【第二章完結!】妹?義妹ですらありませんけど?~王子様とは婚約破棄して世界中の美味しいものが食べたいですわ~

井上 佳

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第十一話 王弟は学園長に就任した

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近隣諸国を周り国内も隅々まで視察して王宮へ帰ると、兄は、すべてを放棄して飛び出したにもかかわらず、私を笑顔で迎えてくれた。

そして、自身も卒業した王立のセントリュッツ学園の学園長の椅子に収まり、青春を謳歌する学生たちを日々眺めて過ごしていた。兄が「しばらく何も考えずゆっくり過ごすといい」といったので、ほんとうにぼーっとして過ごしていた。すると、ある日視界によく知っている顔が映った。


「ギースか?」

「叔父上?」

「えっイケメン……」


昼食時に裏庭で、頭を無にして兄に持たされた弁当を食べていた時、甥の現第二王子ギースが女生徒を腕にくっつけて歩いていた。
私の最愛の人を奪った……いや、知らなかったんだ。私がエリシャを想っていることは、エドガーしか知らなかった。ギースは悪くない。ぐずぐずしていた私が悪いのだ。恨むのはお門違い、と言いたいが、エリシャという婚約者がありながら何だその女は。やたらこちらを見ているが……私は今は学園長として学園にいるが、そもそも王族の顔を凝視するなど不敬ではないか。


「お久しぶりです」

「ああ、久しいなギース。学園ではどうだ?」

「やば、声もいい……」

「つつがなく」

「そうか、何よりだ」

「え、笑顔もいい」


ひとりごとかなんだか知らないが、こちらを凝視したまま言葉を挟んでくるとはうっとおしい。私は視線で、ギースに説明を求めた。


「ああ、この娘はピオミルといいます」

「ピオミル?」

「あっ、私、ピオミル・エストルムです」

「……エストルムだと?」

「あっ、はいっ」

「エリシャ・エストルムの妹ですよ」

「エリシャの……」


あの、シュナイダー殿が連れてきた女の連れ子、というわけか。しかしエストルム姓を名乗るとは、いったいどうなっている? 私が冒険者としてここを離れていた間に、ついに入籍したというわけか? いや、だとしても義姉の婚約者の腕にひっついているのはおかしいだろう。いや、元が平民だからその辺の距離感が……いやしかし、エストルム邸にきて何年だ? 4年か5年くらいは経つのか? そもそも入籍することを目的としていたのならば、そのあたりの教育もされているはずでは?? 侯爵家だぞ? …………私は頭を傾げた。


「久しぶりにお会いできてよかったです。お元気そうで」

「ああ、戻った時以来だな。何かあったら言ってくれ」

「はい。それでは」

「あっ、私まだ」

「ん? 行くよ、ピオミル」

「あっ、あ……は、はーい」


ギースは腕に女を引っ付けたまま、その場を去っていった。

あれがエリシャの義妹? だとしても、婚約者である姉を差し置いてその距離感で接するなど……いや未婚ならあのようにベタベタにくっついてのエスコートなどしないだろう。いやエリシャ……え? 婚約……?? ん? 居候ではなく妹?? エストルム?


……どこから考えたらいいかわからないほどの情報量だ。




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