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第一章
第二十話 帰還
しおりを挟む一年後ーー
ジスは、またペガサスの泉に戻ってきていた。
1年間他国を周り、セツコを捜していた。
しかし、シェーレ以外のくにでセツコを見たことがあるというものには会えなかった。シェーレで出会った人々が知っていたセツコの話も、追放前の過去の話。結局、ジスはここに戻ってくることになった。
「一年、か……」
ペガサスの泉は以前と変わらず、穏やかでいて神々しい。ジスはペガサスの姿を捜すが、辺りには見当たらないようだ。山を少し下り、セツコとの思い出が詰まった家にやってきた。
すると、家の横の畑になっている部分に、ペガサスの姿を見つけた。
「ペガサス殿……」
「ああ、戻ったのか」
「ここで、何を?」
そう聞かずにはいられなかった。
ペガサスがここにいるということは、もしかしたらセツコが……という期待がある。
「……王家は入れ替わり、新しい王はうまくやっているようだ」
「そうか……ザルバロが王なら、この国は安泰だな」
ジスは周辺諸国を旅して、いろいろなことを目にした。
シェーレは聖女不在で魔物被害の対応に追われている。母の出身国であるギリシャスでは、神殿に権力が集中し国政は荒れていた。北側のモレット王国は、年半分以上雪に埋もれる国だけあって、人口が少なく、また実りも少ない。そのため外交で上手く物資の調達をしなければならないのだが、現王は悪い意味で優しい人間であるため、足元見られて財源ががひっ迫しているようだった。ザルバロの祖母の祖国であるマテアは、広すぎてすべて回ることはできなかったが、国の端のほうは貧民街があり、中心地である王都との貧富の差が激しかった。
ゾゼは、王家の交代で荒れる場面もあったが、前王があのゼシウスなのだ。ザルバロが即位したことを喜ぶもののほうが多かった。
ザルバロを昔から知っているジスは、とても優秀な王になるだろう、と頷いてみせた。
「ぬしはもう、国の責任を負う立場ではない」
「ああ、そうだな」
「もういいだろう? ネフレ」
「?」
ペガサスが空中に声をかけると、低い位置にあった雲がだんだん晴れていく。同時に空を見たジスには、その様子がよく見えた。
ジスが空に目を向けていると、そこに人影が現れた。
「…………セツコ?」
まだはっきりとは見えないが、ジスは、それがたった数ヶ月だが確かに自分の腕の中にいた愛おしい女性であると確信が持てた。
口を開けて呆然としているジスに、雲が晴れ、姿を見せたセツコが声をかける。
「ジス……お帰りなさい」
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