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第二章 外国漫遊記
第四十八話 じゃあ、
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「へー……、え、じゃあフィレンセとの戦争終わりってことなんですか?」
「そういうことだ」
「へー……、え、じゃあなんで捕らえられているんです?」
「おそらく、まだ周知されていないのではないかしら? ここは首都からはだいぶ遠い国境だし、ベジックさんがいつ帰国したかもわからないから」
「へー……、え、じゃあ俺がベジック王子とやらを探してくればいいです?」
「そうねえ」
「うむ…」
グイスト様から送った手紙は確実にベジックさんの元に届きますから、リノが探しに行くのは効率が悪い気がします。私もグイスト様も、せっかく来てくれたリノをどうしたものかと考えていました。
「とりあえず、もう寝ない?」
「この状況で寝るのかよ」
「リノが来るまで寝る準備してた」
「悪かったよ、そんなときに来て」
「いいこと考えましたわ」
寝る寝ないで揉めだした兄弟をよそに、リノにやってもらうべきことが思いつきました。
そう、ヴァランタンさんです。
これだけ騒いでいても起きないほど熟睡しているところ申し訳ないのですが、今ここに一番いてはいけないのがヴァランタンさんです。
なのでリノに、ヴァランタンさんを送って行ってもらいましょう。名案です。
「私も今思いついた。カートナーの分のベッドが足りないから、エリシャは私と寝よう。ほんとうによく来てくれたなカートナー」
「どさくさに紛れて何言ってんですか公爵。俺と兄貴が一緒に寝ますよ」
「えーやだよー。さすがに狭いじゃん」
「リノは寝ません!」
「え、起きて見張ってろって言うんです? えー、もう護衛じゃないのに。お嬢様横暴ー。あ、護衛は公爵だから、公爵が起きて見張ってる役ですね」
「ち が い ま す」
みなさんの睡眠欲が相当高まっているということだけはわかりましたが、そうではありません。ヴァランタンさんです、ヴァランタンさん。今国に見つかって一番やばい人の代表格ヴァランタンさんです。
「ということで、ガヴォア家に連れて行ってください」
「そこで寝てる人を?」
「ビトさん、起こして説明しておいてください」
「はーい」
「簡単に言うと、そこで寝ているヴァランタンさんは、現フィレンセ国王プロスペールと父親違いの兄弟なのです。それでプロスペール王が、自身が即位する前にいろいろとばれてしまうのを恐れ、30年ほど前にザル島に幽閉した。つい先日、私たちがザル島に上陸し、ご縁があって一緒に行動しています。フィレンセに来たのは、ヴァランタンさんのご実家がどうなっているか、ご家族がどうしているか確認するためだったのです。けれど私たちが敵国の貴族だということで、一緒に捕まってしまった。なので、ヴァランタンさんを先にここから連れ出して、ここから南西にあるガヴォア伯爵領まで送って行ってほしいのです。このまま事が露見すれば、一番危険なのは彼ですから」
「あー、簡単に理解しました」
ここ数話分をひと息で説明してみました。
リノのほうはこれでいいとして、ビトさんに起こされたヴァランタンさんは、まだ状況がよくわかっていないようです。
「だから、ヴァランタンさんは今捕まっている必要ないから、リノ、あの人ねー。俺の弟。悪い奴じゃないから大丈夫。強いし。とー、一緒にガヴォア家行ってみてー。俺らもここ出れたら向かうから」
「そうか。非戦闘員の俺がいると足手まといにもなるだろうし、了解した」
「あ、うん。それもあるかもー」
「リノ、ヴァランタンさんはまったく戦えないから、くれぐれもよろしくお願いね。キノコの話だけは得意だから、よかったらエストルム邸のキノコ会の話でもしてちょうだい」
「わかりましたよ、と」
と言って、「と」と言って、リノは鉄格子のカギを解錠しました。
ほんとうにこの人は、何者にでもなれる便利スキルを持っていますわね。
「簡単に開くんだな? 俺も挑戦してみ――」
「リノにしかできませんわ、諦めてくださいな」
「……そうか」
ヴァランタンさんは、チャレンジ精神はとっても旺盛なのですね。戦闘しかり御者しかり、いいことです。
今は時間がないので止めましたけれど、機会があれば挑戦してみるのもいいかもしれませんわね、解錠。私やグイスト様では、「解錠」ではなく「破壊」になってしまいますからお手本にはなりませんけど。
「そういうことだ」
「へー……、え、じゃあなんで捕らえられているんです?」
「おそらく、まだ周知されていないのではないかしら? ここは首都からはだいぶ遠い国境だし、ベジックさんがいつ帰国したかもわからないから」
「へー……、え、じゃあ俺がベジック王子とやらを探してくればいいです?」
「そうねえ」
「うむ…」
グイスト様から送った手紙は確実にベジックさんの元に届きますから、リノが探しに行くのは効率が悪い気がします。私もグイスト様も、せっかく来てくれたリノをどうしたものかと考えていました。
「とりあえず、もう寝ない?」
「この状況で寝るのかよ」
「リノが来るまで寝る準備してた」
「悪かったよ、そんなときに来て」
「いいこと考えましたわ」
寝る寝ないで揉めだした兄弟をよそに、リノにやってもらうべきことが思いつきました。
そう、ヴァランタンさんです。
これだけ騒いでいても起きないほど熟睡しているところ申し訳ないのですが、今ここに一番いてはいけないのがヴァランタンさんです。
なのでリノに、ヴァランタンさんを送って行ってもらいましょう。名案です。
「私も今思いついた。カートナーの分のベッドが足りないから、エリシャは私と寝よう。ほんとうによく来てくれたなカートナー」
「どさくさに紛れて何言ってんですか公爵。俺と兄貴が一緒に寝ますよ」
「えーやだよー。さすがに狭いじゃん」
「リノは寝ません!」
「え、起きて見張ってろって言うんです? えー、もう護衛じゃないのに。お嬢様横暴ー。あ、護衛は公爵だから、公爵が起きて見張ってる役ですね」
「ち が い ま す」
みなさんの睡眠欲が相当高まっているということだけはわかりましたが、そうではありません。ヴァランタンさんです、ヴァランタンさん。今国に見つかって一番やばい人の代表格ヴァランタンさんです。
「ということで、ガヴォア家に連れて行ってください」
「そこで寝てる人を?」
「ビトさん、起こして説明しておいてください」
「はーい」
「簡単に言うと、そこで寝ているヴァランタンさんは、現フィレンセ国王プロスペールと父親違いの兄弟なのです。それでプロスペール王が、自身が即位する前にいろいろとばれてしまうのを恐れ、30年ほど前にザル島に幽閉した。つい先日、私たちがザル島に上陸し、ご縁があって一緒に行動しています。フィレンセに来たのは、ヴァランタンさんのご実家がどうなっているか、ご家族がどうしているか確認するためだったのです。けれど私たちが敵国の貴族だということで、一緒に捕まってしまった。なので、ヴァランタンさんを先にここから連れ出して、ここから南西にあるガヴォア伯爵領まで送って行ってほしいのです。このまま事が露見すれば、一番危険なのは彼ですから」
「あー、簡単に理解しました」
ここ数話分をひと息で説明してみました。
リノのほうはこれでいいとして、ビトさんに起こされたヴァランタンさんは、まだ状況がよくわかっていないようです。
「だから、ヴァランタンさんは今捕まっている必要ないから、リノ、あの人ねー。俺の弟。悪い奴じゃないから大丈夫。強いし。とー、一緒にガヴォア家行ってみてー。俺らもここ出れたら向かうから」
「そうか。非戦闘員の俺がいると足手まといにもなるだろうし、了解した」
「あ、うん。それもあるかもー」
「リノ、ヴァランタンさんはまったく戦えないから、くれぐれもよろしくお願いね。キノコの話だけは得意だから、よかったらエストルム邸のキノコ会の話でもしてちょうだい」
「わかりましたよ、と」
と言って、「と」と言って、リノは鉄格子のカギを解錠しました。
ほんとうにこの人は、何者にでもなれる便利スキルを持っていますわね。
「簡単に開くんだな? 俺も挑戦してみ――」
「リノにしかできませんわ、諦めてくださいな」
「……そうか」
ヴァランタンさんは、チャレンジ精神はとっても旺盛なのですね。戦闘しかり御者しかり、いいことです。
今は時間がないので止めましたけれど、機会があれば挑戦してみるのもいいかもしれませんわね、解錠。私やグイスト様では、「解錠」ではなく「破壊」になってしまいますからお手本にはなりませんけど。
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