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20.国中を駆け回るのがお仕事です。
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18話飛ばして19話UPしていました。
UP済みです。よろしければこの20話前にご覧くださいませ。
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今、私の前には頭を下げた王様がいる。
「申し訳なかった。」
「この国の偉い人はみんながみんな偉そうなわけじゃないんですね。」
「……すまない。」
「いえ。おかげでいい人たちに出会えましたので。」
「そうか。……感謝する。」
いきなり異世界に呼ばれて、わけも分からず城を追い出されて、でもそのおかげでパン屋のおかみさんの優しさが身に染みた。お客さんの笑顔に元気づけられた。ギルドの人たちもみんな親切で、ジークさんもたくさん素材を採ってきてくれたしたくさんクラフトできて楽しかった。その家具を、街の皆さんがすてきね、って言って買ってくれた。サラヤおばあちゃんはロッキングチェアーに座って猫を膝に乗せてお昼寝するのがとても気持ちいいって、お礼を言いにきてくれた。
ほかにも、たくさんたくさん、いろんな人と交流できた。
「できれば、国のために協力してほしい。」
「はい。街のみんなのために、できることはお手伝いします。」
「ありがとう、聖女ヨリコ。」
・
・
・
それからヨリコは、国内のあらゆる瘴気ポイントを巡り、聖力を使って浄化作業をしていった。
南の海沿いの瘴気ポイントに行けば、海洋生物がモンスター化しておりうねうねくねくねぴょんぴょん生臭くて気持ち悪かったが、すべて浄化して美味しくいただいた。
北の瘴気ポイントに行けば、活躍するパニクル・ビオーテを見て驚いた。
「えっ、そんなに強かったんだ??」
「ははっ! 聖女様! その節はごめんね?」
筋肉もついて自信もついて、パニクル・ビオーテは『今ノリに乗っている騎士ナンバーワン』になっていた。
そして聖女御一行は西に東にと大移動。馬車は快適で泊まる街や村では歓迎され、やり甲斐のある仕事に奔走しているヨリコだった。
「この馬車はディー家から出しているものだからね。」
「どうりで乗り心地が良いわけですね。」
あの日の馬車を思い出す。サスペンションが効いているわけではなく、魔法がかかっていたんだっけ。
「でもジークさん。馬車の提供はありがたいですけど、毎回毎回公爵様の同行は必要ないのではないですか?」
「おや、つれないね。」
そう、南へ北へ、西へ東へと浄化の旅をしてきた私だけど、なぜか毎回ジークさんがいる。そもそも私ひとりでもモンスター無力化や瘴気の浄化ができるから、同行する騎士団の方々すらいらないんじゃないかという話を護衛騎士のディーノさんとしていたくらいなのに、ジークさんはいる。
「しかも私なら触れただけで浄化するので、モンスターの攻撃は受けませんよ? 毎回毎回私の前に立つ必要はないんじゃないかと。」
「ふふっ。それでも守りたいんだよ。」
「守る、ねえ。」
「つまらない男のプライドだよ。」
「はあ、まあ、そういうものですか。」
「うん。」
「…………暇なんですか?」
「ははっ、相変わらず面白いことを言うね。」
面白いか面白くないかはわからないけど、そりゃあ国のことを考えて絶えず働き続ける公爵様が、暇なわけないよね。
「ちゃんと王様の許可取ってます?」
「ああ、それは問題ないよ。」
「なら、いいですけど……。」
多忙な重要人物をわがままで連れ回してるなんて思われたら大変だからね。
これは私の知らない話だけど、ジークさんは王様にこう言ったらしい。
「ヨリコは、やっと出会えた私の運命の人なんだ。危険はないと言っても、好きな人が国中まわってモンスターと対峙するなんて、心配だろう? この手で守りたいんだ。たとえ聖力に守られているから私の力は必要ないとしても、一緒にいたい。だから同行を認めてくれ。……兄さん。」
いろいろと、弟萌えポイントが散りばめられているこのセリフに、王様は二つ返事で諾としたそうだ。
UP済みです。よろしければこの20話前にご覧くださいませ。
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今、私の前には頭を下げた王様がいる。
「申し訳なかった。」
「この国の偉い人はみんながみんな偉そうなわけじゃないんですね。」
「……すまない。」
「いえ。おかげでいい人たちに出会えましたので。」
「そうか。……感謝する。」
いきなり異世界に呼ばれて、わけも分からず城を追い出されて、でもそのおかげでパン屋のおかみさんの優しさが身に染みた。お客さんの笑顔に元気づけられた。ギルドの人たちもみんな親切で、ジークさんもたくさん素材を採ってきてくれたしたくさんクラフトできて楽しかった。その家具を、街の皆さんがすてきね、って言って買ってくれた。サラヤおばあちゃんはロッキングチェアーに座って猫を膝に乗せてお昼寝するのがとても気持ちいいって、お礼を言いにきてくれた。
ほかにも、たくさんたくさん、いろんな人と交流できた。
「できれば、国のために協力してほしい。」
「はい。街のみんなのために、できることはお手伝いします。」
「ありがとう、聖女ヨリコ。」
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それからヨリコは、国内のあらゆる瘴気ポイントを巡り、聖力を使って浄化作業をしていった。
南の海沿いの瘴気ポイントに行けば、海洋生物がモンスター化しておりうねうねくねくねぴょんぴょん生臭くて気持ち悪かったが、すべて浄化して美味しくいただいた。
北の瘴気ポイントに行けば、活躍するパニクル・ビオーテを見て驚いた。
「えっ、そんなに強かったんだ??」
「ははっ! 聖女様! その節はごめんね?」
筋肉もついて自信もついて、パニクル・ビオーテは『今ノリに乗っている騎士ナンバーワン』になっていた。
そして聖女御一行は西に東にと大移動。馬車は快適で泊まる街や村では歓迎され、やり甲斐のある仕事に奔走しているヨリコだった。
「この馬車はディー家から出しているものだからね。」
「どうりで乗り心地が良いわけですね。」
あの日の馬車を思い出す。サスペンションが効いているわけではなく、魔法がかかっていたんだっけ。
「でもジークさん。馬車の提供はありがたいですけど、毎回毎回公爵様の同行は必要ないのではないですか?」
「おや、つれないね。」
そう、南へ北へ、西へ東へと浄化の旅をしてきた私だけど、なぜか毎回ジークさんがいる。そもそも私ひとりでもモンスター無力化や瘴気の浄化ができるから、同行する騎士団の方々すらいらないんじゃないかという話を護衛騎士のディーノさんとしていたくらいなのに、ジークさんはいる。
「しかも私なら触れただけで浄化するので、モンスターの攻撃は受けませんよ? 毎回毎回私の前に立つ必要はないんじゃないかと。」
「ふふっ。それでも守りたいんだよ。」
「守る、ねえ。」
「つまらない男のプライドだよ。」
「はあ、まあ、そういうものですか。」
「うん。」
「…………暇なんですか?」
「ははっ、相変わらず面白いことを言うね。」
面白いか面白くないかはわからないけど、そりゃあ国のことを考えて絶えず働き続ける公爵様が、暇なわけないよね。
「ちゃんと王様の許可取ってます?」
「ああ、それは問題ないよ。」
「なら、いいですけど……。」
多忙な重要人物をわがままで連れ回してるなんて思われたら大変だからね。
これは私の知らない話だけど、ジークさんは王様にこう言ったらしい。
「ヨリコは、やっと出会えた私の運命の人なんだ。危険はないと言っても、好きな人が国中まわってモンスターと対峙するなんて、心配だろう? この手で守りたいんだ。たとえ聖力に守られているから私の力は必要ないとしても、一緒にいたい。だから同行を認めてくれ。……兄さん。」
いろいろと、弟萌えポイントが散りばめられているこのセリフに、王様は二つ返事で諾としたそうだ。
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