【第二章完結！】妹？義妹ですらありませんけど？～王子様とは婚約破棄して世界中の美味しいものが食べたいですわ～

第二章 外国漫遊記

第二十五話 モンティ＝ガイロ⑤

「無事にラパンシャンスが見つかってよかったですわ」

「あんなに採れるとはなぁ」

「見つけるにも運が必要なはずですのに、すごかったですわね」

「さすが女神だ」

「まあでも、それも一理あるかもな。幸運の女神ってか」

「ええそうよね！　私に感謝しなさい！」

「お前じゃねぇよ」

「エリシャの幸運は国一番だからな」


そうでしょうか？　国一番の幸運の持ち主は、子供のころに母親を亡くさないだろうし、好みじゃない王子と婚約させられることもないでしょう。

誰の運で１０匹もまとめて現れたのかはおいておいて、モンティ＝ガイロ・フロア１０で、ラパンシャンス乱獲に成功しました。

ご懐妊されたお知り合いのためのお守りにするというラクレンバルさんに５つ差し上げて、残りの５つは、ひとりひとつずつで分けました。あまり１はどうしましょう？


「グイストさんたちは、ギルドに戻るのか？」

「そうだな」

「私たちはギルドで素材を卸したり、討伐記録の確認を」

「何匹かは倒しているんだから、私たちも行きましょ」


フロア５で合流する前にいくらかの戦闘はしているので、その記録確認のためにお三方もギルドへ向かうそうです。


「いらっしゃいませ～えぇぇぇ！　ものすごい美形！」

「デジャヴ」

「昨日の！　美人さん！」

「どうも。モンティ＝ガイロ、行ってきたのですけれど、まだ裏はあいてます？」

「はいっ！　裏の鑑定所は２０時まで、元気いっぱい営業中です！」

「ありがとう」


今回のダンジョン入場が、モッローラ初だったというラクレンバルさんたち。一緒に鑑定所へ行き、素材と記録を見てもらいます。


「いんやたまげたぁ。一日いちんちでこげな量持ってくるたぁ…、記録もどえれぇことになってんだなぁ！」

「ランクは上がるかしら？」

「そだすなぁ、エリシャさんはぁ、今Ｄ？　Ｄでこんなにやってきたんけぇ！　いんやたまげたぁ」

「マジか。Ｄランクであんな無双してたのかよエリシャさん」

「さすが、神ともなればすべてがひれ伏す」

「いつの間にか神になってるしお前がひれ伏すなベジック」


鑑定士さんがたまげるほどの討伐量だったようで、ＤランクからＣランクに上がりました。
この勢いで行けば、カーレースが始まる前にＢランクまで行けるのではないでしょうか。期待が高まります。


「今日は、ありがとな。ほんとうに、助かったよ」

「いや、エリシャが決めたことだ、気にするな」

「ふふっ、無事ご出産なさるようお祈りしてます」

「ありがとう女神…、ほんとうに…」

「あのキノコ、すんごい美味しかったわ。またどこかで会ったら、あれ頂戴よ」

「まあ、嬉しいですポリーさん。あれは我が家のキノコ好きたちが研究・開発した新種なんですのよ。よろしかったら、送りますけれど」

「あっ、そう？　東大陸のオズトリアでもいける？」

「オズトリアですね。ええ、日数はかかりますが送れますわ」

「そう？　じゃあそこの王様に宛てといて」

「王様宛ですね。わかりましたわ」

「それじゃ！　グイストさん、またどこかでお会いしましょうねっ！」


そしてポリーさんは、グイスト様に投げキッスをして去っていきました。

東大陸のオズトリア、懐かしい名前を聞きました。セントリュッツ学園で一緒に生徒会を運営していた、筋肉が友達のハマメル王子とモンドはお元気かしら。

あら？　王様宛て、ということは、ポリーさんはひょっとして王家に連なる方なのでしょうか。ハマメル王子は第十五王子で、ほぼほったらかし育児だと言っていましたし、オズトリアの王家は子だくさんですからもしかしたらそういうこともあるのかもしれませんね。


「あいつ、俺らには挨拶なしかよ」

「ふふ、面白い方ですね」

「あー、まーな。変な奴だけど、面白かったな」

「では、私たちもこれで」

「ああ女神、貴女さえよければぜひ我が国の――」

「世話になった！　じゃーな！」


ラクレンバルさんたちも、慌ただしく去っていきました。


もう夜もいい時間です。
グイスト様とふたり、宿屋に戻って夕ご飯といきましょう。