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第二章 外国漫遊記
第四十四話 ふたりの夜
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「ふたへや」
「ええ。部屋数はもともと少ないんですけど、今日はあとふた部屋しかご用意できなくて。それがふたり部屋をふたつなんです」
「そうか、それはよかった」
「?」
ヴァランタンさんが不思議そうな顔をします。けれど、私にはわかってしまいました。ビトさんもなんとなく察したようですが、つまり部屋割りは2-2ということですわね? グイスト様がいくら真顔でも、嬉しそうなのがわかってしまいます。
「ちなみに、今からでもお夕食はいただけますか?」
「ええ、ご用意できますよ。今夜は牛すね肉とマッシュルームを煮込んだカルボナーデがメインです」
「まあ、マッシュルーム」
「エリシャさん、マッシュルームだそうだ」
「ええ、わかっていますわヴァランタンさん。マッシュルームですわ」
「では、ここで決まりだな。ふたりでひと部屋だ」
「キノコ愛つよ!」
マッシュルームとお肉だなんて、最強の組み合わせではないですかカルボナーデ。
このあたりの郷土料理だそうです。楽しみですとても。
「では行こうか」
「はい」
「俺らはこっちねー」
「?」
ヴァランタンさんは、いつの間に部屋割りが決まったのだろうか、というような不思議そうな顔をしてこちらを見ていました。
「まああ」
「美味しそうだな」
「ほんとだー」
「マッシュルーム…」
お食事は食堂でいただくスタイルのようです。
荷物を部屋に置いて降りてきたら、案内していただけました。そして席につくとすぐにお料理が運ばれてきます。
カルボナーデという煮込み料理に、ポレンタというトウモッコシの粉で作ったつけ合わせが乗っています。あとはパンと、生ハムがたっぷりのサラダ。どれもとても美味しそうです。
「ほろほろの牛肉に風味豊かなマッシュルーム、最高ですわ」
「ああ、美味いな」
「牛すね肉は筋肉と脂肪が適度に混じり合った堅めの肉質ですが、じっくりと煮込むことで柔らかく旨みが増しますわよね。やはり煮込み料理には最適ですわ! 長時間煮込まれていて、肉から出るゼラチン質が料理全体にコクを加えています。すね肉を選んだ方は天才ですね! ああ、美味しいですわ」
「マッシュルームは、グアニル酸が多く含まれていることから料理に深みを与える素材として非常に優れているキノコだが、この料理にはホワイトマッシュルームとブラウンマッシュルームの両方が使われているのか。マイルドな風味のホワイトマッシュルームと、香りが強く独特の風味があるブラウンマッシュルーム、交互に味わうとそれぞれの美味しさがよくわかる。とてもよく考えられた料理だ」
「うん、ふつうに美味いじゃだめかな?」
デザートの木の実のタルトも、このホテルのオリジナルレシピだそうで、甘すぎず少し塩気もあって、ナッツのザクザク感やしっとり感の食感も味も素晴らしかったです。
そして部屋に戻りーー
「エリシャ」
「ち、近いですわグイスト様っ」
軽く寝支度を整えベッドに座ったところで、もう寝ましょうか、と声をかけたらひざまずかれました。
「大丈夫だ、何もしない、ただ少しだけ」
「す、少しだけ?」
「少しだけてー……抱きしめても?」
「いま、言い直しましたわよね」
「エリシャ」
「うぅ…少し、だけなら、はい」
「っ」
手を、と言いながら手に触れてきたグイスト様でしたが、言い直しましたわ。いけると思ったのでしょうね。いいですわ。たまになら、私も甘い雰囲気を堪能することは、できますから。
ここのところずっと誰かと一緒でしたし、たまにならいいかなって。婚約もまだだしするかもわからないですし、結婚するなんてことになってもずっと先のことでしょう。けれど、今の私はただの冒険者ですから、こういうことだって、気軽にしたいと思った相手としたって、いいはずですわ。……思う相手は、ひとりしかいませんけど!
グイスト様にGOを出せば、勢いよくがばっと来るかと思いきや、そっと優しく、包み込むように抱きしめられ、ベッドの上で座ったまま、しばらくの沈黙が訪れます。
このような雰囲気も、嫌いではありませんわ。
「やはりもう少し」
「…少しで、すみますの?」
「っ、いや、…………やめておこう」
グイスト様は、きゅっと顔を真顔に引き締めました。
これ以上は、いくらグイスト様でもだめですわ!
「ええ。部屋数はもともと少ないんですけど、今日はあとふた部屋しかご用意できなくて。それがふたり部屋をふたつなんです」
「そうか、それはよかった」
「?」
ヴァランタンさんが不思議そうな顔をします。けれど、私にはわかってしまいました。ビトさんもなんとなく察したようですが、つまり部屋割りは2-2ということですわね? グイスト様がいくら真顔でも、嬉しそうなのがわかってしまいます。
「ちなみに、今からでもお夕食はいただけますか?」
「ええ、ご用意できますよ。今夜は牛すね肉とマッシュルームを煮込んだカルボナーデがメインです」
「まあ、マッシュルーム」
「エリシャさん、マッシュルームだそうだ」
「ええ、わかっていますわヴァランタンさん。マッシュルームですわ」
「では、ここで決まりだな。ふたりでひと部屋だ」
「キノコ愛つよ!」
マッシュルームとお肉だなんて、最強の組み合わせではないですかカルボナーデ。
このあたりの郷土料理だそうです。楽しみですとても。
「では行こうか」
「はい」
「俺らはこっちねー」
「?」
ヴァランタンさんは、いつの間に部屋割りが決まったのだろうか、というような不思議そうな顔をしてこちらを見ていました。
「まああ」
「美味しそうだな」
「ほんとだー」
「マッシュルーム…」
お食事は食堂でいただくスタイルのようです。
荷物を部屋に置いて降りてきたら、案内していただけました。そして席につくとすぐにお料理が運ばれてきます。
カルボナーデという煮込み料理に、ポレンタというトウモッコシの粉で作ったつけ合わせが乗っています。あとはパンと、生ハムがたっぷりのサラダ。どれもとても美味しそうです。
「ほろほろの牛肉に風味豊かなマッシュルーム、最高ですわ」
「ああ、美味いな」
「牛すね肉は筋肉と脂肪が適度に混じり合った堅めの肉質ですが、じっくりと煮込むことで柔らかく旨みが増しますわよね。やはり煮込み料理には最適ですわ! 長時間煮込まれていて、肉から出るゼラチン質が料理全体にコクを加えています。すね肉を選んだ方は天才ですね! ああ、美味しいですわ」
「マッシュルームは、グアニル酸が多く含まれていることから料理に深みを与える素材として非常に優れているキノコだが、この料理にはホワイトマッシュルームとブラウンマッシュルームの両方が使われているのか。マイルドな風味のホワイトマッシュルームと、香りが強く独特の風味があるブラウンマッシュルーム、交互に味わうとそれぞれの美味しさがよくわかる。とてもよく考えられた料理だ」
「うん、ふつうに美味いじゃだめかな?」
デザートの木の実のタルトも、このホテルのオリジナルレシピだそうで、甘すぎず少し塩気もあって、ナッツのザクザク感やしっとり感の食感も味も素晴らしかったです。
そして部屋に戻りーー
「エリシャ」
「ち、近いですわグイスト様っ」
軽く寝支度を整えベッドに座ったところで、もう寝ましょうか、と声をかけたらひざまずかれました。
「大丈夫だ、何もしない、ただ少しだけ」
「す、少しだけ?」
「少しだけてー……抱きしめても?」
「いま、言い直しましたわよね」
「エリシャ」
「うぅ…少し、だけなら、はい」
「っ」
手を、と言いながら手に触れてきたグイスト様でしたが、言い直しましたわ。いけると思ったのでしょうね。いいですわ。たまになら、私も甘い雰囲気を堪能することは、できますから。
ここのところずっと誰かと一緒でしたし、たまにならいいかなって。婚約もまだだしするかもわからないですし、結婚するなんてことになってもずっと先のことでしょう。けれど、今の私はただの冒険者ですから、こういうことだって、気軽にしたいと思った相手としたって、いいはずですわ。……思う相手は、ひとりしかいませんけど!
グイスト様にGOを出せば、勢いよくがばっと来るかと思いきや、そっと優しく、包み込むように抱きしめられ、ベッドの上で座ったまま、しばらくの沈黙が訪れます。
このような雰囲気も、嫌いではありませんわ。
「やはりもう少し」
「…少しで、すみますの?」
「っ、いや、…………やめておこう」
グイスト様は、きゅっと顔を真顔に引き締めました。
これ以上は、いくらグイスト様でもだめですわ!
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