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13.騎士団長からの報告。
しおりを挟む「聖女らしき女が街に隠れ住んでいると報告がありました。」
「なに? ほんとうか騎士団長!」
騎士団長は、ビオーテ伯爵家の次男パニクル・ビオーテから受けた報告をもとに冒険者ギルドへ行き、ヨリコの存在を確認した。しかし本人と、はては公爵まで出てきてしまい話が食い違うところがあったので、騎士団を任されている最高責任者の第一王子に確認にきたのだ。
「はい。それで私がこの目で確認しに行ったのですが、珍しい黒髪の女で――」
「黒髪の女!」
「は、はい。」
「ならば間違いないな。我が国には黒髪はほとんどいない。」
王子は、自分が呼び出した女だと確信した。報告を最後まで聞いてからにしてほしい、と思った騎士団長だったが、いつも王子はこんな感じなのですでに諦めているところもある。
「聖力の宿る家具を作ったと報告があったので冒険者ギルドへ――」
「聖力……! 確かなんだな?」
「……それについては、ギルドの鑑定士が鑑定したとのことです。」
パニクル・ビオーテがギルドで盗み聞きした例の件。ついに王子にまで報告が届いてしまった。
放り出した聖女が街で暮らしていたのなら、さっさと連れてきて王の前に突き出そう、と考えたジャラン。早く見つけたら見直してもらえるかもしれない、などと自分勝手なことを考えている。ついでに、召喚した時は黒髪黒目にしか目がいかなかったので気づかなかったが、乳の大きさも確認せねば、と騎士団長には適当に言って命を下す。
「その女は、聖女として召喚されたというのに任務を嫌がり逃げ出したのだ。街で遊んでいるなんて、とんでもない女だ……。間もなく騎士団で、モンスターの討伐隊を組む予定だ。同行させねばならない。すぐに連れ戻せ。」
「やはりそういうことなのですね。公爵の言ったことはその場しのぎの嘘か。」
「なっ、待て。公爵だと?」
「はい。ギルドで女に会ったとき、ディー公爵がご一緒でした。」
「お、おじ上が……?」
ジャランは焦った。
昔から、優秀な王弟ジークフリードのことが苦手で避けていた。魔力はそんなにないが剣技に長けていて頭も良い。加えて、あのひょうひょうとした掴みきれない性格が、何を考えているかわからないし怖かったのだ。
その叔父が、聖女と共にいた。
自分の失態が露見する前に、聖女をさっさと捕まえてやりこめなくてはいけないと思ったジャランは、改めて騎士団長に命じた。
「おじ上が何と言って聖女を庇ったかは知らないが、それは聖女の力を独り占めするための嘘だろう。とにかく、城に連れてこい。父上の前に突き出して、聖女の義務を放棄したことを謝らせなければならない。」
「はっ、直ちに!」
こうしてゲオルグ・ドミストスは、事実と違ったことを信じて部下に聖女捕獲を命じることになった。
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