「もちろんよ。またきてね」
そういうと、エリシャは私の手をキュッと握って笑顔を見せてくれた。
「まってるね」
可愛かった。
顔が可愛いのはもちろんだが、それだけじゃなく、すべての仕草が可愛いんだ。そして内面も可愛いんだ。お菓子が大好きだけど自分だけじゃなく皆でそれを共有するのが好きだから絶対独り占めしないし、猫が大好きだからって膝に乗っている猫が寝てしまったらどれだけ足がしびれても起きるまで我慢していたり。エリシャ可愛いエピソードを語り出したら時間がいくらあっても足りないからそれはまた今度にしよう。
その後、剣術も魔法も必死で勉強し、毒に怯えなくてすむよう進んで毒物を体内に取り込んで耐性をつけた。もちろん解毒魔法も習得した。その甲斐あって、毒殺を免れ暗殺者は返り討ち、令嬢によるハニートラップも、エリシャでない限り私には効かなかった。
学園ではトップに君臨し続け、生徒会長にも就任した。
気づくのが遅かったが、実はエリシャの上の兄が同学年にいた。2年目に同じクラスになったとき、再会したのだ。
エリシャと同じプラチナブロンドで、瞳の色は彼女より濃いネイビーブルー。私は将来のために、エドガーとは仲良くしておこうと思い彼に近づいた。
「久しぶりだな、エドガー・エストルム」
「王弟殿下、お久しぶりです」
「昨年は妹君に大変世話になった。グイストと呼んでくれ」
「グイスト様、ありがとうございます。私のことはエドガーと」
「ああ、エドガー。それでエリシャのことなんだが――」
私がシュトルポジウム領で世話になっていたとき、その本邸に来ていたのはエリシャとメルディ様だけだった。エドガーと会うのは母のお茶会以来だ。私は昨年、エリシャにどれだけ心を救われたか、またそのときのエリシャの可愛い様子を延々とエドガーに語って聞かせた。
そうしたら彼は、さすがに私がエリシャに抱いた恋心を察してくれたらしく、兄として応援する、と約束してくれた。味方をひとりゲットした。
そうして、学業に鍛錬に実戦に忙しく過ごしていたところ、あの訃報が飛び込んで来たんだ。
"ポジウム侯爵夫人、メルセデュース・エストルム様死去" ……と。
「ああ……」
しばらくして、兄から指示された国事騎士団の送迎・護衛任務を担う第二隊が迎えに来た。
束の間の休息の終わり。
しかし、王宮に戻っても私は生き抜いてみせる。
決意の表情で空を見上げる。すると、心配したのか、エリシャが私の手を握ってくれた。
「エリシャ……」
「帰るの?」
「ああ」
「ずっとここにいてもいいのよ?」
「私はね、楽しい未来を想像することができるようになったんだ」
「楽しい?」
「そう。エリシャのおかげでね。だからまた……、自由の身になったらまた、ここにきていいか?」
「もちろんよ。またきてね」
そういうと、エリシャは私の手をキュッと握って笑顔を見せてくれた。
「まってるね」
可愛かった。
顔が可愛いのはもちろんだが、それだけじゃなく、すべての仕草が可愛いんだ。そして内面も可愛いんだ。お菓子が大好きだけど自分だけじゃなく皆でそれを共有するのが好きだから絶対独り占めしないし、猫が大好きだからって膝に乗っている猫が寝てしまったらどれだけ足がしびれても起きるまで我慢していたり。エリシャ可愛いエピソードを語り出したら時間がいくらあっても足りないからそれはまた今度にしよう。
その後、剣術も魔法も必死で勉強し、毒に怯えなくてすむよう進んで毒物を体内に取り込んで耐性をつけた。もちろん解毒魔法も習得した。その甲斐あって、毒殺を免れ暗殺者は返り討ち、令嬢によるハニートラップも、エリシャでない限り私には効かなかった。
学園ではトップに君臨し続け、生徒会長にも就任した。
気づくのが遅かったが、実はエリシャの上の兄が同学年にいた。2年目に同じクラスになったとき、再会したのだ。
エリシャと同じプラチナブロンドで、瞳の色は彼女より濃いネイビーブルー。私は将来のために、エドガーとは仲良くしておこうと思い彼に近づいた。
「久しぶりだな、エドガー・エストルム」
「王弟殿下、お久しぶりです」
「昨年は妹君に大変世話になった。グイストと呼んでくれ」
「グイスト様、ありがとうございます。私のことはエドガーと」
「ああ、エドガー。それでエリシャのことなんだが――」
私がシュトルポジウム領で世話になっていたとき、その本邸に来ていたのはエリシャとメルディ様だけだった。エドガーと会うのは母のお茶会以来だ。私は昨年、エリシャにどれだけ心を救われたか、またそのときのエリシャの可愛い様子を延々とエドガーに語って聞かせた。
そうしたら彼は、さすがに私がエリシャに抱いた恋心を察してくれたらしく、兄として応援する、と約束してくれた。味方をひとりゲットした。
そうして、学業に鍛錬に実戦に忙しく過ごしていたところ、あの訃報が飛び込んで来たんだ。
"ポジウム侯爵夫人、メルセデュース・エストルム様死去" ……と。
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